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よく分からないけど好き、よく分からないから好き

ようやく読んだ村上春樹さんのデビュー作、「風の歌を聴け」。

デビュー作にも関わらず、「村上春樹はずっと前から村上春樹だったんだ...!」と感動した。

僭越ながら、好きな作家のデビュー作って期待外れなことが少なくない。

「え、こんな女子高生いないわ!女子高生の描写気持ち悪いな!」とか

「アルコールの匂いがする化粧落とし?肌荒れるわ!!」とか

私の中のガヤ芸人が暴走してしまうのだ。

たぶん初めて読む村上春樹さんの作品がこの本だったら、「よくわからないなあ」となって、その後しばらくは村上春樹さんの作品を手に取らなかったかもしれない。

実際高校生ではじめてノルウェーの森を読んだ時は、よく分からなくてその後しばらく村上春樹さんの本には手を出さなかった。

今もよくは分かっていないんだけど、それでも好きだなあと思う。

村上春樹さんの本を何冊か読むと、独特な文体や、随所に散りばめられたユーモアに「帰ってきた」と思う安心感があるし、登場人物たちが皆何かしらの空洞を抱えていて、彼らがそれを抱えたまま生きていく様が、なんだか好きなんだ。

「風の歌を聴け」は、読んだことがない人に「どんな話?」と聞かれてもいまいち説明しにくいし、裏表紙のあらすじを読んでみてもなんだかピンとこない。

恐らく村上春樹を知らずにこの本を書店で見たら、手にとるかどうかすら怪しい。(表紙が可愛いので手には取るかな?)

だから、この作品を出発点にしてその後多くの作品を生み出した村上春樹さんと、この作品に群像新人文学賞を授与し、村上春樹という作家を世に送り出した選考員の方たちに感謝の気持ちすら抱く(誰)。

きっとこれからも、私は彼が書く物語に救われるから。


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