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省略しきれない自我「広島生まれ」

日常会話で「出身はどこ?」
と聞かれますよね。岡山だよ〜と私は即座に言います。
しかしいついかなる時も違和感を覚えていました。
なぜなら正確に言うと、広島生まれなのです。誰も求めていないしめんどくさいからほとんど省略していますが。もっと言うと広島県福山市に7歳までいました。広島の東の端の、岡山の県境のそばではあるものの、まぁまぁ自我の目覚めがある時期までいた。
実家が岡山に越してきたから、以降岡山出身と言っています。

さてみなさま広島弁、分かりますか。
広島県出身のperfumeが「そうじゃ〜」とか喋ってる、アレです。
では広島弁と岡山弁の違い、分かりますか?分かりませんよね。私も説明できるほどには分かりません。

今を持ってみればその2県のローカルな差異などどうでもいい。
でも小学2年生で岡山に転校した時、クラスメイトたちに、「私の話し方が、なんか変じゃ」と言われたことがあります。

「じゃが〜じゃが〜っていいすぎじゃ〜」
(「〜だから」「〜だから」と言いすぎだ)
って。

文字で起こすと間抜けっぽい。
でも子どもは小さな差に敏感です。
人見知りの私は、新しい土地に馴染むのも必死。
だから当時はそうか、私の話し方は変なのか。では岡山に馴染むために変えなければ、とたぶん素直に思ったのです。広島生まれの広島弁を、宇宙視点から見れば1mmたりとも変わりはしない岡山弁に、どこか微調整していました。
岡山を出てからは、出身を聞かれても、岡山だという以上はさして話題にしませんでした。
言うなれば、広島を捨てた女。

そんなことを思い出したのは、この間30年ぶりくらいに、広島県の象徴・宮島にいったからです。
子供のころ幼い兄弟とともに大量の鹿に囲まれて怖い思いをしました。近年は鹿害により餌やりは禁止され、パラパラとしか見かけませんでした。
宮島のあの有名な鳥居は、塗り替えられてから随分年月が経ち、正直色褪せて見えました。
(来年の2019年からしばらく塗り替え作業に入るそうです)
それらを見て、私の胸をよぎったのは、鄙びた観光地に感じる侘しさではなく、
かつての姿と異なる故郷を知ったような、切なさでした。

小学校1年生の時、全校で平和記念公園に捧げる折り鶴を折った。
だから原爆の日は、広島の人と同じくらい厳粛な気持ちになる。
もみじ饅頭で一番好きな味は、
子供の頃からにしき堂のチーズもみじ饅頭だ。
ソースといえばおたふくソースだし、
世界で一番美味しいザッハトルテは、
バッケンモーツァルトだ。
家で作るお好み焼きはいつも広島風。
今なお焼き牡蠣は冬の定番メニューです。
食べ物ばっかだな。

家族と違い、私自身はカープファンじゃない。でもマツダスタジアムに行ってみたいし、
一番好きな野球選手は菊池涼介です。
perfumeののっちが福山市出身だという情報も
なんだかニコニコしてしまう。

省略しきれない自我がふつふつ湧いてくるのを見つけ、なんとなく嬉しくなりました。
君はやはり、私の故郷だ、広島よ。
これからも、岡山出身と言い続けるけども。


#エッセイ #広島 #岡山 #カープ #perfume #故郷

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