神舞ひろし

長編小説『ロング・ロング・ロング・ロード』完結いたしました。 是非とも、応援&感想コメ…

神舞ひろし

長編小説『ロング・ロング・ロング・ロード』完結いたしました。 是非とも、応援&感想コメントをお待ちしております。 現在は、別のお話を執筆中です。いつかこちらにアップ出来ればと思います。

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  • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編

    ロング・ロング・ロング・ロード最終章になります。 何故自分がこんな身体になったのか。その謎が解明されます。

  • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅲ 道北の蒼 道央の碧 編

  • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅱ 道東の霧 編

  • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編

    地図を片手に、主人公と一緒に北海道を旅してみませんか?  旅行記のようで、推理小説のようで、ひと夏の恋物語のような、不思議な話。

最近の記事

海を渡る虹 神々しさをお裾分け

 神々しい……  ただ素直に、そう思える出来事に 2020.10.28 遭遇しました  今日はその時のお話を  【Rainbow Way On The Sea】  変わらずの曇天の空  夕陽を望むのは、半ば諦めながら西海岸へ  夕陽の見えるレストランカフェに早々と到着  日没まではまだ一時間近くある  海は凪   薄っすらと小豆島は姿を見せていた  風でも吹けば……  そう口にした途端、小波が立ち始め、遠くの雲に切れ間が現れた  そして、ゆっくりと切れ

    • 【長編小説】ロング・ロング・ロング・ロードを書いて —あとがき―

       たぶん、誰もやっていない世界を構築したい。  そんな思いで、物語を書き始めていました。  それなのに、この物語を書き終えたら人生を終えようと思っていました。まだ世界の塵一つを創造しただけなのに。  しかし、今は生きています(笑)  この物語のベースは、北海道179市町村を三ヵ月近くかけて巡った一人旅。  ツーリングまっぷるという素晴しい地図を見ながらの旅でした。主人公・獅子王誠が旅した道筋は、実際に自分が走った道とあまり違いはありません。  しかしその時は、小説

      • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   エピローグ

         長年の憧れだった北の大地での長い旅も、あとはこの船に乗って、出航の汽笛を聞くだけとなった。  勿論のことだが、車に比べ、二輪車の乗船台数は極端に少ない。少し前なら毎日、予約一杯の×マークが並んでいた青森行きのフェリー。だが、盆も開けた平日の待機場には、相棒以外に二台しかバイクは並んでいなかった。  俺は相棒に跨ったまま、乗下船口から流れ出てくるトラックの数珠繋ぎを、ボーッと見ていた。  何か、思っていた旅とは随分違う旅になってしまった。  インケツの始まりは、何処までも続く

        • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   15

           少しだけ開けたドアの向こうも薄暗かった。だが、薄明かりに慣れた俺の目には、廊下の奥のリビングからの微かなぼやけた光で、玄関全体の様子がハッキリと見えていた。  やはりクラシックが流れている。  対面には図面どおりにドアがあった。食堂から上ってくる階段の扉だ。本当は一階を先に潰しておきたかった。だが、この状態では仕方がない。  靴はなく、右手の作り付けの靴箱に入れる習慣か?その靴箱の上には、何か物体が飾られていて。沓脱にあるのは合成樹脂の穴あきサンダルが一足だけだった。  俺

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        • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編
          16本
        • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅲ 道北の蒼 道央の碧 編
          14本
        • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅱ 道東の霧 編
          13本
        • ロング・ロング・ロング・ロード Ⅰ 十勝の空 編
          12本

        記事

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   14

           何とも映える場所での待ち合わせになった。  駐車場から二の橋の袂へ向かう途中、五稜郭の堀と急角度に尖がった石垣が、俺の中にある観光したい気分の頭を擡げるのを後押しした。そして、五稜郭タワーから見下ろした時の景色を思い出し、今どの辺りにいるのかを把握した。  歩きながら、美枝子ではないが、とっとと情報を集めて白黒つけなければと考え、擡げた思いを抑え込む。  時間どおりにやって来た児玉は、俺と変わらない年頃のようだったが、どうも頭頂部が心許ない様子だったが、ハネさんとは面識があ

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   14

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   13

           俺を迎えに戻った長谷さんから、早川芽美は『La petite fleuriste』に戻ったと報告を受けた。つまりは、あの工場兼住居のような建物が、早川芽美の住処ということだ。  一人で住んでいるのか、家族がいるのか。どちらにしても違和感があった。あの内部がどうなっているのかわからないが、人ひとりを閉じ込めるのには、何の問題もない広さなのだ。  だが、久保奈生美を拉致して、早川芽美にはどんな得があるというのだ?  その答えは浮かばなかった。  何か二人の間にトラブルでも起きた

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   13

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   12

           101号室のドアから姿を見せた男は、二十代後半から三十代前半といったところか。  俺の予想に反して、何処から見ても好青年という感じで、服装も白のポロシャツに綿パンで、引き籠りなのに靴下までしっかりと履いていた。  汗と脂が入り混じった、あの何ともいえない匂いは、彼からは漂ってこない気がした。こういう引き籠りに会うのは、俺は初めてだ。  だが、俺達が駐車場で立ち話をしていたのをコイツは見ていたはずだ。部屋に来ると踏んで、服を着替えて待っていたということも考えられる。  男は津

