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【連載】週刊NHKニュースクリップ(2022年9/11号)

日曜日は上手く企画で回したいな、という思いもあってフォーマットを作って連載形式にすることにしました。タイトル画像は、本館5Fのクロ現でいつも使うスタジオの大道具にあった誰が書いたとも知らぬ落書きです(在職中、2022年4月19日AM10:00に私が撮影したものです)。

幸か不幸か、NHKは毎日何かしらのニュースを自ら作り出しています。

職員の皆さんも協会ポータルや広報は発表含めて全てを追いかけるのは難しいでしょう。そこで、毎週チェックできるような定例企画を作ろうと思ったのです。また、このコーナーの更新が不可能になった時、NHKは健全化したと言えるのではないかと思います。

今回は初回ということで「字幕問題」に絞ってやっていきますが、次回に向けては毎日下書きにニュースを溜めていって振り返ります。

「字幕問題」BPO意見書をめぐるNHK側の受け止め

先週、世の中的に大ニュースだったのはコレでしょうかね。ただ、Twitterでもホントにエンゲージメント率が伸びないんですよね。だから、一般の人は全然関心が無いと思います。

しかし、それゆえにあまり報じられていない情報があります。それは、NHK側からの受け止めコメントです。

「BS1スペシャル」へのBPO意見について

https://www.nhk.or.jp/info/otherpress/pdf/2022/20220909.pdf

2022年9月9日 NHK広報局
「BS1スペシャル」へのBPO意見について

 本日、「BS1スペシャル」の番組について、重大な放送倫理違反があった とするBPOの意見書がNHKに通知されました。

 NHKでは、この問題が発覚して以降、経緯及び問題点について調査を 行い、再発防止に取り組んでいます(別紙をご参照ください)。

【NHKのコメント】
取材、編集、試写の各段階に問題があり、デモや広い意味での社会運動に対する関心が薄かったという指摘や、取材相手への配慮や誠意を欠いていたなどという指摘を真摯に受け止めます。 取材や制作のあらゆる段階で真実に迫ろうとする放送の基本的な姿勢を再確認し、現在進めている再発防止策を着実に実行して、視聴者のみなさまの信頼に応えられる番組を取材・制作してまいります。

「BS1スペシャル」へのBPO意見について

と、実はこのような広報文をNHKは発しています。改めて声に出して読んでみると笑えますよね。だって、公共放送だとかジャーナリズムだとか拳を振り上げて叫んでいるのに、このザマですよ?

「真実に迫ろうとする放送の基本的な姿勢」があったら「フェイク・バスターズ」のような杜撰な番組が報じられることはありませんし「プロフェッショナル」だってもっと批判精神に富む健全な番組になったはずです。さらに、「過労死問題」についても自局の取材がなされたはずです。「字幕問題」だってBS1スペシャル等の番組にして伝えるべきでした。

添付文書の方も点検していきましょう。

「コンテンツ品質管理責任者」を中心にした新たなチェック体制
今回の問題を受け、全国の各局に、番組やコンテンツの内容の正確さやリスクについてチェックする「コンテンツ品質管理責任者」を新たに配置し、責任者が、番組の内容をふまえ、提案から放送までのリスクを確認する「取材・制作の確認シート」の活用や「複眼的試写」の実施を検討し、チェック機能を強化する体制を整えました。また、必要に応じて放送日時や放送時間の見直しにも柔軟に対応しています。 新たな体制のもとでの複眼的試写は、ことし 4 月から 7 月末までに、本部や大阪放送局を含め全国で900回近く実施しています。

「BS1 スペシャル」報道を受けた再発防止策の実施状況について

こちらも実態とは乖離しています。要するに、リスク管理だけする専門の管理職に試写をさせるってことなんですが、これは全然機能していません。

なぜかといえば、リスク管理だけするといっても、取材テーマに対しての深い理解と造詣が無ければ何がリスクか分からないからです。

「佐村河内」のケースを思い出してみればよくわかるでしょう。あれだって担当者以外にも、Nスペ事務局もポスプロ担当者も数えきれないほどの試写を重ねました(ちなみにNスペの試写は最低20回あります)。それでも放送されたわけです。

Nスペ事務局試写の様子

要は、音楽の専門家が誰も試写に参加していなかったのです。中にはいたかもしれないが、番組の危険性を自分ごとと捉えて放送停止を本気で助言することはありませんでした(私が見てたら気付けたのに、というCPも大勢いましたが他人事にもほどがあります)。

