【のーがたのーと】地域を愛する店主が選び抜いたコーヒー豆/このみ珈琲 許斐善隆さん
喫茶店兼コーヒー豆専門店
JR直方駅から10分ほど歩き、ふるまち通りを進むと、周りのお店と比べると比較的新しい店構えのおしゃれなコーヒー屋さんが見つかります。世界中から厳選したコーヒー豆を取り扱うコーヒー豆専門店とその豆を使った素敵な喫茶店「このみ珈琲」が今回取材させていただくお店です。
お話を聞くと、実は喫茶がメインなのではなく、コーヒー豆販売がメインなのだそうです。
店主の許斐善隆さんはそんなこだわりの豆をお店で提供するためにお店を開ける日には朝4時に起きて、豆の焙煎を行います。そうしてお店に並んだこだわりのコーヒー豆はそれぞれ特徴があり、お客さんの要望に合わせておすすめしています。
「苦味があってもいいよって言われてもどの程度苦味がいいのかお客さんそれぞれ違うわけですね。そこは、いっぺん、真ん中らへんを飲んでもらって、次にちょっとヒントをもらっておすすめを探してます。」
お客さんと密にコミュニケーションをとりながら、おすすめのコーヒー豆を一緒に見つけていく姿勢からは、こだわりの豆への誇りと地域のお客さんへの思い入れが感じられました。
会社員をやめてコーヒー屋さんへ
店主の許斐さんは直方商店街でコーヒー屋さんを始める前は普通の会社でサラリーマンとして働いておられました。
「社会人もやりよったんやけど、社会人を一旦やめて、お世話になったコーヒー屋さんに、無償っていうか別に給料もらわんで、行けるときに行って一年間くらい勉強させてもらったんよね。」
学生のころからコーヒー専門店に通うほど、コーヒーが好きだった許斐さん。そのコーヒー好きが社会人になってからも高まり続け、コーヒーについて学んでいくうちに自分でお店を持ちたいという思いになりました。
そうして最初にフランチャイズとしてお店を始めた許斐さん。お店を出すにあたって家族にはもちろん、直方の地域の皆さんにもお世話になったと許斐さんは話します。
「当たり前なんやけど、やっぱり、商店街に新しくお店出したけん、当時はみんな一歩引いてるなって思ってたんよね。そこから年月が経ってね、すごく打ち解けて。お客さんに納得してもらうっちゅうか。」
コーヒー屋をはじめるという夢をかなえた許斐さん。商店街にお店を出した当時もとても大変だったそうですが、実は、それ以上に大変な時期があったそうです。
お客さんの心をつかむコーヒー
「商店街にお店を出してから少しして、フランチャイズをやめて独立したんよね。そのときが一番きつかった。」
懇意にしてくれていたお客さんの中には、独立前に提供していたコーヒーが好きで通っている方もおられました。独立時に、当時新しかったスペシャルティコーヒーを取り入れ、お店のラインナップを大きく変えたことで、そういったお客さんがお店から離れてしまった時期もあったようです。しかし、許斐さんは地道にお客さんの理解を得ていき、お客さんを集めていきました。
「いろいろ説明して、一生懸命やって、お客さんに納得してもらうというか、1人ずつ受け入れてもらって。また新規の人も来てくれるし。徐々に増えていって、ちゅう感じです。」
許斐さんの地域の方に寄り添った接客によって、新しいコーヒーも徐々に受け入れられ、昨今のコーヒーブームも相まって客足は伸び続けているようです。
一時はお客さんが離れてしまう原因となってしまったスペシャルティコーヒーも今では、お店の目玉となっています。売り上げについても、ネット通販や業務用の卸ではなく、店頭に買いに来てくれる小売りのお客さんが最も多くなっています。スーパーには売っていないトップグレードのコーヒー豆を扱っているためリピーターも多いそうです。
また、お客さんにコーヒーを知ってもらい、お店に来てもらうために、月に１度の商店街のお祭り「直方五日市」では特別な取り組みをしています。
「コーヒー豆をその日は全品1割引。あとその日しかつくらない五日市ブレンドっちゅうのを、そのときしか出さないブレンドなんやけど、それを数量限定で販売したりしてます。」
お客さんのために、商店街のために考え行動し続けている許斐さん。五日市含め、商店街への想いについても語っていただきました。
商店街に魅力的なお店を
昔と比べると、活気が減ってしまった直方の商店街ですが、その商店街に活気を戻すためには商店街に魅力的なお店を増やしていくことが大切だと許斐さんは話します。
「魅力的な店がいっぱいあったらとはよく言います。そういう魅力のある店を商店街に呼んで、商店街に魅力的なお店がたくさんあったら人がたくさん来る。」
鞍手で育ち、今でもそこから直方の職場まで通っているという許斐さんは、小さいころに経験した、人混みでまっすぐ歩けないような直方の商店街を思い出し、そのような商店街をもう一度見てみたいと思っています。
このみ珈琲が商店街にお客さんを呼ぶ魅力的なお店の第一号になれればと許斐さんは話します。また、新たにお店を出す人が許斐さんのお話を聞きに来ることもあるようです。
「私が、一応お店をやってるので、来たりする人はいます。教えられることは教えますって、そんな感じです。」
商店街の中にある魅力的なお店としてこのみ珈琲は今日も、商店街に多くのお客さんを呼び込んで、商店街に賑わいを加えています。
店舗情報
『このみ珈琲』
営業 ：月～水,金,土 10:00～19:00 日 10:00～18:00
住所 ：〒822-0017 福岡県直方市殿町２−９
定休日 ：木曜日
電話 ：0949-24-3952
文・編集：山崎大智
取材 ：日隈泰雅、⼭崎⼤智、椛島匡、辻尚大
撮影 ：椛島匡
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