童貞

初めて君の背中のホックを外した時の感触を
今でも鮮明に覚えている
何年前のことよと笑われるから
言わないけどさ
僕の指先は少し震えていたと思う
研ぎ澄まされた緊張が
とっくに臨界点を突破してたから
欲望ではなく愛情で女を抱くのは初めてのことだったから
僕は童貞だった
みじめな童貞だった
経験人数が多いことがこんなにも役に立たないなんて
唖然とした呆然としていた
結局君のリードで夜は進んだ
あんなに情けない夜は初めてだった
あんなに素晴らしい夜は初めてだった
愛してる
そう囁かれて泣きそうになった
君の快楽を引きずり出そうと必死で腰を振る僕は
なんていたいけないきものだったろうか
君と寝るのが好きだ
それは今も変わらない
僕はもう童貞じゃない
君の瞳を潤ませることだってできる
とっくに捨ててしまったであろうあのブラジャー
記念に取っておいてほしかったなあなんて
僕は変態じゃないぞ
でもあの夜震えた指先は
君を心から愛するスタートの合図だった
小さな胸が揺れる
僕は必死で腰を振っている
終わらなければいいのにといつも願う
その顔やめて
可愛すぎる
果てた僕を抱きかかえて
赤子のようにあやされていると
ああ何だかやっぱり童貞みたいだ

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