つまり、1年目の新人だって、もし音楽に造詣が深ければ、25年も勤めて額面年収1300万以上はある部長級以上の職員よりも試写に参加する価値は高いわけです。「カオナビ」なる、これまた“不正経理”のニオイがプンプンする個人の能力確認システムも導入はされましたが、そのような本来必要な試写は今も行われていません。

「複眼的試写」とメタファーを弄していますが、読んでその字のごとく昆虫のようにその場にいるだけの管理職の数が増えようと、番組のクオリティが上がることは決してありません。

「複眼的試写」など昆虫にも失礼

それどころか、試写に参加させられた上にリスクを見逃したとなったら責任問題になるので、少しでも不安がありそうな内容は追加取材すらせずに全部落とすか曖昧にボカすような制作が進められています。こんなので真実に迫れるわけがないのですよ。

900回も「複眼的試写」を行ったと自慢していますが、そのほぼ全てが単なる儀式にすぎません。本当に詳しい者が試写に参加して厳しい意見を言おうものなら煙たがられるのが現実です。よくまぁこんな文書を発表できるものだと、私は試写をする側としても呆れています。

本当に必要なのは、あらゆる分野についての専門家を局内で育成した上で、外部の専門家をNDA締結の上招聘し、試写に参加してもらうことです。素人が付け焼き刃で番組を作らないってことですよ。

続く記述も、まさに「やってる感」だけです。

再発防止策の勉強会を全国で開催
本部に、コンテンツの品質管理をサポートする事務局を設置し、各局のコンテンツ品質管理責任者とともに、今回明らかになった課題を共有し再発防止を徹底するための勉強会を全国で実施しました。勉強会は本部、地域局、関連団体で計240回実施しました。

責任者間でリスク事例を共有
全国のコンテンツ品質管理責任者を対象にした新たな会議を4月から設置し、原則として月に一度、取材・制作のリスクに関わる様々な事例の共有や注意喚起にあたっています。

BS1 スペシャル事務局を設置
BS1 スペシャルについては、NHKスペシャルなどと同様、本部内に事務局を設け、番組の提案・採択から放送まで、チェック機能を働かせるようにしました。すべての番組について、放送前に「取材・制作の確認シート」や「匿名チェックシート」の提出を義務付けました。

放送ガイドラインの原点に立ち返る人材育成
各種研修では、今回の事案に限らず過去の事案や教訓について伝えています。今後も、新人層や中堅層、幹部登用に至る節目で実践的な研修を行い、放送ガイドラインの原点に立ち返る人材育成の取り組みを徹底していきます。

「BS1 スペシャル」報道を受けた再発防止策の実施状況について

勉強会を実施しました、って言っても何を勉強したんですかね?勉強しないと出来ない奴が管理職(基幹職)になっているという事自体も大問題なわけですが、Teamsをつけてぼーっとしてただけでは何も覚えられませんよ。

私が指摘しているように、鋭い指摘をしてくる視聴者と真摯に向き合う経験を重ねていくしかありません。それが本当の勉強です。

過去の事例も共有すると言っていますが、NHKはどれほど把握できているのでしょうか?こんな文書を喧しく共有している本人自身が、自らの過去の恥部を曝け出す勇気を持っているのでしょうか?

退職者まで全て遡って、あらゆるNG事例を集めてデータベース化して、その詳細を知悉した者の育成と、常に誰も参照できるような仕組み作りが必要です。

*こちらの記事に、私の最初の上司の捏造事例を記載しています。

とまぁ、外向けにも内部向けにも一時が万事「やってる感」だけです。絶対に同じ問題がまた起きますよ?いや、「フェイク・バスターズ」のようにたまたま外部から目をつけられていないだけで、本気で検証されたら「BS1スペシャル」と同じことになる番組が無数にあります。

「そうなったら収集がつかないから」ということで、あらゆる検証は消極的にしか行われていません。ですので、私はこれからのNHK健全化のために、NHKに対して可能な限り厳しい目を向け、ジャーナリズムを発揮していく所存です。

※最近、サポートを頂くことが増えております。誠にありがとうございます。頂いた費用はTwitterでの【意見広告】等のプロモーションに活用致します。NHKへのジャーナリズムの発揮こそが、NHK健全化のために不可欠です。ぜひ、ご支援宜しくお願い致します。

もし宜しければサポート頂けると幸いです。取材費の他、Twitterのプロモーション費などNHK健全化の為の取り組みに活用させて頂きます。