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電子書籍の話

紙の本を笑うものは紙の本に泣く。

今年得た中では今のところ一番の教訓だ。
散々本屋を巡って疲れ果て、小腹を満たすために入ったサブウェイでサンドイッチを頬張りながら痛感した。

僕は2年ほど前から電子書籍派になった。
読み終わった本が部屋に積み上がることに嫌気がさし、新たにスペースを作るのも面倒になっていた僕は、給料が貯まったのをいいことに、Kindleに手を出した。

試しに読みたかった漫画を全巻買ってみた。これがとてつもなく良かった。
なんと、50冊以上も本を増やしたのに、部屋は埋まっていない。
それに、どの本をどれだけ読んだか、システムが勝手に管理してくれる。
スマホで読むときは見開きが読みにくかったりと、デメリットもそれなりにあった。
それでも、スペースを確保しなくていいというのは僕にとって大きなストレスフリー要因だった。

将来、子供ができたら自分のアカウントをそっくり譲渡し「パパはこんな漫画を読んでいたんだぞ」と自慢することもできるな。あ、でもAmazonが潰れたら終わりか。いやいや、これだけ世界的大企業になったんだから、それはないだろう。
なんて妄想も膨らませたりした。

友人や家族にも電子書籍派であることをアピールして、これ見よがしに便利アピールをするウザい人間になったこともあった。というか、この前までそうだった。

まさか、また紙の本が読みたくなることがあるなんて。

急に、どうしても、ある本が読みたくなった。しかも、その日のうちに。 ならばその場で買って即ダウンロードできる電子書籍が最適だ。しかし、その本はなぜか無性に手で紙をめくって読みたかった。


少し大きな駅のある隣町へ行き、本屋を探した。その本は割と人気のある作家の人気作で、売れるからどこの本屋にも置いてあるだろうと思っていた。

4,5件ほどまわったが、どこにも置いてなかった。どこの本屋でも15分ほどかけて、3周くらい棚を周回して探してしまった。店員に在庫を聞けば一発でわかるし、検索機が置いてある本屋もあった。なんであの時、自力で探すことに意固地になってしまったんだろう。

結局、最後に入った店で素直に店員に尋ねた僕は、彼女の一言でその場にへたり込みそうになった。
「今、ウチに在庫はないし、出版社で重版がかかってるみたいですね。」
そりゃどこにも置いてないはずだ。

サンドイッチを食べながら「今すぐ読みたい自分」と「紙で読みたい自分」を勝負させようとした頃、すでに電子書籍のダウンロードは始まっていた。前者の圧倒的勝利。

あまりにも本末転倒な結果で笑ってしまった。なんだったんだよ、あの本屋でぐるぐるしてた時間。しかも結局電子書籍で読んでるし、めちゃくちゃ面白くて紙だとか電子だとかどうでもよくなってるし。

まあいいや、とにかくもう電子書籍イキりはしません。そして素晴らしい読書体験を与えてくれた作品に感謝。


星野源『いのちの車窓から』 面白いから読んでみて。

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