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ベイジング・エイプ②

英語の表現をあえてカタカナで書くのがかっこいいと思っている自分がいる。思えば、安い邦楽のロックバンドがやりがちな手法であることに気づく。単語と単語の間をチョボで繋いでみたりして、なんとなく「それっぽさ」も醸してみる。これもまた、安い邦楽のロックバンドがやりそうな手法であると気づく。じゃあ、と思って「僕たちは猿のように風呂に入る」と思い切ってそのまま和文にしてみたりすると、それはそれで安い邦楽のロックバンドっぽく見えてくる。ほら、「猿のように風呂に入るズ」とか言ってしまえば、そういうネーミングのバンドはすごくその辺にいそうな気がしてくる。私はこの「〜ズ」みたいなネーミングがあまり得意ではない。逆をとってオシャレでしょ?と言われてる気がしてならないのだ。思うに、世の中は安い邦楽のロックバンドの掌で踊らされてるんじゃないかと思う。

というわけで(?)、今回は銭湯で見かけるメンズの生態について解説ベースで紹介していきたいと思う。ムッツリすけべな女性陣は刮目されたい。早速いきましょう。

<一人風呂型>
これはシンプルに一人で風呂に来る人のことを指します。一人で銭湯に来ている男の人はなぜかちょっと筋肉があって、どちらかというと背が低い傾向にあります。もう全く持って謎なのですが、共通してだいたいそんな風貌です。みんなバスケ部かバレー部って感じの見た目です。そしてだいたいみんな遠い目をして内風呂に驚くほど長く浸かるのが特徴。だいたいツーブロックの黒髪である。

<マイルドヤンキー型>
男性が銭湯に来る時はだいたい二人かせいぜい三人で来ています。しかし、時おり四人以上のグループで風呂に入っている男性チームがいます。これもタイプは大別すると二つあって、むちゃくちゃ細い地元のヤンキーか、中学生くらいの野球部、確実にこのどちらかです。まれにサークルの合宿みたいなのに出会すケースもありますが、たいがいは前に述べた二つのどちらかです。共通してどちらも、EXILEの書類選考で落ちたみたいな風貌であるのが特徴です。あるいは、行きすぎたツーブロックに軽くパーマを当てている男性を銭湯で一人みつけたら、あと三人は仲間がいると思いましょう。

<哲学者型>
タオルを頭に乗せ、目を瞑りただじっと湯に浸かっている人がいます。かなりちゃんとした露天風呂があるにもかかわらず、内風呂にずっと浸かっているのが特徴で、一人できているおじさんが主にこれに当たります。恐らく、人口密度が高くなりがちな露天風呂を避けているのでしょう。何かを深く考え込んでいるような眉間にシワを寄せた面持ちでじっとしていることが多い。近づいてみると、すごく小さな声でモー娘のハッピーサマーウェディングを口ずさんでいることが多い。

<角野卓造型>
ハゲているのにあたかもハゲていませんよという顔で風呂に浸かっているのがこのタイプ。昔はすごいモテただろうなという顔立ちの人が多いのが特徴で、おじさんなのにこの後に及んで律儀にタオルで前を隠す傾向がある。両サイドに残した髪をひらひらとたなびかせ、風の向きを読むことができると言われている。

<テルマエ型>
ひどく込み入った議論をしている二人組を指します。ほとんどの時間を露天風呂で過ごすのも特徴で、一種の思考実験に近いような議論を交わすことを好む。反論の仕方も「いや、それは矛盾が生じてる」などとややかしこまった言い回しをするのが特徴で、こちらは「"生じてる"て口語であんま聞かんけどなぁ」と言いたくなる気持ちをグッと堪える必要がある。理系の大学院生といった感じの風貌であることが多い。最終的に殴り合いになっていることも少なくない。

<ロバートキャンベル型>
シンプルに風呂に浸かりにきている欧米系の外国人を指す。驚くほど流暢な日本語を話すのが特徴で、とにかくまっすぐな目をして風呂に入る。地方の温泉地で見られることが多く、知らんけどきっと日本人より日本のことを愛している。スシ、テンプラ、オヤコドン、オイシイです、といった感じだ。

<ヒートテック型>
体毛が濃すぎて風呂から上がった瞬間、体毛がピタッと体に張り付き、その様があたかもヒートテックを着ているように見えることからその名がつけられた。同級生でいうと清水くんがこれにあたる。

