今の自分の延長線ではない「自分」に出会いに/DANRO BEYONDファシリテーター草さんの想い
人と人とのつながりの中には、”目には見えない温かさ”がある。その温かさが増し、循環する時、きっと世界は今よりもっと明るくなる。そんな想いから創業したDANROは、プロフェッショナルな対話者として想いや感性を発揮し、持続可能な取り組みを深めるプログラム「DANRO BEYOND」をスタートさせました。
ファシリテーターを務めるのは、実践型対話スクールDANROのカリキュラムの基礎を創られた佐藤草(Sou Satoh)さんです。今回は、このDANRO BEYONDに込められた想いや、その内側についてお聞きしました。
安定して自分を発揮するために
━━草さんはこれまで「DANROスクール」「DANRO+」といったプログラムを創られてきましたが、今回なぜプロフェッショナル向けの「DANRO BEYOND」を創られたのでしょうか?
草さん:DANRO BEYONDは、対話者がよりプロフェッショナルに、自分が想いを持って行っていることを無理ない状態で、継続してクライアントさんに提供していくために必要なことを体感し、学ぶ場として生まれました。
私のなかで、自分との繋がりが分からなかった状態からしっかりと繋がっていく、まず今の自分を大切にする場所が「DANROスクール」だとすると、そこから更に深めていきたい、自己を探究する場所が「DANRO+」という感覚なんですね。
じゃあその先、対話を仕事にしたり、もしくは対話を仕事の一部とする人達になにが起こっているかというと、走り続けた先でバランスを崩したり、自分の大切にしたい感性や想いを発揮できない壁にぶつかってしまう人もいるんじゃないかと思うんです。
草さん:例えば「コミットメント(責任)とエントラスト(委ね)」のバランス。もちろんプロとして責任感を持つことは大事だけれど、クライアントさんのことを考えるほど、コミットメントに振れすぎて苦しくなったり依存されたり、自分が大変になってしまうことがあるんですね。
一方で、エントラストに偏るのもまた違う。確かに”答えは自分のなかにある”し、人生の選択肢はクライアントさん自身にあるけれど「じゃあ自分が時間を共にする意味とは?」と考えた時、単純に委ねるだけだったら、今の時代、ロボットやAIにもできるかもしれない。
でも、そのバランスを自分でとろうと思うと難しいんですよね。何故なら、私たちは「私」を生きているなかで培われてきた「自分の考え方の癖」と一体となっているから。
━━確かに。私もまさに、そのバランスの難しさに悩んでいます。だから、今回の案内ページを読んで、それを学べるプログラムと初めて出会えた!と思って嬉しかったんです。
草さん:今回のプログラムは、この青線と赤線の2軸で構成しているんですがこの軸がどちらも大事だと考えているんです。例えば、「青い線」だけ強いと、提供するもののクオリティで競争にとどまってしまうし、反対に「赤い線」だけが強いと、自分と相手との境界線が取れなくなることが起こったり。
━━青と赤のどちらか良い、悪いではなく「どのバランスが自分にとって良い状態か」を自分が知っていることが大事なんですね。
草さん:そうです。これまでのスタイルや価値観と一体となっている自分を、一度客観的に眺め、美意識と照らし合わせて”最新の自分”が大事にしたいものを、明確な意志を持って選び直せるようにしていく。
そうすると、無意識に一体となっていた時よりも、よりパワフルに安定して自分を発揮できるし「この場ではこの自分を発揮しよう」と葛藤なくできるようになるんです。
━━コーチングや対話のメリット、相手に起こる変化などは学ぶけれど、その後に「自分に起こる変化や対処法」について学ぶ場も、事前に知る機会も他にはなかったように感じます。
草さん:そう思います。きっと、今回のようなことを学べる機会って、場を設けずとも、いつか必要な時に目を向けなくてはいけない状況が訪れると思うんですよね。
そこに敢えて旗を立てて「対話をしている時、人間には何が起こっているんだろう?」「私は、どんな状況が限界になりうるのだろう?」と、自分や相手に起こりうる影響に目を向けてみる。
草さん:このDANRO BEYONDというプログラムでは、対話や、対話を仕事の一部とするプロフェッショナルとして、心身を健やかに保ちながから対話を提供し続けられるために知っておくとより良いんじゃないかなという学びや体験を体感して欲しい。そんな想いが込められています。
「分からない」選択が、今の自分を超えていく
━━講座は全6カ月。この間、草さんはどんな想いでみなさんと過ごしていきたいと思いますか?
