ふらっと沖縄⑦〈国際通り〉
沖縄へ行ったおかげで、大好きな夏に「ありがとう」と「またね」がきちんと言えた。心ゆくまで言えた。正しい手順で遠ざかった季節に思いを馳せつつ、冬を迎える支度を整える日々。
塩川から名護、名護から空港と、バスを2台乗り継いだ。そこそこ運転の荒い運転手さんにあたり、乗り換えでやれやれと思ったのも束の間、2台めは1台めを凌ぐほどなかなかに運転の荒い運転手さんだった。空港に荷物を預けてから、斎場御嶽へ向かおうと思っていたのだけれど、もうバス乗るの疲れたし、雨もやみそうにないし、モノレールに乗ってみよう、ちょっと観光地っぽいところに行ってみよう、と方向転換。時間はたっぷりあるし、国際通りでなにかアクセサリーを買おう、と考えるうち、鼻歌スキップをしたい気分になってきた。
お天気は晴れたり降ったり。
国際通りから、やちむん(焼き物)通り。焼き物を眺めつつ進むと、レトロな商店街界隈に出た。アーケードに入った途端、雷鳴とたたきつけるような雨音が聞こえ、ちょっとだけ雨宿りの気分で、その薄暗い商店街を進んだ。いかにもなお土産屋さんが連なり、ごちゃごちゃとカラフルな街並み。アジア系の団体客と大勢すれ違う。
様々なお店で、アクセサリーやコスメなどを見て歩いていくうちに、なんとなく、元気を吸い取られるような、冴えない気分になってきた。商店街の先は別の商店街につながっており、どこまでも終わりがなく思え、出ようにも方向がわからない。なにかが合わない。雨は止まず、現在地を知りたいのに電波が入らない。休息を求めて目に付いたカフェに入ったら、ものすごく微妙なアイスコーヒーを出され暗澹たる気分に。5分で退店。
どうにかして気持ちを立て直したいと思っていたところ、建物と建物の隙間で営業する、自家焙煎の珈琲店を発見し、口直しに温かいエスプレッソを注文。お店のおじさんが「本当に苦いよ」と言うので、苦み好きではあるけれど、ミルクを少しだけ入れてもらう。
奇跡のような美味しさ。
しぼんだ心が一気に息を吹き返した。
さくっと飲み干し、おじさんにお礼を言って店を出た。電波も入ったので、Google Mapのナビで国際通りへ引き返した。屋根の外に出ただけで呼吸がスムーズ。
天気雨のなか、国際通りを進み、お土産集めの仕上げにかかる。
自分用に、焼き物の小皿と、ホタルガラスのピアス。シルバーリング2本。リングには「ナンクルナイサ」と「ウートートー(手を合わせてお祈りをする)」と彫ってある。旅先ではたいがいアクセサリーを買う。
気になるお店を軒並み冷やかし、てろてろと歩き回る。
空が青い。歩道のソテツやヤシの木。
蒸し暑い風。夏が終わる。旅が終わる。
さみしいけれど、帰らなくては。
短いあいだの時間だったけれど、きれいな景色を見せてくれて、好きなように遊ばせてくれて、和ませてくれて、ありがとう。
溢れてやまないこの感謝は、誰に伝えたらいいのだろう。
大きな虹。見送ってくれているみたい。
またくるね。