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《鎌倉 萬屋本店の立ち上げ秘話》創業200年の酒問屋が「レストラン・祝いの場」へ生まれ変わるまで

こんにちは。
株式会社Daiyuの人事採用担当 山中です。
本日は自社会場「萬屋本店- KAMAKURA HASE est1806 -」がオープンにいたるまでのストーリーをお届けします。

わたしたちにとって今ここで事業ができるのは、決して当たり前のことではなく、奇跡でした。
たくさんの方に感謝の気持ちを込め、ここに綴らせていただきます。

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老舗酒問屋「萬屋本店」とは?

萬屋本店は文化三年、長谷寺の門前町で日用品を扱う商店として創業。
明治・大正に入り、鎌倉が文豪家や文化人が訪れる避寒地として栄えるようになると、お酒を取り扱う酒卸問屋へと発展しました。
当時「日本一美味い酒」と称された銘酒『白雪』を関東でいち早く取り扱うと、白雪が鎌倉に広がり、酒を酌み交わしては語る大人の社交場の地位を高めていきます。
200年もの間、鎌倉の繁栄を下支えした、地元の有力者では知らない人はいない名商家でした。

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そんな酒問屋が幕を閉じることになったのは2006年のこと。
当主の石渡さんはその当時、鎌倉市市長を務めていらっしゃり、自身の商売の発展より「もっと街自体を良くしていかなければいけない」という思いで、子供の少ない鎌倉市の出生率の向上や、世界遺産登録へ向けた働きかけなどを行い、私財を投じてまで街に尽力されていました。

石渡さんは店を畳んだ後、その後の店の在り方を悩まれており、そんな時に出会ったのが、Daiyuの代表・宮腰でした。

もてなしの精神を受け継ぐ

Daiyuはもともと自社会場を持たない「ウェディングプロデュース」集団。
鎌倉でもプロデュース事業を行っており、事務所としての物件を探していた時に、ご紹介いただき、萬屋本店を見に行くこととなりました。

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《当時、石渡さんのお住まいだった萬屋本店》
初めて萬屋本店の中を見せていただいた時のことを、後に宮腰は「光が見えた。人生そうない一目惚れだった」と言っています。

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2尺幅の梁を有する門構え、客人をもてなしてきた小上がり、長らく商売を支えた金庫や神棚。
歴代のダルマや当時使われていた秤や徳利までもが大切に保管されていました。

また「中へどうぞ」と石渡さん自らが案内をしてくれ、座布団を用意し、お茶を出し、「来てくれた礼」を示す姿に、鎌倉ならではの独自の文化「もてなしの精神」を感じとったのです。

この時、様々な企業から「この土地で事業をしたいから譲ってほしい」というオファーが来ていることも伺いました。
その中には、建物を壊し、マンションや新しいビルを建てるという案もあると聞き、宮腰は「なんとかしてこの建物を残したい」という使命感に近いものを感じます。

そして、「萬屋本店」という屋号を残すこと、この建物の価値をそのまま活かしてリノベーションしたいということを伝え、「この建物全てを受け継ぐ」ことを申し出ました。

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石渡さんは、先代から受け継いできたこの場所・想いを引き継いでいってくれることを宮腰に感じ、全面的に任せるという決断をしてくださいました。
こうして老舗酒問屋が「レストランと祝いの場」へと姿を変えるプロジェクトがスタートしたのです。

立ちはだかる建築基準法と予算の壁

鎌倉は古都と呼ばれながら、歴史的建造物を活用した事業は実はあまり多くありません。
それは現在の建築基準法では、歴史的な価値を維持したまま木造建築を改築することが難しく、活用を断念せざるを得ない場合が多いからです。
築90年を越える萬屋本店のリノベーションも一筋縄ではいきませんでした。

プロジェクトに参加してくれた設計士の稲垣さんは、厳しい建築許可が下りるよう、何度も鎌倉市に掛け合い、全国の事例を調査して解決の糸口を探して奔走してくれました。

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《大正12年に関東大震災が起きた際に一度建て直され、建物の歴史としては90年。》

また金銭面でも頭を抱えていました。
その当時、Daiyuはプロデュースしていた会場2件において、先方の経営判断による契約の終了が決まっており、次年度の見通しが立たないという危機的状況だったのです。
その上、建物のリノベーション工事費には当初宮腰が考えていた予算の4倍かかるということが判明し、無名のベンチャー会社に融資してくれる銀行を探さなければなりませんでした。
そんなとき、私たちが考えていた「挨拶の儀」という両親に感謝を伝える結婚式をやりたいという考えに深く賛同してくれる方と出会い、援助を受けられることになります。
情熱しか持っていなかった、ベンチャー会社の未来を信じてくださった方でした。

