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『四畳半神話体系』を振り返る

森見登美彦先生の『四畳半神話体系』をご存じでしょうか。

主人公はとある大学3年生。

四畳半のおんぼろ下宿に住まい、京都の大学に通う主人公は入学当時に夢見た薔薇色のキャンパスライフとは程遠い冴えない毎日を送っていました。

京都を舞台にした森見登美彦先生の代表作のひとつです。夏のカドフェス100冊にも選ばれているので、読んだことのある方も多いのではないでしょうか。

もしもの世界を覗いてみる

この小説は、森見先生お得意の「腐れ学生小説」のひとつで、4つの同時並行世界で繰り広げられる一風変わった構成をしています。大学入学時の学内にあふれ返る無数の新入生勧誘。多くの勧誘ビラを見て主人公が選び取った、4つの選択肢から物語が展開されます。

私たちは時々「あの時に選択を間違ったな」とか「こんなはずではなかった」なんて後悔することってありますよね。

特に学生時代は、自由な時間が多く無数の可能性が広がっているような気持ちになるものです。そして「もしも、時計の針を戻して別の選択ができたなら...」なんて考えてしまいます。

そんな「もしも」の世界を書いたのが『四畳半神話大系』です。

反面教師的な主人公

小説の主人公は、現状の無為で怠惰な日々を過去の自分や他人の所為にしては別の人生を夢想している大学3回生。私自身もこの小説を大学時代に読んでいて、作中のいたるところに「大学生あるある」を見つけては頷いてしまうのでした。

大学生になると目標とか意思決定のほとんどが自身に委ねられていて、「これが正しい大学生のありかた」とか正解がないんですよね。これでいいのか悪いのかもわからずに行動しているうちに、いつの間にか終わっているのです。その先に待っている、大人の世界もだいたいそんな感じです。

そんな時にはこの小説が一種の指南書になるのではないでしょうか。自分が何をしてるのかわからなくなったとき、主人公の思考や行動を客観的に見ることによって自身の問題に置き換えて考えることができます。

時間は戻らないこと、
可能性ばかり考えても仕方がないこと、
そして好機はいつも目の前にあること。

そんな単純な理を教えてくれます。

アニメ版もおススメ

『四畳半神話大系』はアニメ化もされています。

原作を忠実ながらも、アニメオリジナルストーリーも織り交ぜながら『四畳半』世界観を発展させていているので、小説とアニメどちらから見ても楽しむことができるはずです。

『夜は短し歩けよ乙女』もほぼ同じキャストと演出で、アニメ映画化されているので興味のある方は是非...!

それでは、
今回も読んでいただきありがとうございました。

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