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論文レビュー『物語を物語を使ったマーケティングが有効となる条件と その限界に関する試論』1−2

前回の続きです。
太字が個人的な意見です。

VI いくつかの事例・事象の考察と仮説

1.物語マーケティングを有効にするための 事前知識の必要性について

言葉を変えればその物語を有効とするには,受手にそれを理解するための最低限の知識が必要。

例えば、歴史に関連するパッケージ旅行。歴史的事実やそれに付随する物語を理解する知識があってはじめて,壮大な風景や史的経緯を思い浮かべ,その場所の価値に思いを馳せることができる。

仮説1:物語を使ったマーケティングには,受手(顧客)に,それを理解するための事前知識が必要である

2.啓蒙・教育の重要性について

その知識を,受手(顧客)に植え付けるための啓蒙や教育活動も,物語を使うマーケティングでは有効になると思われる。

1つの例として,オーストラリアのアボリジニ文化は,広い解釈にはなるが,その歴史的経緯や固有文化を物語のように示したことにより,1990年代以降,オーストラリア観光の中では,顧客の関心や満足を高めるのに成功しているといえる。これは20世紀後半以降の,アボリジニの歴史や文化に関する様々な社会的な啓蒙・教育の活動が,その集客効果を高めたといえるだろう。

 同じようなことが,米国ワシントン D.C.にあるアメリカ合衆国ホロコースト記念博物館(United States Holocaust Memorial Museum)にも当てはまると思われる。この博物館の開館は実は1993年。この博物館が戦後50年経って米国で建てられたのは,約50年をかけ,様々なかたちで第二次大戦時のホロコーストについての啓蒙・教育活動が行われて,博物館の閲覧客が確保できるようになったからだということができる。

→例示が納得いかない。経営学は企業単位での利益最大化の要因を紐解く学問である、と認識している。この内容は国レベル、つまり経営学的には、とてもマクロな例示である。では、この啓蒙活動をどのように企業単位で行っていくか。それがこの例から読み解くことが出来ない。まだ、清水建設の「未来とつくる仕事」の方が説得力がある。

仮説2:啓蒙・教育活動での知識の醸成は,物語マーケティングに有効である。

3.内容や文脈の理解のしやすさ(理解容易性)について

物語内容だけでなく,それと製品やサービスとの繋がりについての理解の
しやすさも重要となろう。物語の内容が高尚でありながら,因果関係が複雑だったり,文化や価値観の違いで表現の意図が理解されなければ,効果は減じられてしまうことが考えられる。
例えば、鹿児島県志布志市が2016年に作成した,養殖ウナギを少女に擬人化した「ふるさと納税」の物語 CM(PR動画)が失敗の例。の内容・映像について国内外で,誘拐監禁や性差別を連想させると批判を浴びてしまった。

→物語は基本的にハッピエンド。誰も傷つける可能性は無くした方がいい。しかし、長く物語を考えるのであれば、Campbell(1949)のような転機が必要かな。

仮説3:マーケティングで使用する,物語の内容や文脈の理解のしやすさ(理解容易性)は,重要である。

4.物語マーケティングの個別性・限定性について

物語を使ったマーケティング活動は,それが有効となる人々(顧客)とそうでない人々がいるはずである。誰に対しても効果があるわけではないと思われる。

→マーケティングってそういうもん。

仮説4:物語マーケティングは,顧客の個別性・限定性を考慮して行う必要がある。

5.物語の効果の時間的な範囲や制約について

マーケティングで使われる方策は,物語だけでなく,時勢的な変化で有効となったりそうでなくなることが往々にしてあるが,物語を使う場合にも,その効果は永続的ではなく時間的な範囲や制約,限界があることを考えて行う必要があるといえるのではないだろうか。

仮説5:物語を使用したマーケティング活動の効果には,時間的な範囲や制約,限界がある。

6.製品・サービスと物語の訴えるイメージとの一体化・同一化の重要性について

クラフトビールメーカーのヤッホーブルーイングも提供する製品はビールだが,楽しさを醸し出すイメージやそれを実現するイベント等を,一体化・同一化させたマーケティングを行っており,成功しているといえる。顧客(同社では「ファン」と呼ぶ)にとって,同社ビールの魅力は個性的な味はもちろんだが,楽しさを表現したパッケージであったりネーミングであるともいえる。そしてヤッホーブルーイングは,楽しく顧客がビール仲間と飲む場面を具現化するため,顧客が楽しく乾杯する」物語を構成する一人となった気持ちになれているのである。これらの活動により,顧客(ファン)たちは,大手メーカーに比べれば販売拠点が多いといえないヤッホーブルーイングのビールを,繰り返し購入しているのである。

