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「ゲームの規則」ジャン・ルノワール監督//風刺は上品にかわいく包んで

一番好きな映画のランキングなどを見ると、だいたい10位以内に入ってくる「ゲームの規則」。私もたぶん入れてしまう。もしかしたら1位、2位くらいに入れてしまうかもしれない。この映画のことを思い返すだけで、脳内で最高の映画と時間が流れる。なんて洒落た作品なのだろう。大好きな「ブルジョワジーの密かな愉しみ」にちょっと似ていて、「ブルジョワジーの密かな愉しみ」より上品で美しい。

冒頭からもうすごい。群衆をクローズアップで捉えて混乱の様子を見せ、その後だんだんとズームアウトして、画面の真ん中に物語の中心になるアンドレを据えるファーストカット。このカットだけで、この作品がどんな映画だかわかる。超かっこいい。この映画が面白くないはずがない。

純粋で正直な人は、社会に殺されてしまう

とにかく登場人物たちはおしゃべりで、家の中を行ったり来たりしながら喋り通していて非常に舞台的な雰囲気を醸し出している。話している内容といえば、くだらない恋愛、不倫、男と女の話ばかりである。くだらないことに夢中になって、振り回されている大人たちの滑稽な姿に観客は笑う。その笑いに持っていくまでの過程が非常にじっくりと描かれ、セリフや所作、それぞれの思惑などが交錯していく過程がもう秀逸。「いやーすごいなあ」とクスクス笑いながら見ていた。

ブルジョワたちは狩が楽しそう

だけど途中に挿入される狩りのシーンはやたら丁寧に、動物たちが死んでいく様子をじっくり撮っていて胸がスッと悲しくなる。この描写はブルジョワに対する批判なのだろうか、と疑問に思いながら最後まで見続けると、ブルジョワのくだらない恋愛に奔走されている人たちは、とんでもなく正直で純粋な一人の人間を、「ゲームの規則」を破った人間の過ちによって殺されてしまう。

嘘で塗り固められた金持ちたちは、表面的なものと踊り、刹那に生き、人生を遊ぶように生きる。別にそれが悪いように描くわけではなく、愛おしい存在として描いているのも興味深い。

良い味を出していた3人

ルノワール作品を見るたびに思うけど、この人の作品はどことなく気品があって、登場人物の誰もがチャーミングで、心が暖かくなる。この作品もある意味バッドエンドなのだが、なぜか誰も憎めないし、軽い。どういうことなんだろう。

ルノワール作品、制覇したい。

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