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#26 公共施設マネジメントにおいて大事なコトvol.3(庁内でのポジションと情報発信)

さて、今回も前回までの続きで、僕が役所の中で「公共施設マネジメントやFM」を進めていく上で大事だと考えていることのシリーズ編Vol.3をお届けしたい。

Vol.1では「現場を知っているという強み」について、Vol.2では「内製化によるチーム力アップ」について書いたが、今回のお題は「庁内でのポジションと情報発信」について。

前2回と同様、テクニカルなことでもなく手法の話でもなく、役所内での動き方みたいなことだが、だからこそ誰にでも、またどんな自治体にでもできることだと思っている。

ただ、これは1年とか2年とかの短期的なスパンの話ではなく、日々の地道な活動を続けた上で積み上がってくるものなので、そこだけはお間違えなく。

シリーズ物となっているので、ついでにVol.1とVol.2も併せてどうぞ。


嫌われ者になっちゃいないか?

昨今の厳しい財政状況や公共施設の老朽化及び更新問題を目の前にして、公共施設マネジメントとかFM(ファシリティマネジメント)というと、どうもネガティブな仕事だと思われがちである。

確かに、公共施設が大量に整備されすぎていることは事実であり、今や自治体経営を圧迫する大きな要因にもなっている。
そのため、公共施設の総量をできるだけ減らしてスリム化していくのは、どの自治体でも至上命題であり、批判を浴びながらもコトを進めていくために冷徹な悪役に徹する場面も多々あるのは事実である。

ただ、色んな自治体に出向いていくと、公マネやFMをやっている部門(公マネ課とか)が、庁内で悪戦苦闘していたり、職員になかなか理解してもらえない、とかの悩みを聞くことも多い。
事情を聞いてみるとなるほどな、と思うことが多々あるのだが、そういう自治体は大抵の場合、下図のようなスパイラルに陥っている。

多くの自治体に見られるFM担当者の構図(筆者の発表資料より抜粋)

施設を減らせという目標を掲げてネガティブメッセージを繰り返し、自分たちは比較的安全領域にいて、事業をやるのは所管課で、なおかつ現場のこともよく知らないし・・・みたいな残念な構図である。
驚くのが、人口何十万という中核市くらいの大都市(職員数千人規模)であっても、公マネ担当者は2人とか3人ということも珍しくない。
(津山市ではFM活動を僕も含めると6〜7人で担当している)

これだと、流石に苦しいというか、組織全体でよほどのパワー(首長の直轄隊とか完全に反則な武器所有とか)を持っていない限り、着実な成果を上げていくことは厳しいように思う。

だって、嫌われ者の言うこと聞いたって楽しくないし、言われたように従うと自分の立場が悪くなる予感しかないじゃない?

まぁ、みんなから嫌われたとしても、タイガージェットシンみたくサーベル振り回したり、非道な悪役に徹しきれれば良いのかもしれないが(笑)

鞭も必要だけど飴も必要

とかく厳しい対応を求めなきゃいけない公マネやFMであるが、やはり厳しいメッセージだけでは周りはついてこないし、多くの人を味方につけることもできない。

1人や2人の担当だけで、グイグイ進めていけるのならそれでも構わないが、全庁的に進んでいこうと思えば、所管課との協働体制は絶対欠かすことはできないし、できるだけ庁内で敵を増やしたくもない。

そういった時にはやっぱり飴が必要となる。

やはり鞭だけでは難しいから、時には飴も必要

ちなみに僕たちにとっての「飴」は、公共施設保全のための予算であった。

2016年に創設したFM専用基金によって、僕たちは所管課が現場で一番困っていた老朽化に対する予算を握るという「飴」を手にすることができたのである。
この基金の詳細については、下記のジチタイワークスの記事を読んでもらえればと思うが、こういった手段を持っているというのは、FM担当にとって大きな武器になるはずだ。

庁内で頼られる存在に

全ての自治体において「事務分掌」というのが定められており、それぞれの課や係で行う業務というが細分化されているのが役所の仕事の特徴だ。
タテ割りといえばそれまでだが、あまりこれに縛られすぎると、各プロジェクトは前に進んでいかない。

