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コロナ時代の就活、転職。私の入りたい会社は大丈夫?四則演算で求められる安全性分析とJALvsANAの安全性対決。

私が入りたい会社は大丈夫?

新型コロナウイルスの影響で、様々な会社に影響が出ています。就活や転職を控えている人にとってこの時期、まず気になることは、自分の入ろうとしている会社がすぐには潰れないの?、体力があるの?ってことだと思います。今回は、このコロナ時代に転職する人や就職活動をする人に役立ちそうで、簡単に計算できる会社の安全性の計算方法をご紹介します。

財務諸表から導く安全性

伊藤邦雄(2007)によりますと、会社の安全性を財務諸表から読み解く指標は、主に10個あります。その中で、今回は年度末決算だけを使って簡単に求められる指標をピックアップして紹介します。もっと詳しく知りたい方は、前述の伊藤(2007)はじめとするファンダメンタルス分析関連の文献を当たって見てください。

多くの指標が存在するものの、共通する安全性のポイントは、「その企業が支払いをする能力がどれだけあるのか?」ということであります。今回紹介する指標も当然その視点に立ちます。

では、早速、短期の安全性(通常一年以内)、長期の安全性(通常1年以上)を測るための指標を2つずつ紹介し、最後にそれをケーススタディという形で、「JALvsANA」今、安全なのはどっちというのを両者の決算書に基づいて、導き出したいと思います。

短期の安全性

当座比率:(当座資産 ➗ 流動負債*100(%))

まずは、当座比率です。当座資産とは、流動資産のうち、現金・預金、受取手形、未収入金、有価証券などといったすぐに現金化できる資産です。

当座資産は貸借対照表の流動資産の項目の合計から棚卸資産、その他などと行った項目を引けば出てきます。そうして出てきた当座資産を1年以内に償還が必要な流動負債という項目の合計で割って100(%)掛けしたものが当座比率です。これは、企業が手元のお金で、短期的な支払いをどのくらいできるのかといったことを表します。この指標は通常100%を超えていれば、安全であると言われていいます。

ICR(営業キャッシュフロー/ 支払い利息(倍))

当座資産を測ったとしても、手元にある現金があるとは限りません。なぜならば、かけ払いや手形払いなどは、資産換算されるものの、現金として支払いに用いることはできないからです。そこで、当期に生み出された現金及びその同等物の合計である営業キャッシュフローの値を、支払い利息で割ったのがICR(インスタント・カバレッジ・レシオ)という値になります。これは、必要な支払いである利息の何倍の現金をその会社が稼いでいるかということを表す指標であります。

ICRはキャッシュフロー計算書の、営業キャッシュフローという項目を、損益計算書の支払利息という項目で割ることで簡単に求められます。通常は、10倍暗いであります。

長期の安全性

自己資本比率(純資産/負債・資産合計*100(%))

一度は聞いたことあるでしょう自己資本比率です。実は、これ会社の長期的な安全性を表す値なんです。自己資本比率はどのくらい自前で資金調達をしているかということを表していて、この値が多ければ、当然借金が払えなくて潰れたりする確率は少なくなるわけです。

財務諸表から通常上のような式で求めることが可能ですが、大切な指標なので財務諸表のはじめのように自己資本比率という値が掲載されていることが多いです。

固定比率(固定資産/純資産*100(%))


次に固定比率です。これは、自前の資産である純資産でどれだけ、長期的な投資をまかなえているかということを表します。もし、投資を負債で行っていた場合、安全性の面では自前で行うよりも低いでしょう。

この値は、財務諸表の固定資産の合計額から純資産という項目の合計を割ったものに100(%)掛けをすることで求められ、通常少ないほうがいいと言われています。

ケーススタディ(JALとANA安全なのはどっち?)

では、実際に上に用いた指標を行い、軽くケーススタディをしましょう。今回は、コロナで打撃を受けており、かつ人気の就職先でもあるJALとANAの安全性を比較します。まず、企業を比較する時のポイントは、会計基準は同じか?、規模は同じくらいか?、業界は同じか?というものです。JALとANAは幸い全ての条件を満たしていますから、格好のケースでしょう。

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今回は、両社のホームページで公開されている2020年3月期決算短信を元に、私が計算しました。

結果から言いますと、4つの安全性を見るかぎり、全ての指標でJALがANAよりも安全であるとの結果が示されており、やはり1部メディアなどで言われていた『ANAがやばい』論は本当であったようです。安全性を重視にして、JAL、ANAどちらに入るかを選ぶとすれば財務諸表をみる限りはJALに入ったほうが合理的な判断であると言えるでしょう。

こんな感じで比べてみると、入りたい会社が競合他社に比べてどれだけ安全かなんてことを簡単に測ることができます。また、今まで目に止まらなかったけど意外と安全な企業を見つけたり、表面上は安全に見えるけど実は危ない企業を見つけたりもできます。面白いですね。

まとめと安全性分析の限界

今回は、企業の安全性が気になるこの時代、企業の安全性分析についてまとめてみました。当座比率、ICR、自己資本比率、固定比率といった指標は四則演算で求められ、そして財務諸表という公開されている情報を使うため、手軽にしかも、客観的に出すことができます。

ただ、この値は、そもそも財務諸表を公開している上場企業でないと使うことが難しいという点と、どこからどのように資金を調達しているのかという資金の性質、数値に現れない経営者の手腕や組織のマネージメント体制といった数値では完全に測れない要素があるという限界が存在します。

それを踏まえた上で、使える時は使っていただけると幸いです。厳しい時期ですが、お互いに頑張りましょう‼︎

それでは。

【参考文献】

伊藤邦雄(2007)『企業評価』有斐閣、pp113-149.

JALとANAの決算書については、両社のホームページにある、2020年度3月期決算短信を活用(5月18日アクセス)

JAL「https://www.jal.com/ja/investor/library/」ANA「https://www.ana.co.jp/group/investors/irdata/」

ANAヤバイ論に関する例として、キャッシュ大流出。航空業界は生き残れるのか?【NewsPicksコラボ】「https://www.youtube.com/watch?v=pzbVnAXWqf0」を参照。


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