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『愛にできることはまだあるかい?』問いに統計的に答えた研究:僕にできることはまだあるかい?

愛とは何か

『愛』とは、古代から重要なテーマで、例えば仏教などでは、ものに対する『愛』を人間が苦しむ原因の一つとしていますし、キリスト教などでは、相手に愛を与えることを推奨しています。

しかし、愛というのはどうも曖昧な概念で、人を想う気持ちや、愛しく思う気持ちなど辞書を引いてもそれくらいの曖昧なものしか出てきません(1)。ただそうと言えど、私たちが確かに日常生活において漠然と『愛』を感じているのも事実ではないでしょうか。例えば、親が何かをしてくれた時『親の愛を感じる』など。

そこで今日は、そういった『愛』について、少し変わった角度からアプローチした研究(2)を紹介します。詩や物語、哲学ではなく、統計学によって『愛』にアプローチした研究です。

人が愛を感じる確率の高い場面

『人は一体どんな場面で愛を感じるのか?』、それを解き明かしたのが今回紹介する研究です。

この研究において、研究者たちは、社会学においてよく用いられるCCT(Cultural consensus theory)を用いています。これは、その集団において合意される考え方や概念を見出そうという手法です。例えば、『社会人とは何か?』という設問に対して多くの人が、『社会人とは所得があり、自分で生計を立てることができる人である』と答えればそれを合意とみなし、『社会人』の定義が『所得があり、自分で生計を立てることができる人である』となるような手法です。

研究者たちは、このCCTの考え方を『人はどのような時に愛を感じるのか?』というものに適応しました。

具体的にどういう手法をとったかというと、アメリカにおいて18歳以上の様々な年齢、性別、人種の人々495人を集め、先行研究で人が愛を感じる可能性のある、60のシナリオを見てもらいました(この研究では、愛の幅が広くとられ、自然に触れた時や、ペットがすり寄ってきた時など)、その後それぞれのシナリオについて愛を感じるか感じないかを直感で判断してもらいました。

それで、ここからがこの研究のポイントで、そのデータについてただ集計をとるだけでなく、被験者の人種などの情報、ビッグファイブの性格特性の情報などによる合意のしやすさを加味した上で、最終的にその設問に対して人々が愛を感じたと合意を取れているシナリオを割り出ししました。つまり、普通の集計データでは、特定の項目に対してこの性別、人種、性格特性が反応しやすいなどの点が加味されないため、バイアスがかかりますが、この研究はそれを補正した上で集計を行い、愛を感じるシナリオを導き出したということです。

以下、本研究で見出された人が愛を感じる確率の高い場面を紹介します。

愛を感じる確率が高い場面

・誰かが辛い時に助けてくれた、思いやりを持って接してくれた(愛を感じる確率:98%)
・子供がすり寄ってきた(愛を感じる確率:97%)
・ペットがなついた(愛を感じる確率:96%)
・『愛している』、『好き』と言われた(愛を感じる確率:95%)
・自然との一体感を感じた(愛を感じる確率:59%)
・インターネットで誰かに褒められた(愛を感じる確率:50%)
・見知らぬ人から褒められた(愛を感じる確率:43%)
・太陽が照っている(愛を感じる確率:43%)

これを見ると確かに、辛い時に助けてくれるって本当に自分のこと思ってくれているんだなあと暖かくなる気持ちがあるなあと経験的にも納得です。、意外と恋愛関係のことじゃなくても良いのだなあとも思います。自然に触れたりするのも愛を感じる手立てです。

ちなみに、この研究では、『いつも一緒にいたいと言われる。』、『居場所を聞かれる』、『行動を監視される』などのいわゆる束縛行為については、愛を感じるという合意が得られなかったようです。束縛行為はする当人は愛とは言えど、一方通行なのが辛いところというのは、実証的にも確認されてしまったんですね....

愛にできることはまだあるかい?、僕にできることはまだあるかい?

以上、愛とは何かについて研究を紹介してみましたが、人が愛を最も感じるのは、『辛い時誰かが助けてくれた、励ましてくれた時』だそうです。アメリカのサンプルなので、この研究だけではまだなんとも言えませんが、この結論だけ見ると、愛にできることはまだあって、僕にできることは身の回りの人が辛い時にその人を助けることみたいですね。

【脚注、参考文献】

※タイトルはこの歌の歌詞から拝借


(1)「愛の意味」(https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%84%9B_%28%E3%81%82%E3%81%84%29/)

(2)Saeideh Heshmati, et al.2019"What does it mean to feel loved: Cultural consensus and individual differences in felt love".Journal of Social and Personal Relationships 2019, Vol. 36(1) 214–243.

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