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【展覧会紹介】アートとサイエンスから「わかりあえなさ」をわかりあおう part.2

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 六本木の東京ミッドタウンの一角にある、21_21 DESIGH SIGHTにて《トランスレーションズ展》が開催中です。本展のタイトルになっている”翻訳”という言葉は、他言語同士の意思疎通を図る為に、お互いの言語を介しコミュニケーションを取る手段として認識されていますよね。しかし、本展では単に言語の翻訳だけでなく、言語で翻訳できない感覚の共有や身体感覚を他の感覚で翻訳したり、人間以外の生物と意思疎通を図るための取り組みを通して、”わかりあうこと”を前提とし、作られた数々のテクノロジーやアートを見る事ができます。

 そんな”わかりあうこと”を目指した先に見えた、”わかりあえなさ”が多様性のある未来において大切であると実感できる展示になっていました。そんな素敵な会場の様子と作品を紹介すると共に、世の中で開発されている”翻訳”テクノロジーもお見せします。記事を読んだ後、”わかりあえなさ”がわかりあう心持ちになって頂けたら幸いです。

 前回は”言語の翻訳”に焦点を当てて本展を紹介しました。今回は、”身体感覚の翻訳”を軸に展示の魅力をお伝えします。

【スポーツの本質とは】

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 《見えないスポーツ図鑑》は目の見えない人と一緒にスポーツ観戦する方法を開発してきたプロジェクトです。その中で生み出されたのが、スポーツ各種目の本質を、スリッパや手ぬぐいのような身近な日用品を使って再現する取り組みです。種目の言語や視覚に頼らず、力のせめぎあいやリズムといった身体的に感得しうる方法でそれを表現したのです。具体的にどのような表現になったか見ていきます。

【プロは何を考えて動いている?】

 フェンシングは剣を相手の体に当てるスポーツです。動いて、避けて、当てるという動作を繰り返しているわけですが、このスポーツの本質は”せめぎ合い”なのです。相手の型を知り、そこから繰り出される技を読み、裏をかき攻撃する。そのせめぎ合いこそが、この競技の見えない本質です。

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 その本質を抜き出しフェンシング未経験者にも、体験していただく為に編み出されたのが”知恵の輪バトル”です。それぞれが攻撃、防御に分かれ、アルファベットの形をした木片を持ち、目をつぶります。そして攻撃側は時間内に絡み合った木片を取ることができたら勝ち、防御側は取られなかったら勝ちです。本展示では実際の知恵の輪バトルに至る思考の過程を分かりやすく動画にされ、かつバトルの様子を見ることができます。

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 《見えないスポーツ図鑑》でわかったのは、プロスポーツ選手が実際に競技に向き合っている際に見て考えている事は、観戦者には伝わらないという点です。彼らの身体能力や華やかさに目を奪われがちですが、その競技にある本質(フェンシングで言えばせめぎ合い)に注目すると、スポーツがより楽しめるかと思います。このプロジェクトを通して、実際に見えている現象の本質に目を向ける姿勢が育まれるのではないでしょうか。これはスポーツ以外でも言い換えられますよね。




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