【展覧会紹介】アートとサイエンスから「わかりあえなさ」をわかりあおう
六本木の東京ミッドタウンの一角にある、21_21 DESIGH SIGHTにて《トランスレーションズ展》が開催中です。本展のタイトルになっている”翻訳”という言葉は、他言語同士の意思疎通を図る為に、お互いの言語を介しコミュニケーションを取る手段として認識されていますよね。しかし、本展では単に言語の翻訳だけでなく、言語で翻訳できない感覚の共有や身体感覚を他の感覚で翻訳したり、人間以外の生物と意思疎通を図るための取り組みを通して、”わかりあうこと”を前提とし、作られた数々のテクノロジーやアートを見る事ができます。
そんな”わかりあうこと”を目指した先に見えた、”わかりあえなさ”が多様性のある未来において大切であると実感できる展示になっていました。そんな素敵な会場の様子と作品を紹介すると共に、世の中で開発されている”翻訳”テクノロジーもお見せします。記事を読んだ後、”わかりあえなさ”がわかりあう心持ちになって頂けたら幸いです。
【言語の翻訳も完璧ではない】
仕事や趣味を突き詰めていくと、日本語では資料が足りず他言語に接続する事ありますよね。そんな時に便利なのがGoogle翻訳です。ワンタップで英語が日本語で表示され、上出来な翻訳ではないにしろ理解できるレベルにまで進化しています。そのGoogle翻訳を複数言語で一気見出来るのがこの《ファウンド・イン・トランスレーション》です。マイクに言葉を発すると、下記画像のように翻訳され表示されるのです。
《ファウンド・イン・トランスレーション》
しかし、この翻訳は必ずしも正しいとは限らず、ニュアンスが微妙に異なったり、真逆の意味で表示されることもあります。これはGoogle翻訳も同様で、翻訳する際ビックデータ上で”最適である”と認識された解を表示しているだけなのです。その為、文章や会話の前後で変化する意味を捉えられなかったり、意味が複数あり変化している物に対応できなかったりするのです。まだまだ人の感覚を翻訳し切るまでテクノロジーは出来上がっていないのですね。
《ポジティブ辞書編集》では、世界中から感情にまつわる翻訳不可能な言葉を集め、邦訳し表示しています。他言語の感情を日本語では一つの形容詞で表しきれない言葉が膨大にあるのです。そんな翻訳できない言葉を直訳したときに生じる不可思議さ、認識のズレを味わえます。これは言語がもたらす身体感覚のズレを考えさせられました。例えば、日本語圏は虹を7色だと捉え、そのように見えてますが、他言語で5色しか虹を捉えられない民族もいるのです。彼らは7色で認識できず、5色で表現します。このように、言語が表現できる領域でのみ、ヒトが認識出来る範囲が決まっていると理解できます。つまり、他言語間においてわかりあえない感覚があると分かります。
《ポジティブ辞書編集》
【次回は身体感覚をまたぐ】
いかがでしたでしょうか。今回は言語の翻訳を軸にトランスレーションズ展を紹介しました。思いの外、長くなってしまいそうなので、続きは次回に致します。次は、身体感覚における翻訳を見ていきます。耳で聴くのではなく、骨で聴く。口で話すのではなく、目で話すといった身体感覚を跨ぎます。
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