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禍話:柏手の子

 人ならざるもの、幽霊だとかそう言った類のものって向こうから勝手にゲームを仕掛けてきて、いや、ルールを言えよ、みたいなことがあるよね。今回はそういう話。まあ、ルールを知られてしまうと力を失ってしまうからかもしれないけど。神秘は隠されているからこそ力を持つ。西洋の悪魔でも一番有効な手だては真名を呼ぶこと、つまりは正体を暴くことだからね。  Aさんは毎年、夏休みになると祖父母の家に遊びに行ったそうだ。  いつからかはわからない、物心のつく前、幼稚園くらいからであろうか、そこで必

    • 禍話:手・面/老面男

       加藤くんがべろべろに酔っ払ったときに話してくれたんだけど、子供の頃にそうだと思い込んでいて実は全然違ったってことあるでしょ、ってね。加藤くんの場合、お面らしい。縁日とかに置いてあるやつじゃなくてもっとリアルな感じの。 「俺、昔、お面って口から手が出ると思ってたんですよ、夜になるとね」  曰く、子供の頃、彼の祖父母の部屋には能面のような老人のお面が飾ってあったそうだ。なぜそこにあったのかも、どんな由来があったのかも未だ知らないが、精巧で奇妙な存在感のあるそれは子供の彼にと

      • 禍話:大量殺人鬼

         いっぱい人が死ぬ話ないかってリクエストをいただいて、まあ、そんなに大量に人死にが出たら怪談どころではなくて、もはや事件なんですけどね。ないよなぁ、と思いつつも片っ端から知り合いに聞いてまわったんです。  いっぱい人が死ぬ話ない? ってね。  そうしたら、あるよ、と言う奴がひとりいたんです。誰も死んでないけど、と。  彼いわく、中学2年生くらいのときの話だそうだ。  ある日の帰り道、同級生から相談したいことがある、と話を持ちかけられた。付き合いも長く仲の良い奴だったので快諾

        • 禍話:合羽の男たち

           雨が降ってもいないのに雨合羽を着ている集団がいたら気をつけた方がいい。それが家の近所なら尚更だ。すぐにでも引っ越すべきかもしれないな。  Nさんは子供こそいないが、大学時代から付き合っていた奥さんと仲睦まじく暮らしていた。彼は仕事の関係であちらこちらの地方を飛びまわることが多く、その都度、会社がアパートや借家などを用意してくれていたそうだ。  九州某県のとある団地にNさん夫婦が引っ越してきたときのことだ。  会社の手配した借家は新興住宅地の一画にあり、ほとんど新築同然で最

        禍話:柏手の子

          エア禍話:明け方こっくりさん

           皆さんはこっくりさんって知ってます?  またか、と思われるかもしれませんがね。もう結構な数を話してますからね、こっくりさん。でも今回は最近の話ですよ。平成の真ん中ぐらいじゃないかな。  夕方をたそかれ時と言うじゃないですか。薄暗くて、相手が誰であるかわからないから。これは明け方もおなじですよね。こちらはたいてい、かはたれ時と呼ぶ。  古くから、そういった頃合いには魔が潜むものです。ひっそりと、人の顔をして。  Aさんが高校生だった頃の話だ。  当時、彼女は女子バスケ部に所

          エア禍話:明け方こっくりさん

          禍話:力が戻る夜

           どうしようもできない霊がいないのと同様に、万能な霊能者もまた、いないのである。霊感だとか奇怪な力の類いは本人のあずかり知れぬところで授かるもので、必ずしも良いものに由来するとは限らない、今回はそういう話だ。  Bさんにはすごく見える、と自称する知り合いがいた。彼は優男らしき風貌で、一見すると霊感があるようには見えない。  その男が言うには、一年経つと霊眼、すなわち幽霊などを見る力が落ちる。ところが、ある晩、ご先祖様が目を洗い清め、浄眼してくれると、また見えるようになる、そ

          禍話:力が戻る夜

          禍話:ハコソの家

           Aさんが副担任として赴任したのは、とある田舎の学校だった。  しばらく過ごしているとわかることなのだが、田舎特有の閉鎖的で理不尽な力関係がそこでも蔓延っており、彼女のクラスでも如何にも権力者の娘といった子どもが幅を利かせていた。なにか気に入らないことがあると、手を出す、口をだす、足も出る。暴れ出したり、物を投げ出す始末だったが、親が相当の権力をこの町で持っているらしく、誰も無闇に対処できないでいるようであった。  とりわけその娘にいじめられている少女がいて、Aさんも心苦し

          禍話:ハコソの家