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図書館司書に聞いてみた「小学生の読み聞かせにお薦めの本」と注意点

先日、小学校の図書室で「図書館司書と読み聞かせボランティアとの交流会」があり、お邪魔していろいろお話を伺ってきました。

「小学生に読み聞かせる本はどのようなものが適しているのか」
「学年によってどう変えていくべきか」

司書の方が教えてくださったことをまとめました。

今回は「小学校の教室で読み聞かせをする」が前提のお話になります。また、本noteの構成上、本の紹介リンクが多めになっていることをご了承ください。

■学年別おすすめ本

もう園児ではないし、どんな本がよいのかわからない・・・

1.低学年には「長く読み継がれてきたもの」

定番・鉄板とされるものは、いつの時代の子どもにも愛されてきた本。
特徴として以下の点が挙げられます。

・文と絵のバランスがよいもの
1ページ(見開き)の文の量が多いと、同じ絵を長く見続けることになり、子どもが飽きてしまいます。また、家で我が子に読み聞かせをするときとは違い、本が遠いので絵がよく見えないことも。
絵に頼らず、読んでいる声だけでも内容がわかるようなものが適しています。

・日本語が難しくないもの
難しい日本語を理解するのはまだ無理な年齢。途中で解説をしてあげてもよいのですが、あまり多いとストーリーに入り込めなくなってしまいます。
できるだけ解説を必要としない内容の本を選ぶようにしましょう。
昔話などで「これは○○のことね」と単語レベルで教えてあげられるものが1~2カ所入る程度なら、そこまで気にする必要はありません。

・繰り返しで展開するもの
同じ人物または動物がいろいろなことを繰り返していくものは、子どもにも理解しやすくておすすめ。
「じゃあ次はどうなる?」とストーリーについて来てくれるからです。

具体的な絵本の例はこちらです。

低学年の子は、面白いと思った本は、結末がわかっていても何度も読みます。それでも、学校で誰かに読み聞かせをしてもらうと、家で読んでもらったり自分で読んだりするのとは違った印象を持つかもしれません。

「みんながとっくに知っている本だから」と敬遠せず、「みんなも読んだことあると思うけど」から始めてみると、子どもと一体感を持って読み聞かせができるでしょう。

2.中学年には「ストーリー性があるもの」

中学年は、小さい頃から何度も読んできた絵本に飽きてくるころで、自分で考えられるようになってほしい年頃でもあります。それでも読み聞かせに使う本は絵本で構いません。

文が少し多めで、ストーリー性を持たせたものを選ぶとよいでしょう。冒険ものなど先が気になる内容ですと、食い入るように聞いてくれます。

3.高学年には「メッセージ性があるもの」

文が多めの本でも「面白い」と感じる子が増えてきます。もちろん個人差はありますが、すべてが文字に表れていなくても、行間を読む想像力がついてきている年頃

ひとりひとりに「この本が伝えたいことは何か」を感じてもらえるような本がおすすめです。絵本であっても、低学年ではまだ理解できなかった内容が、高学年になったからこそわかるものもあります。

■読み聞かせ時の注意点

1.感想・感情を押しつけない

家で小さい子どもに読み聞かせをしたとき、最後に「○○で良かったね」とか「可哀想だったね」と言って感情を引き出そうとしたことはありませんか。

小学校での読み聞かせをするときには、大人が感想や感情を述べるのは避けましょう。どう思ったかを、子どもひとりひとりに委ねるためです。

もし子どもたちの方から「○○が可哀想だった」「○○が綺麗だった」といった感想があがれば、もう一度そのページを開いて見せて、他の子はどう思ったのか、聞いてみるとよいでしょう。

2.裏表紙まで見せる

読み聞かせの最初は、表紙を見せながらタイトルを読むのが一般的です。では読み終わりはどうでしょうか?

最後に裏表紙まで見せることで、明確な「終わり」を子どもに伝えられます。

絵本は表紙と裏表紙の絵が繋がっていることもありますので、その場合は最後にあえて本を開き、表紙と背表紙を一緒に見せてあげるとよいでしょう。

3.時間配分

小学校での読み聞かせには時間制限があります。授業に響かないよう、なんとか時間内に収めようと早口になることもあれば、時間が余り過ぎて間延びしないよう気を遣うことも。

低学年用の絵本など、読む箇所が少なくて時間が余ったときには、読み終わったあと、他の本の紹介をしてみましょう。これを「ブックトーク」といいます。

『11ぴきのねこ』を読んだのであれば、同じシリーズを紹介したり、「猫」繋がりで『100万回生きたねこ』を紹介したり、といった具合。

著者が同じ本の紹介でもよいですね。『ひろしまのピカ』の著者・あまんきみこさんでしたら『ちいちゃんのかげおくり』も書かれています。

逆に時間が足りない場合。高学年向けに用意した文字数の多い本などで、明らかに1回では読み切れないとき、でもぜひ読み聞かせしたい場合は、2回に分けるという手もあります。

さらに奥の手として「続きが気になる人は自分で探して読んでみてね」と自主性を促すものも。低学年や中学年に使うのは難しいですが、高学年であれば効果的かもしれません。

ただし、年に1~2回程度にとどめるのが無難。また学校の図書室で借りられる本に限ります。

■悩み相談

子どもたちはどう思ってるんだろう?

1.後ろの席からは見づらい

幼児用に擬音語・擬態語が多いものは絵が非常に重要ですが、小学生向けに読むのであれば、文を読むだけでも伝わるものを選びます。

また、色がはっきりしたものを選ぶと、遠くからでも見やすいので、そこも意識してみてください。

2.他のクラスが盛り上がっていると気になる

教室での読み聞かせは各クラス同じ時間に行っていますので、隣が気になるのは仕方のないところ。

しかし、シーンとしているからといって、それがイコールつまらないのかと言えば、必ずしもそうではありません。絵に見入って、お話に聞き入っているからこそ、静かなこともあるのです。

ページをめくる前に読むことを数秒休止し、子供たちの方を向いて反応を見てから再開すると、ちゃんと聞いていてくれることを実感しながら読み進められます。

3.高学年には絵本より活字を読んでほしい

どういった本を読みたいか、面白いと思うかは、年齢よりも個人の好みが大きいです。無理に活字を読ませようとして、かえって嫌いになってしまっては本末転倒。

同じ絵本でも、大人になってから読んでみると違った見方ができるのと同様、小さい頃と高学年とでは、また違った感想を持つかもしれません。

子どもは、大人が考えている以上にいろいろなことを、いろいろなところから学んでいます。まだ小学生。自主性を尊重し、見守ってあげたいですね。

好きな本をいっぱい読んで!

■まとめ

本をたくさん読むことは、勉強の上でも子ども自身の世界を広げる上でも、大切なのは間違いないでしょう。ただ、ご自身が子どもの頃を思い出していただくと、気が進まないことを無理にさせられるのは、やはり苦痛だったのではありませんか。

本を読むのは苦痛でも、お話を聞くのが好きな子はたくさんいます。「読み聞かせ」は、自主的に本を読まない子でも「お話を聞く」ことで本に触れられるよい機会。強制ではなく、自主的に本に手を伸ばすきっかけになってくれたら嬉しいですね。

最後に、ボランティアの方々が実際に読み聞かせをして「意外に好評だったおすすめ本」を2冊ご紹介します。

全学年向け:『すごいね!みんなの通学路』
高学年向け:『オツな日本語』

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