見出し画像

ここがタメになった「日本人の勝算 デービッドアトキンソン」1/②

日本に30年住んでいる著者が日本の経済不振の不思議さを研究する本です。
不振の理由探しとして努力が足りないなどの精神的な意見が出がちなのですが著者は一切それらを否定し、否定する理由まで論理的に述べるのが面白いです。
流行のビジネス本を読みながら勉強会と称してみんなで集まり盛り上がるより、会社で生産性向上について冷静に向き合えという厳しい著者の主張が心に残りました。ネットで著者が毛嫌いされているのはこれかもしれません。

☆感想
日本人は読み書きから計算まで基礎がしっかりできているため人材評価が世界トップクラスなのは間違いないと思います。それでいて生産性28位というのが不思議なくらいです。
努力する方向が違っているからこうなるのではと思います。本当に必要とされる物を生み出す目標が明確になっていないもしくはわざと目をそらしている。
著者の言うように衰退する日本を変えるためには最低賃金を適度に上げて、社会全体の意識を変えることからはじめないといけないのではないか。ただし最低賃金は魔法の薬というわけでもなく25%以上上げるとうまくいかなくなると世界中の研究でいわれているので注意が必要です。コロナ以降インフレで物の値段が簡単に変わるようになり、うまく調整できるのか難しそうです。この本はコロナ前のものでその事態を考慮していないのはしかたないです。

~~以降は内容説明~~

人口減少による経済のダメージというのはものすごく大きいです 。アメリカは 少子高齢化が進んでいると言っても、人口は増え続けています 。韓国でも人口が減っているとはいえ それほどではありません。
 日本は次元が違うレベルで人口が 今後30年 減り続けます。

人口が減ると 不動産も売れなくなり景気が悪くなるため物価も影響していきます。 デフレになると人件費を抑制しようという動きが強くなり、より経済が悪くなる 悪循環が進んでいます。

世界中の国の経済成長はほとんどが 人口増加による成長タイプです。
アメリカでもそうです。アメリカは EUと生産性がほぼ同じなのに GDPが高いのですが、 その差は人口の増加率に比例していました。

経済は縮小してもいいというのは 完全な間違いです。日本は少なくなっていく 労働者で高齢者を支えなければならないので GDP が減ると社会保障費が支払えなくなります。
いいものをより安く、という戦略はあくまでも人口が増加している時代の話です。

日本の労働者の質がとても高く 世界第4位です。 そのわりに生産性は28位です。 人材の質が高いのでいいものを作っていますが 価格が安く生産性が低くなるという形です。
生産性を上げるために必要なものは 輸出の拡大です。少子高齢化で買ってもらえなくなったものやサービスを海外に売り 需要を満たします。インバウンドがその成功例の一つとされています。

生産性を上げるためには 会社の規模が大きくなければ難しいので中小企業が減る傾向になります。
中小企業が減ると雇用に悪影響が出るとされていますが 実際は 統合という形で減るため労働者は変わらない。減るのは経営者だけです。

生産性と最低賃金は強い関係があり 最低賃金が高い方が生産性が上がります。最低賃金を引き上げると 生産性の低い企業は淘汰され、給与が上がり 商品が高く売れるようになります。
何よりの効果として生産性を上げようという意欲が 会社全体に行き渡ります。

最低賃金を上げると仕事が失われるということを信じているのがアメリカでもあります。白人ほど 少なく 黒人、ヒスパニックが多いです。生産性の上がらない仕事に長年ついていたことが影響されているようです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?