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前後際断と夏目漱石

禅の言葉で「前後際断」があります。

前際とは「過去」のことで、後際は「未来」の意味です。

安土桃山時代から江戸時代前期にかけての臨済宗の僧であった沢庵禅師は

木が炭になり、灰に変わることをそれぞれの役割を説き、

三者三様で異なる持ち味を持っていることを説明します。

木は「過去」、炭は「今」、灰は「未来」を例えているのです。

人間も、前際、今、後際という過去、いま、未来の時間軸を生きています。

しかし、それぞれで、自分自身はまったく同じではないのです。

わずかな時間の経過で人は変化します。

だからこそ、今に集中してこの瞬間を生きていくのが大事です。

文豪・夏目漱石もイギリス留学中の模様を書いた、「倫敦消息」(ロンドン留学中の漱石が友人の正岡子規と高浜虚子に宛てた手紙)の中に

「前後を切断せよ、 みだりに過去に執着するなかれ、
  いたずらに将来に望を属するなかれ、 満身の力をこめて現在に働け」

と書き綴ってます。「前後を切断する」とは、まさに禅の言葉の「前後際断」のことです。

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