草さん:そうですね。参加してくださる一人ひとりの、それこそ光だけでなく陰のような”見えないところで起こること”も信じて、その人自身を見つめつづけたいなぁと思います。
草さん:今回のプログラムのなかではアートを活用したワークなどもありますが、もしかしたら参加者の方のには「なんで今、これをやるんだろう」って理解できないことがあるかもしれません。
でもそれは、今の自分に理解できないだけなんですよね。今の自分に理解できることだけを受け入れていたら「今の自分の延長線」にしか行けない。それはつまりBEYOND(~の向こうに、~を超えて)ではないわけで、その「分からない」を抱えることが大事だと思っています。
━━想定内に想像以上はない、ということでしょうか。
草さん:今の世の中を生きていると、そういうものに向き合わせない引力みたいな力が、どんどん増えている気がするんですよ。
例えば、動画や本もそう。SNSや人からの反応が見えやすくなっている今の社会では、短時間で喜びを感じたり、結果が見えるものに目が向きやすくなっている。その状態に、私たちは安心するんですよね。
けれど、それに慣れてしまうと「本当にそうかな?」「自分にとってはどうなんだろう?」と考えるチャンスが失われてしまう。それは、蛹(さなぎ)になれない”いもむし”と同じ状態だと思うんです。
━━いもむし、ですか?
草さん:蝶になる前、いもむしが蛹の中でどうなっているかと言うと、一旦どろどろに溶けて、自分の中にあった本来の姿に新しくカタチづくられているんです。
草さん:一方で、私たちが身を置いている社会では、右肩上がりが良いとか、成長しているのが良いとか外側のものに影響されて、すでに自分が大切にしたいものが大切に思えずに、もしくは、思いながらも「今はこれをした方が良いかな?」とか「こんな自分になってから」とか別のものに向かっていってしまったり、蛹になれない状態が生まれてしまう。
だから敢えて、どこに行くか方向さえも分からないけれど「分からない自分」をホールドすることでしか出会えない自分を探しに行く。このDANRO BEYONDが、そんな時間になる人もいるんじゃないかなと思います。
━━今のお話を聞いて思い出したのは、草さんの創る場が、まさに安心して「分からない」と向き合う空間になっていたなと。分からないという怖さを超えるくらい「知りたい」とも思った時、草さんがその場にいる私を、どんな状態であっても受け入れ、信じてくれていると感じたから、安心して見つめることができました。
草さん:もちろん、私も人間なので、みなさんが「こんなことに気付きました!」「すっきりしました!」っていう姿を見ると安心するんですよ(笑)
でも、目の前のみなさんの反応だけに自分が満足して、そこを求めて提供するものを決めてしまったら、みなさんのなかに眠っている可能性の種が開く機会を先延ばしにしてしまうかもしれない。
だから私は、みなさんが「分からないな」となったとしても、その場にいつづけられる環境を創ったり、一緒に在ることを大切にしたいと思います。
対話を文化に。その先へ繋がる一歩
━━最後に、草さんの”今”の想いをお聞きしたいです。
草さん:私は今回、このテーマで取り組めることが嬉しいなぁと思っています。それは、この内容はもともとある「対話」というものが人にとって大切なものなんだと気付いている人が多くなっていて、積極的に取り組んでいる人が多くなったからこそ深められることだと思うんですね。
その先に、より自分らしく、自分の感性だとか想いを発揮したり、自分が想いをもって携わる仕事として取り組むにはどうしたらよいのか、そんな一歩踏み込んだテーマだと思うんです。
そうやって世界が一歩ずつでも進んでいることが嬉しいし、そこに自分が体験してきたこと、想いをもって取り組んできたことが、何か役に立てるかもしれないということが嬉しいですね。
━━まさに、草さんが10年コーチングや対話に携わるなかで学んだり大事にしてきたものの集大成なのですね。
草さん:もしかしたら、プログラムでお伝えする内容が10年後には古くなるかもしれません。でもそれは、こうして考えた人がいるから古くなるだけであって。
自分が生きている間に何ができるかは分からないけれど、自分が歩いた先を歩いてくれる人がいるかもしれない。それが、答えがないものを深め続けている意味なのかもしれないとも思います。
自分が生きているうちに、対話が文化になっている世界になっていればいいなと思う一方で、例えそうならなくとも、その世界に近づくきっかけになれたら良いなと思います。
DANRO BEYOND 体験型説明会を開催します
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DANROについて
「日常に対話を、対話を文化に。」をスローガンに掲げるダイアログカンパニー。私たちがともにこの世界に生きていくために、人、自然、社会など全体性を探求しながら、循環し合える空間を創造しています。
実践型対話スクール、DANRO CHILDREN、自己を探究するダイアログコミュニティの運営などを行う。その他対話を軸とした事業を展開。
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