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【財政状況は厳しい?】

  令和2年6月2日に参議院で開会された財政金融委員会の審議中継をインターネットで視聴しました。質疑応答から気になった点をピックアップし、私の所見を述べたいと思います。

  財政健全化に関する質疑が行われました。「コロナ対策による大量の国債発行が行われた。補正予算で国債発行の追加は約58兆円で過去最高。当初予算分と合わせた今年度の合計発行額は90兆円を超える。これはリーマンショック後の2009年に発行した52兆円の国債を大幅に上回る。コロナ収束後の国債償還の財源はどうするのか、朝日新聞で記事が報道されている。現時点で、財務省としては国債償還と財源措置をどのように考えているのか。増税で賄っていくのか、MMTのような理論で進むのか、考えをお聞きしたい」との質問です。

  これに対して麻生財務大臣の返答は次の通りです。「政府として今は感染症の影響を抑えるためにさまざまな措置を決定し、対策を講じている。第2回補正予算の編成によると国債依存度は56.3%だ。税収が今は増加傾向で63.5兆円あるという状況下でも、リーマンショック時の国債依存度を上回り、財政は極めて厳しい状況にあることは間違いない。したがって我々政府は、なんとしても経済再生と財政再建の二兎を追わなければいけないと、この内閣が始まって以来申し上げている。将来世代に対する責任も含めて考える必要があるので、財政の持続性を確保しなければならない。財政というものが信頼を失うと円安に振れたり、金利が急上昇したりする状況も考慮する必要がある。MMTみたいな話では進められないし、日本のマーケットを実験場にするつもりはない。極めて丁寧に積極的に対応していきたい」と答えました。

  この点について私の意見を述べたいと思います。リーマンショックの際の国債依存度は52.1%、今回は56.3%となり、確かに過去最高です(https://www.nippon.com/ja /japan-data/h00736/)。コロナで苦しんでる国民を当然政府は支援するべきで、必要があれば国債発行を行うものと考えます。メディアでよく報道されているのは、この過去最高である56.3%という数字ですが、もっと重要なのは低金利への依存度だと思います。世界銀行のウェブサイトを見ると、各国政府の利払いと税収の比率が発表されています(https://data.worldbank.org/indicator/GC.XPN.INTP.RV.ZSmost_recent_
value_ desc=true)。 2018年では、世界全体の利払いと税収の平均比率は6.3%であり、途上国のほうが先進国より高い場合が多いです。アメリカは15.3%で17番目、日本は11%で36番目と、一見すると日本のほうが財政が健全に見えるかもしれません。しかし、アメリカの10年国債利回りは現在0.71%ですが、日本の10年国債利回りは現在0.02%なので、アメリカ政府の国債利払い率は日本政府の30倍以上です。もし日本の国債利回りが少しでも上がれば、税収に対する利払いの比率はおそらく大幅に上昇して、日本の財政は大変な状況になると思います。

  したがって、日本の財政健全化を確保しているのは、国債を一番多く購入している日銀であると認識しています。日銀の国債保有は累計発行額の50%を上回っており、国債利回りの上昇を購入で抑えている状況です。国債利回りの安定を維持するためには、日銀は国債購入を継続するしかないでしょう。しかし、この同じパターンが続けば、政府は国債償還義務のため、さまざまな税金を増やし税収を上げるしかないと思います。結果として、「日本政府の財政健全化は我々国民が税金で保証している」ともいえます。MMT理論が正しければ財政上の問題は起こらないかもしれませんが、国民が度重なる増税に同意するかどうかは少し疑問です。

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