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『ガーディアンズ3』はリベラルが見た夢

泣きました。
レディオヘッドの『Creep』が流れたOPから泣きました(笑)
もちろんビースティ流れるクライマックスに、
スプリングスティーンのEDまでずっと泣いてました(笑)

「アクションが最高!音楽が最高!
シン・オタクの神様ジェームズ・ガン最高!」
なのですが…

個人的なツボで本作が最高だと思う理由は別にある。

僕は、好みというか、性癖というか、琴線というか、
とにかく「ポンコツ疑似家族」に弱い。

何か欠落を抱え、欠落の穴を塞ぐパーツを探している人たちが、
落ちこぼれだろうとポンコツだろうと家族みたいに集まって、
お互いの足りない部分を支え合って生きていく。

もうその姿だけで尊くて、泣く。
特に多人種の国、アメリカ映画が得意分野だと思う。

ということで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』である。
ポンコツ疑似家族映画の近年最高峰と言っていい。

彼らがアヴェンジャーズと違うのは、アヴェンジャーズが「一人一人が個として強いし、本人もそう思っているし、実際個人プレイで充分に強い」のに対して、ガーディアンズは「一人一人が個として弱くはないが強くもなく、チームプレイの時ほど個々が輝くし、チームだったら最強」という点じゃないかなと思う。

つまり、個々の弱さを自分たちでわかっていて、生きていくために仲間を必要とし、それぞれが自由でありながら集団生活を通して情が生まれ、ただの仕事仲間じゃないつながりになっている疑似家族。それがガーディアンズなのかなと。

比べるならアヴェンジャーズや日本の戦隊ヒーローモノは、どちらかと言えば軍隊的、学校的、会社的なつながりって感じで、映画を見る上ではなんとなく不自由に感じる部分がある。

チームだけど、軍隊じゃない。命令系統が上から下じゃない。同じ目的に義務感を持ってない。だけど情はある。
ガーディアンズの基本姿勢は自由なのであり、お互いの自由を束縛しようとも思っていない。

そう。ダメ人間だろうがマイノリティだろうが人外だろうが、
「ありのまま」を受け入れてくれる、それがポンコツ疑似家族。
ガーディアンズが他のヒーロー映画と違って僕に多幸感を与えてくれる秘密はこの点にもあると思う。

あと、本作はあまりにも自然な形でポリコレの理想を描いてると思った。性別、人種、どころか獣種、思想信条をお互い尊重し合った集団。めちゃくちゃポリコレやん!って思うけど、この点で「ポリコレ嫌いの人々」から批判が出てない理由は、上から押し付けられた感じじゃなく、自由に自然に情で一緒にいるからかなと思う。

脱線するけど、ひょっとしたらポリコレに反発してる層って「差別はOK」と思ってる人は少なくて、「上から押し付けられた感じ」に反発してるだけの人も多いのかもね。ほんと脱線した。戻ろう。


アメリカ映画のリベラルな理想の一つとして、
いろんな人種が支え合って暮らす疑似家族の姿があると思う。
(これの反対が、単一家族を守る保守的な理想)
これが声高メッセージじゃなくて、自然な形で物語に溶け込んでいればいるほど、実は大衆に浸透するんじゃないかなぁ。

数多のヒーロー映画の中で、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』に特段の多幸感が押し寄せてくる秘密は、実は「だれもがありのままに平等」「昨日の敵でもやりなおせる」というリベラルな理想、リベラルの夢が、上から命令の軍隊的じゃなく、支え合って情で結ばれたポンコツ疑似家族的な「優しい世界」として実現してる姿に感動したんちゃうかな〜って思いました。
それが音楽とダンスと共に描かれると泣くわ、そりゃ!


以下はおすすめポンコツ疑似家族映画。

ウェス・アンダーソンの『ライフ・アクアティック』
「自分のことを忘れていない人(や魚や犬)たちがいる」「助けてくれる人たちがいる」ってだけで、中年の危機から我々は脱出できるのだ。

大人こどもの映画監督が疑似家族と共に家族を取り戻そうとする冒険譚。

あと、家族に家族以外の大勢が混じってるポンコツ大家族もいい。
トニー・リチャードソンはイギリスの監督だが、アメリカの作家ジョン・アーヴィング原作の『ホテル・ニューハンプシャー』とか凄くいい。そういや家族にクマもいた。

ジョディ・フォスターにナターシャ・キンスキーと俳優も豪華。
大家族にクマがいるのもいい。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3』のウィル・ポールターは、おバカ映画『なんちゃって家族』でも似た性格の役だった(笑)
麻薬運ぶためだけのダメ人間疑似家族がだんだんかけがえのない存在になっていくというエモいコメディ。

アメリカのコメディはポンコツ疑似家族を描くのが上手い作品が多いよね。
金ピカおバカ野郎、最高


あと、官僚だからって理由で誤解してる人もいるけど、『シン・ゴジラ』の「巨災対」って国の組織の中の変わり者の寄せ集めって設定で、軍隊や官僚っぽくない「人間として対等」で描かれてて、まさにポンコツ疑似家族なんすよ。一緒に寝泊まりする描写があるし、情で繋がっていく感じも。大好き。

あと京都で歴史にまつわる映画祭の関係者としても
忘れちゃいけないのが1950年代東宝版の『次郎長三国志』。
『ワンピース』の尾田栄一郎氏も、似顔絵をDVDジャケットに描くくらいファンということで、ガーディアンズの自由さとおおらかさはこの映画にもある。


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