仮説6:物語と製品・サービスの一体化・同一化は重要である。

7.物語にもたせる象徴性について

自社の理念や組織の価値観,製品イメージ,そして目指している顧客との関係の在り方などを,語りの中に象徴的に盛り込めれば効果は高まると思われる。

パタゴニアも創業者や社員がアウトドア好きで,様々なアウトドア用具のユーザーであり自然愛好者である,という象徴的な話が語られる会社である。ユーザー視点で作られた高い製品機能と品質が高い顧客満足を引き出しているのだが,パタゴニアはそれだけに留まらない。企業として自然環境保護に重点的に取り組んでおり,様々な環境保護のためのキャンペーン活動も行なっているのである。そして経常的に売上の1%を,草の根的な活動を行う小さな環境保護活動グループに寄付もしているのである。パタゴニアも,その製品の機能・品質の高さはもちろん,自然を愛好する社員がいて自然や環境の保護へ注力していることが象徴的に語られ,顧客から高い支持を得て購入されているのである。

→仲間感、物語への共感、物語を知っている上での他者への優位性

 仮説7:物語マーケティングは,象徴的な話しが効果を引き上げる

8.物語で使用される言葉について

潜在的な顧客ニーズを「言葉」を使うことによって明らかにしたり,それまで気づかなかったマーケティング対象を探し出し,新たにマーケティング機会を創造する手掛かりにもなりえるから。

物語は言葉の連なりである。言葉が新しいニーズやマーケティング対象を顕在化させて,新しい機会の創造や拡大をもたらす可能性があるのなら,「言葉」も物語マーケティングの中では重要になるといえるだろう。

→マーケティングにおける、物語の作成も文学的な要素が含まれている。 ボキャブラリーがものを言いそう。

仮説8:物語の中で使用される「言葉」も重要である。

9.物語の語られ方と語る人について

米国ノードストロームという百貨店は、顧客サービスの良さについて、ノードストロームを利用しているロイヤルティの高い顧客によって語られたり,あるいは第三者が,インタビューでそれらの顧客から体験談等を聞き,書いて纏めたものを読んでいる。これにより、顧客の再訪や新規顧客の獲得に繋がっている。

→人に伝えたいかどうか

仮説9:物語の語られ方や語る人が,物語の効果に影響を与える。

10.顧客・消費者の物語の創造性の大切さについて

顧客・消費者の側が,製品・サービスに纏わる話しを作ってしまうこともある。売手はそれを敏感に捉えて,マーケティング活動に活かすことも必要であろう。

10分どん兵衛がいい例。

買手・顧客からもたらされる話しはこのように敏感に捉えて,売手から気づきにくい顧客の考え方や,顧客の要求する機能をしっかり理解Nすることも重要といえよう。

仮説10:買手・消費者が語り始める物語(話し)を,売手は敏感に捉える必要がある。

Ⅶ まとめ

物語の使用を売手の側から考察したが,物語マーケティングの研究を進めるのなら,買手(顧客)の側が物語をどのように自身に適用しようとするかという,顧客の物語の捉え方からの深い分析・考察も必要といえよう。

大塚(1989,2012,2014)や津村(2014)の研究で,「大きな物語」を構成する中で,顧客個人がどのように「小さな物語」を消費するか(物語消費)というような視点での分析がある。

物語はマーケティング活動の中では,製品・サービスの機能提示だけに留まらず,意味的な価値を付加して顧客に訴えるのに適している。また顧客の感情に訴えかけ共感を持たせ,数値データでの理詰めの説得とは別なかたちで,顧客の態度変容を促すのにも効果があるといえる。そして面白さを提供し記憶の中に強い印象を残して,顧客関係の強化をはかり,高い顧客ロイヤルティの獲得を狙うことも期待できると考えられる。

物語を使用したマーケティング
・顧客の事前知識
・顧客への啓蒙・教育
・物語内容の理解容易性
・顧客の限定性
・効果の一時性・時間性
・物語と製品サービス、顧客認識の同一化・一体化
・象徴性
・語られ方・語る人
・言葉の重要性
・顧客の創造性

もっと上手くまとめしたい。マーケティングにおいて、物語を使用したい場合、チェック以下のようなことにしたい。

物語を使う前
・ターゲットとなる顧客が知っている物語や歴史を使用可能かどうか。
・一過性の物語ではないどうか。長く利用できるかどうか。
・顧客が商品を選ぶ際にかかる時間と合致した長さの物語かどうか
物語を作る際
・物語を他の人に話したくなるかどうか
・物語に共感を得られるかどうか
物語を伝える際
・できれば、短く端的に。長い物語を一度に伝えるではなく、短く理解しやすいものを何度かに分けて伝える。
・ターゲット顧客から支持を得ているような語り手を使用する。

こんな感じかな。できれば、他の人の物語使用の際のチェックリストを知りたいです。コメントで教えてください!

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