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ここがタメになった「働かない アリに意義がある 長谷川英祐」1/①

研究者がハチやアリなどの集団行動をする昆虫の仕組みを説明するのですが、それにからめて人間の社会を例えるのが面白いです。

アリでも人間でも、働き者は2割であるという法則があります。働き者が疲れた時に交代するためそうなるのですがそれでも多い印象です。そこにさらに社会の仕組みにタダ乗りしほとんど労働しないのも加わるため実際はもっとサボっている割合が高いです。そのあたりの説明を数字を用いてしっかりと論じてくれているのでとても納得しやすいです。

そこまで理論ですが、社畜の自分には体感しづらかったです。

タイトルの意味は、働かないというのは現時点の話であり交代要員として重要であるということです。そんな熱心に急がなくても問題なく社会はまわる。ただし働かないならまだしも、働きアリなのに自身の子供を産み育ててもらう裏切り者がいると、働かない者ばかりになりコロニーごと崩壊します。
会社で要領悪いながらもまじめにこなす平社員よりも、不正を働く社員の方がはるかに経営ダメージ与えるのと同じですね。

~~以降は内容説明~~

アリの仕事と分業

アリは上司がいなくても仕事が回ります。獲物の発見がされたり、餌を取りに行こうとなったりする時など、新たな仕事が突然発生するものです。その時みんなで一斉に同じ行動が行われます。会社のように上司から部下への上から下へ伝わるという形ではありません。

アリの仕事はたくさんありますが、若いうちは巣の中で子育てをします。年を取ったら外で仕事をします。これは余命が少なくなったら危険な仕事についてもらうことが労働力を無駄なく使うことになります。

兵隊アリは餌場で他のアリとエサの取り合いになった時、真っ先に逃げてしまいます。兵隊アリは大きいので育て上げるのにコストがかかっていて、多少の餌をかけた戦いで失うのはコロニーにとって得策ではありません。兵隊としてもっと大きな動物と戦うためのものです。

ミツバチの遺伝子と寿命

ミツバチは女王は20から30匹くらいのオスと交尾します。そのため色々な遺伝子が得られることになります。こうすることで遺伝子に多様性ができてコロニーの全滅する確率が減るので有利とされています。

ビニールハウスに放たれたミツバチはすぐにコロニーが壊滅します。ハウスはいつも狭い範囲にたくさんの花があるため、ミツバチは過重労働になり寿命を縮め、早死にしてコロニーが壊滅します。働き者と言えども過労死するためそんなには働けません。
そうすると働けなかった残りが働き始めます。それらが疲れてくると休んでいた個体が回復して働き出します。このようにローテーションのような形で労働力が保たれていきます。

利他主義とフリーライダー

蜂やアリには自分の子孫を直接残さないのに働く利他主義的な振る舞いがあります。この原因を説明する2つの説が提唱されています。
1つは自分がうまく女王蜂に産ませた方が遺伝子が効率的に伝わるというものです。
もう一つは群れでいることで生存能力が高まり、結果的に遺伝子が続けられるというものです。この2つの説は長年議論されていますが、はっきりとしたことは分かりません。

人間社会で言うフリーライダー問題というのがハチやアリにもあります。蜂やアリの社会でもどうしても社会の仕組みにただ乗りする裏切り者がいます。働きアリなのに働かずにひたすら自分の子供だけを産み続けてコロニーの中で育ててもらうなどのことです。このような裏切り者は必ずいて、増えだしたらコロニーの割合が働かない者ばかりになり滅びます。
そうするとその空いたスペースに普通のコロニーが誕生し繁栄します。結果的に裏切り者が増え続けることはありません。

群れることのメリットと多様性

蟻に限らず昆虫なら「群れでいる」ことだけでも生き残る確率が増えます。分業ができることで1匹1匹が1つの作業に集中することができます。何かあっても協力して対応し合うことができます。このように1匹だけではすぐに限界にぶつかる問題が群れでいると解決できます。

アリは完全にコロニー内の全員を「同じ遺伝子を持ったクローン」にもできるので、数種類のアリでは実践できています。しかしほとんどの種類はそうしていません。
理由の一つに全く同じ遺伝子で揃えてしまうと病気の抵抗力が弱くコロニーが滅びやすいことが挙げられます。多様性がない、同じ遺伝子だと分業がスムーズにいかずコロニー全体の効率が落ちてしまうこともあります。

現実は複雑なので、強い遺伝子1種類だけ揃えたら進化に成功するというものではありません。


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