孤独の克服 〜ビバニッポン編〜
花火
少年時代、手持ち花火で遊ぶ際、興奮しすぎて髪の毛が火事になった男子は私だけではないはず。
流石に大人になってからはそんなことはしないが、花火の季節はなんとなく浮かれる。
以前の職場では土曜日が私の公休日だった。
街の花火大会は、毎年決まって土曜日で、特に一緒に行く相手もなく自宅でテレビを見ながら過ごしていた。
ただコレが、精神衛生上良くなかった。
ドーーン!!!(割と会場から近い)
窓チラッ
シーーン
ドーーーン!!
窓チラッ
シーーーン
(ラストスパート)
ドン、ドドンドンドドンドンドーーーーーン!!!
窓チラーーー。
「えぇぇ!もう終わり⁉」(ちょっと嬉しい)
みたいな1日の過ごし方だった。
余計な寂しさを煽る行為であった。
私はまだ青く、一人カメラを持って会場に出かけるくらいの根性をこの時は未だ持ち合わせていなかったのだ。
しかしそれが、今の職場では土曜日は出勤、そしてなんと大会が行われている夜間にも仕事をしている。
会場に行くつもりも、遠くの展望台から眺めるつもりも最早ないがこれは完璧だった。
「この日は仕事!!」
どんなに大きく魅力的な花火大会のポスターを見ても、歩道橋の横断幕に、当日の交通規制の案内を書かれていてもそう言える!
「この日は仕事なんだ!!」
働くことは素晴らしい。この国では、仕事の優先度は何よりも高い。
親戚が亡くなった日に、葬儀に行くからと上司に休みを申請したら「早く言ってよぉ!」と言われる国である。
以降、親戚には早めに言うように伝えている。
そしてどんな行事も、嫌なお誘いも「ゴメン、その日仕事なんだよね」で片付く。しかも美しく!
花火大会は、行かないんじゃない行けないんだ!
ありがとう労働。そしてニッポン。
と思っていたところにやってきたコロナと恋人。
今あの大きなポスターや横断幕を見たらどんな気持になるだろう。
二年程、鳴りを潜めている街の大イベントも私の変化を知る由もなく。
隠れんぼをしている子供のように「もういいよー」と言いたくなる。
あれ、でも待てよ。
この日は仕事!!
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