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   12

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   11

           目が覚めると、寝返りをうつことすらひと苦労だった。  やはり俺の身体に無理は禁物なのだ。  今日を含めあと三日しかないのに、とんでもないことだ。  俺は言われるまま身体を起こし、緑色した静江特製スペシャルドリンクを胃に流し込んだ。  暫くすると、ニンニクのような香りがするなぁっと思ったところで、俺は眠りについていた。  雨が降っているのだろう。  俺は暗く湿った場所に、身動きすら出来ずに静かに横たわっている。まだ旅は続くというのに。  そのうちに地面にしみ込んだ雨は、もう

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   11

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   10

           住宅街に降る雨が止んでも、空が青くなるわけではなかった。  赤い傘を畳み、灰色の雲が覆い尽くす下で、俺は野間のアパートまでカメラを見つけながら歩いて行く。  案外、防犯カメラは無いものだ。しかし、一つもないわけではなかった。  それに人通りも少しはあった。その中に、聞き込みに回っている刑事らしき人物がいたのも本当だった。  野間のアパートに着いた。今日もまたこの時間は、全体がひっそりとしていた。  相変わらず綺麗に保たれていた。今朝も雨の中、掃除がなされたのだろう。  今日

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   10

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   9

           寝る前の心ざわめく電話にも、俺の睡眠欲は負けてはいなかった。よほど身体が疲れていたのだろう。  目覚めは爽やかだった。が、起きる時に毎朝感じる疲労感が今日は二割増し、その上、身体のあちこちに軽い痛みが生まれていた。年をとった証拠だ。  今朝も湯船には湯が張られていて、ユラユラと湯気が立ち昇っている。 シャワーを浴びながら、昨夜の美枝子の乱れようが頭に蘇ってきた。一度プールで触れて以来二十年近く憧れていた身体をこの腕に抱いたのだ。五十を過ぎたはずなのに、手入れを怠らないからか

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   9

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   8

           ハネさんはドアを開けるなり訊いてきた、「どうだった?」と。  とんだ変わりようだ。  俺は取り敢えず、ここを出るように言った。  通りに出て直ぐ傍にあったスーパーの駐車場へ、ハネさんはハンドルを切った。野間が何を喋ったのか、余程気になっているのだろう。  俺はありのままをハネさんに伝えた。ハネさんはまた、一々感嘆の声を上げた。こういう癖なのだと理解した。  全部を聞き終わったあとハネさんは、暫く腕組みして考え込んでしまった。  俺はハネさんに「ちょっと出てくる」と言って車の

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   8

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   7

           施設に必要書類を届けたあと、ともえ大橋のある海側の道を末広町へ向かっていた。  書類など迎えに来る前に提出して来いよ。そう俺は思った。  赤煉瓦の金森倉庫辺りは昨日と変わらぬ賑わいで、ベイエリアの歩道は人でごった返していた。  八幡坂の手前で右折する。今日も函館山は雲の中だ。趣ある建物が随所に建っていた。函館の歴史の豊かさを物語っている。  気になっていた市電の函館どつく前の駅は、「あ、ああ」という感じだった。もっと観光地かと思っていたのだ。灰色が垂れこめた空が、俺にそう思

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   7

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           とうとう朝はやってきた。  今日は一日、何時鳴るかわからないガラ携を気にしながら、函館の街を巡ることになる。  何故だかもう、津軽海峡を渡りたい。そんな気持ちが、俺の中の何処かにいることが不思議に感じた。まだ、函館山から夜景を眺めていないのにだ。  午前十時のチェックアウトを待ってホテルを出た。  今夜の宿は決まっているのだが、しかし、荷物を預かってくれるフロントがない。満載の荷物を積んだまま、交通量の多い街中を走るのだ。  最初の行先は決まっている。有名な函館朝市に行くの

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   6

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   5

           小さな街に生活音が飛び交う中、それに混ざり込むように相棒を暖機しながら荷物を積み込んだ。  折角この旅のために買ったステンレスシルバーの予備タンクは、一度も使うことなく津軽海峡を渡ることになりそうだった。  山積みになった荷物は今日も安定している。本当は、もっと早く出発する予定でいたのだ。   昨夜の居酒屋には食いたいものがなかったので、少し飲んでから近くのコンビニで酒とツマミを買って帰り、部屋でPCを開いて久し振りに情報収集に努めた。  明日、森町を起点として時計回りで進

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   5

          ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編   4

           青苗の朝は明るく眩し過ぎた。  窓から差し込む光だけでなく、階下で人が動き回る音すら眩しかった。  セットしたアラームが鳴るまで、もう少し眠っていようと思ったのだが、家族というものには、こういう音もあるのだろうなぁと思うと、俺は眠れなくなった。かといって寝不足ではない。近頃ずっと、早寝早起きなだけなのだ。  洗面所に行って歯を磨き、顔を洗った。  階下から北海道訛りのキツイ話し声が上がってきていた。それは、俺以外に泊まっている家族のお爺ちゃんとお婆ちゃん、それと女将の三人が

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           今朝の大浴場は昨夜とは違っていた。  どちらの温泉も楽しめるようにとの心遣いか、もしくは、ここまで金をかけて作りましたよという単なる風呂自慢なのだろう。  露天風呂には昨日なかった滝が作られていて、貸し切り状態だった。  俺はゆっくりと身体を目覚めさせながら、溜まった疲れが湯の中に溶け出ている感覚を覚えた。  そんなほっこりとする気分とは裏腹に、庇の向こうでは、逆撫でるような小雨が降り続いていた。  朝食最終時間のホールにも空席が目立っていた。観光客の多くは、填め込まれた日

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