また、鎌倉という土地で商いをさせていただくためには、街の方のご支援や信頼を得ることが必要です。
その時、宮腰と一緒に一軒一軒、挨拶周りに同行してくれたのは当主の石渡さんでした。

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こうして、数々の困難のなか、わたしたちの想いに共鳴し、手を差し伸べてくださった方がいてくれたおかげでプロジェクトが進んでいきました。

そして、2015年6月15日、鎌倉市から正式に申請許可をいただくことが叶ったのです。

デザインのコンセプトは「大正ロマン」

建物の工事はまず、木造建築を補強するところから始まりました。
そして、この建物の素晴らしさを残し、それが強調されるようにデザインをひいていきました。

萬屋本店の母屋が建てられたのは大正14年。
そこで当時を再現するように、日本独自の文化と西洋文化が混ざる「大正ロマン」をデザインのテーマにしました。

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《五感をすべて使って、建物の声を感じ取ろうとしている宮腰》

宮腰はデザインの構想を広げるため、お店で取り扱う家具やアイテムをセレクトするため、ロンドン、パリ、上海、京都、金沢、名古屋・・・数えきれないほどの都市を訪れました。

そして、取り扱うもの全てを自分たちでディレクション。
ロンドンへの衣装の買い付け、ヴィンテージ着物の開発、古九谷焼の花器とアレンジメントのスタイリング、オリジナルペーパーアイテムの開発、和フレンチをテーマにした料理開発と、パートナー会社に協力していただき、妥協なく、全て納得したものだけを揃えました。

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お客様に心からおすすめできる全て「本物」にこだわった店づくり。
また、老舗旅館のように一見さんお断りのような圧倒的な外観と、一度中に入ると人情あふれ、人の心を感じられるような奥深さを追求し、スタッフ教育にも力を入れます。

これまでのプロデュースという業態では制限があったことも、自社会場であれば、こだわり尽くせる。
「これだったら必ずお客様に喜んでもらえる!」という夢や希望を詰め込んだ、私たちにとって、まさに「宝箱」となっていきました。

こうして、工事スタートから約1年後、待ちに待った萬屋本店がオープンする日が訪れました。

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お店の心臓部であった酒蔵は、新しい家族が誕生する挙式会場「結乃日」へと生まれ変わりました。

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《before:当時の酒蔵》

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《after:現在の挙式会場「結乃日」》

年間200組様のご結婚式を行う会場へ

この時、Daiyuとしては初の自社会場。
立ち上げノウハウもなく、「本当にお客様が来てくれるだろうか?」という不安がなかったわけではありません。

しかし、ここ「萬屋本店にしかないもの」をオリジナルで追求したからこそ、他の会場とは違った広告写真やinstagramがお客様の目にとまるようになり、「こんな場所、見たことない!」と少しずつ話題になっていきました。

そして、融資してくださった銀行さんへ「年間90組様の結婚式を目標」としていた事業計画を大きく上回り、一軒家貸切で行う結婚式でありながら、オープン4年目には年間200組様の結婚式を行えるようになりました。

会社が経営難に陥っていた時期、オープンが危ぶまれた危機から考えると、信じられないようなことが起こりました。

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歴史を継承すること

萬屋本店のメインコンセプトは「それは、美しいもてなしが許された場所」です。
創業当時から大切にしてきた「もてなしの精神」は変わりません。
こうして、私たちは建物のみならず、ここを守ってきた人の想いや文化を継承していきたいと考えています。

また、先日9月2日、萬屋本店が鎌倉市の都市景観条例により、鎌倉らしい景観に重要な役割を果たしている「景観重要建築物等」に認定されました。

プレスリリースより一部抜粋
「現在はレストラン・ウェディング会場として利用されており、そのファサードには新しい暖簾が掛けられています。いまだ長谷界隈を散策する人々の足を一度は止めさせる力をもっており、この地区の景観形成に大きく寄与しています。」

このようにご評価いただけたことは、大変嬉しい出来事でした。
これからも鎌倉のランドマークとなれるよう、努力を重ねていきたいと思います。

そして、私たちがこの場所でできることは、この場所を「新しい人生の節目」のスタートに選んでくださったご家族に、幸せになっていただけるよう全力でお手伝いをすることです。
新郎新婦様にとって大切なゲストの方をもてなし、ここに訪れる人の心をあたためることができるよう進んでまいります。
こうして、少しでもこの街や世の中へ貢献していくことが、この店の存在意義です。

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