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都知事選とコカ・コーラフローズンレモン

今年、ついに家族5人全員分の選挙権が家に届いた。妹が初めてだということで、朝一番二人で行こうと約束したのだけど案の定正午に起きたのでなんとなくみんなで行くことになった。
(母は期日前投票したので買い物へ。)

3姉妹は父親と普段からあまり顔を合わせない。仕事が忙しいし、一緒に団欒することもどこかに行くこともない。たまに御飯時がかぶると話すこともないので、しょうもないテレビをつけて誤魔化す。

「ちっちゃい頃の〇〇達はなぁ。散歩に出かける度に、おさんぽ、いくでちゅー!ってルンルンだったんだぞ〜」


微妙な距離感の父親は、話すネタがないのかよく私達に昔話ばかりする。今日も「選挙、いくでちゅー!」と昔のネタを持ち出して一人はしゃいでいる父親を少し冷めた目で見ながら近くの学校まで歩いて行った。

21歳にもなる私は選挙に行ったことがなかった。社会学部にいて、妹にも先輩ヅラしながら、行ったことないなんて言えないよなあ。はじめての清き一票は紙のおかげなのか、思いのほか字が上手にかけた気がした。銀色の箱に入れる時家族に見えていないか、少しだけ緊張した。

その後だらだらと帰りながら、新しく出来たまいばすけっとに入った。父親以外は手ぶらで来たので財布などない。それでも姉と妹はそれぞれお菓子の棚とスムージー売り場に散っていった。私はなんとなくレジ前のアイスのショーケースを眺めた。こんなご時世にハーゲンダッツを買ってもらうのは忍びないよなあ。と思いながら、その下にあったコカ・コーラフローズンレモンを手にとった。

店内を見渡して父親を探す感覚はなんとなく既視感があって泣きそうになった。そして、父親が持っているカゴにアイスをコトンと入れる背徳感。半端ない。会計を済ませている間に、少しくるくる回りたくなった。

帰り道、アイスを手の中で溶かしながら「もうみんな選挙に行く年になったのか」と呟く父。私は(うまくいけば)来年から社会人になるし、もう初めて投票に行く人もいない。多分みんなで行く選挙はこれが最初で最後かもなあなんて思いながら、傘をくるくる回した。

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