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小学校低学年

夏休みの宿題の定番 絵日記

その中の1ページに
初めて 誰かとの夢が生まれた日を
したためた

いつもは 1日1ページ描くのも精一杯だったのに
その日の事は
 「残りのページ 全部使って描いて良い?」
と言い出すほど
楽しそうに描いていたらしい

そんな事まで言っていたのは
よく覚えていないけれど
今でもハッキリ思い出せる光景はある

それは 友達と自分との2家族で
初めて線香花火をした後

夜空に ものすごいスピードで
光が走った あの瞬間・・・
初めて見て感じた衝撃だった・・・!

「あっ!!流れ星だね。見た?」

家のお父さんがそう言って
2人の顔を交互に見た

「見た!!ピューって!!一瞬だったよ!!」
「今の流れ星?お星さま?本当に?」

素直で好奇心旺盛な友達と
疑い深い自分の性格は
この頃から出ていたようだ

「そうだよ。
流れてる間に願い事すると叶うんだよ~!」

そんなお父さんの言葉を聞いて
翌日から 2人の間で
早口言葉の特訓が始まった

と言っても 自分達の願いを
いかに早く言えるかの特訓だ

「ずっと夏休みになりま〇▽◆!!」
「空からお菓子が▲※□ように!!」
「サンタさんからゲームがもらえ☆〇×に~!!」
「お城みたいなお家ーーーーー!!」

あの一瞬の速さを知っているからこそ
スピード重視の特訓!!
しかし なかなか言い切るのが難しい

気づけば
もはや願い事を言い切るよりも
どちらかが口を開けば
もう1人が吹き出して
つられて笑って

5分もしないうちに 
2人のお母さん達も呆れて止められない程
願い事は もう愚か

訪れていた 友達の家は
まるで笑い袋かと言うような
2人の笑い声で溢れていたらしい

それを止められたのは
おやつの時間だった

友達の家で出されたスイカに齧り付きながら
テレビの脇に 見慣れない物が置いてあることに気づいた

「あれは何?」
指を差して友達に聞くと

「あっ!!そうだ!!
大きくなったら流れ星屋さんになろう!!!」

・・・???
全く予想外の返事で よく分からない

「これは地球儀って言うんだよ。
ほら!お空を飛んでいけば どこにでも行けるんだよ!!」

食べかけのスイカをそのままに
テレビの脇の それに飛びついて

「ほらね。ヒュ~っ!!!」と
片方の手で勢いよく回しながら
もう片方の指で その地球儀と言う物をなぞっていた

流れ星屋さん・・・
そうか!!!

「じゃあ お星さまもゆっくり流せば良いんだ!!
そしたら いっぱい願い事が叶うね!!」
我ながら良いアイディアだと思った

友達も嬉しそうに
「うん!!」と笑った

その勢いで 持ってきた宿題の絵日記を広げ
2人で一緒に描き始めたらしい

内容は どちらも同じ
2人で叶えたい
たった今生まれた 2人の夢の絵だ

「夜になったらロケットでお空に行って
一緒にお星さまを流すんだよ!」

当時 よく見ていたアニメやゲームの世界を浮かべながら

「砂漠の国には ラクダもお水が飲めるように
噴水を作るお願いする?」とか

「お薬の無い国には薬草を生やせばいいね!」とか

「ご飯があまり食べられない国には
ご馳走を出そう!」とか・・・

そう話しながら 思い浮かぶ絵はキリがなく

「残りのページ 全部使って描いて良い?」
と聞いたんだろう

あれから2人とも 良い大人になった
友達は県外に行って なかなか会えないけれど
関係は続いている

今日は数年ぶりの再会だ

今 我が家の庭には
緑のカーテンに 小さな星が咲いている

この花の種を見つけた時
絶対に咲かせて 見せたいと思ったんだ

「これ 緑の星空みたいでしょ?
流せないけど 咲かせたよ☆」って

流れ星屋さんになり損ねた2人は その後 
仕事で絵日記に丸を付ける側と
趣味で星の動きを調べて楽しむ大人になった

さて そろそろ迎えに行こうかな

このお星さまの花のことは
ここに来るまで まだ秘密

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