公マネやFMは、当然ながら庁内で横串を刺さなければならない取組であるため、この仕事は組織上ボーダーレスでやっていかないと上手くいかないと僕は常々思っている。

加えてのこととなるが、職務でも業務でもなく、公務という志を高く持つということも重要なエッセンスだと思っている。
↓詳しくはこちらに書いているので、ぜひ。

このボーダーレスの動きこそが、庁内での信頼を生むのではないかと僕は思っている。
本来は所管課に任せて然るべき仕事を、裏からサポートしてあげたり、相談に乗って一緒に動いたり、時には自分たちが事業を進めていったりしながら、タテ割りではなくプロジェクトを最短かつ最適に進めやすい体制を組み、絶えず可変しながら動かしているのが僕らの特徴である。

こういう動き方をしているため、自ずと関わるプロジェクトは増えてくる。
それが一つ一つカタチとなり、成果になって表れていくと、自分たちの経験値が増すだけでなく、庁内全体からも頼られる存在になっていくというスパイラルができてくる。

こうなってくると、最初に書いた嫌われ者としてのキャラクターは完全に払拭され、庁内全体にとっての信頼と要のポジションを勝ち取ることが出来るのだ。
ここまでくると、少々厳しいメッセージでも説得力があるし、一緒に動いてくれる仲間もちゃんと傍にいてくれる。

欠かせない成果の情報発信

もう一つ、プロジェクトを回し続けることと同様に、情報のアウトプットは非常に重要なことだと思っている。

もちろん外に向けての発信も重要なことであるが、今回は庁内に向けての情報発信について紹介したい。

絶えず何かしらのアクションをしている僕たちであるが、そんな活動をしっかり庁内に発信していこうということで、2019年4月から「つやまFMだより」という庁内新聞を毎月発行し続けている。

この庁内新聞は、自分たち(財産活用課)の活動だけで誌面を構成するというルールの基、毎月4つから5つのネタを、それぞれ主に担当しているメンバーの記名入りで記事にしているものだ。
庁内向けということにしているので、外に向けては書けないような内容も面白おかしく記事にしていて、自分たちの活動に絞って構成しているからリアリティが半端ないし、記名もしているので担当者の苦労の顔も浮かんでくる。

当初は冷ややかな視線もあったように思うが、流石に5年も続けていると、庁内のあちこちで応援の声が聞こえてくるし、そんな声を受けて僕たちも頑張ろうという気持ち(&悪ふざけ)も膨らんでくるというものだ。
この「つやまFMだより」先月号までですでに第58号を数えている。

2019年4月から庁内向けに毎月発行している「つやまFMだより」

ちなみにこれ、記事を書くことや新聞に仕立てる作業自体はそんなに時間はかからないのだが、毎月ネタを作っていくことは地獄で、ネタ切れの恐怖と毎月戦っている(笑)

この恐怖が一番大変(笑)

色んな役を演じなければならない(信頼されてこそなんぼ)

ここまで書いてきたように、公マネやFMを進めていく時に、その担当者は、庁内のハブとなって動いていく必要がる。

時には一緒に汗を流し、時には監督的な役割として、時にはヒールな悪役を演じる必要もあろう。
そして、何より庁内や上層部(例えば首長など)から常に信頼される存在でなければ物事は前に進んでいかない。
目の前でリアルに起きていることは、どの計画にも書かれているような「絵に描いた餅」の世界ではないのだから。

そのために打てる手はいくらでも打つし、経験を上げていく必要もある。
だからこそ、Vol.1とVol.2で書いた、現場と内製化が重要なのだ。

そして、それぞれの局面によって自分たちの役割を変え、お父さんにも、お兄さんにも、恋人にも、かわいい坊やにもならなきゃダメなのである。

僕たちが目指すのは、こんなロックンロールアンサンブル。マキタも現場で多用してるしね(笑)
でも・・・MR.BIG、ほんとはもっと見たっかった(涙)

2011年のジャパンツアーにて・・・若いっ?(笑)

ということで、vol.4となる次回もお楽しみに〜。

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