<セトウツミ型>
漫画セトウツミに出てくる、瀬戸と内海みたいな小気味良いウィットに富んだ会話を繰り広げるコンビがこれにあたる。関西の銭湯にいくとだいたい一組は見つかるので、私は個人的に風呂に入るとセトウツミ型がいるかどうかを探してしまう。こないだ聞いた会話は次のような調子である。

「おしゃれってわからんよな」

「なんもわからん」

「この歳になるともう、普通でいいと思ってきたわ。とりあえずダサくなければ、みたいな」

「わかるわぁ。経済的なコストと、精神的なコストが合わへんくなってくるよな」

「いや、ほんまにそう。女の子と違って、別にそんなこれ身につけたらテンション上がるとかないもんな。全然ビール飲みたいもん」

「それ。でもその点、菅田将暉よ」

「菅田将暉?」

「あいつはもうあれやん、おしゃれなもんを身につけてるというより、あいつが身につけたらおしゃれに見えるみたいなゾーンまでいってもうてるやろ」

「あーーなるほど。1番いい状態やな」

「こないだテレビで菅田将暉の私服やってたけど、まじで未来のパリコレよ」

「パリコレの時点で前衛的やのに、さらに先なんや」

「なんやったかな、おっきいウシが二頭、むちゃくちゃディープキスしてる柄のニット着てた」

「まじで?そんなもん世に放った生産者にも非があるぞ」

「ほんで下はめちゃくちゃ短い短パン。あのポケットの裏地が裾から見えてるやつ」

「いや、ウソつけぇ。そんなちょっと前のギャルのやつ菅田が履くかぁ。ほんまに菅田か?それ。」

「ほんでタックインしてた。」

「あ、菅田やわ。菅田はだいたい裾入れるからな。ズボンに。」

「ほんで、膝まであるブーツ履いてた」

「絶対菅田ちゃうやん。大短パンに膝丈のブーツは菅田の限界突破してるから。おしゃれに見える域超えてるから」

「でも菅田やからおしゃれに見えてたんよな」

「えぐいな。なんでもいけるやん。なんか、流石にこれは菅田でもおしゃれにできひんやろみたいなやつないかな」

「なんやろな。7分丈折り返しチェックチノパンとか?」

「いやいや、そんなもんは全然よ。どうせ菅田の手にかかったら「一周回って逆に」みたいになるよ」

「うわーなりそう。ほななんやろな」

「わかったわ。家庭科で絶対作らされるわけわからん柄のエプロン。あれや」

「あーーいい線行くな。この歳であれ身につけてるキツさったらない。いや、でも菅田やったらわからん。どういう取り入れ方するか読めたもんじゃないからね」

「いや、それであかんかったらおれはもう海産物とか持たすよ。菅田に。」

「タコとかな。」

「どんだけおしゃれしてても、生ダコ巻きついてる人はおしゃれちゃうもんね。」

「いや、わからん。菅田やったら、生ダコの足と足結んでベルト代わりにする可能性ある。」

「あるけどそれはもうおしゃれとかじゃないよ。シンプルな生ダコギャグやもん。生ダコの足と足結んでベルトにする人」

「菅田には敵わん」

こんな具合である。細かい部分は若干補正しているが、おおよそこんな会話がされていて、なかなか惹き込まれる物があった。

<修行型>
サウナと水風呂を交互に行き来するアレをする人のことを指す。これも一定数確認され、これを目的に銭湯に来ている人もいるだろう。かなり身体に負荷がかかるのでやり方は適切にやらねばならないが、血管の拡張と収縮を繰り返すことで、血液の循環が促進され、疲労回復につながるという。また、同時に発汗が促進されることでデトックス作用も期待できるのだとか。あとこれは完全にイメージだが、毛穴がキレイになりそうですよね。これをやっている男性は比較的清潔感のある体をしていることが多いように思う。サウナからの水風呂の瞬間に大体の人が鬼のような形相をする。私もやってみたのでわかるが、開いた血管が収縮する瞬間はピリピリを通り越してチリチリしてくる。まさに修行といった感じだ。

サウナと水風呂を3ローテーションくらい減ると、だいたい人は生田斗真に負けず劣らずの凛々しい顔になってサウナから出てくる。ある種精神と時の部屋のようなものだ。サウナの語源はラテン語のSAUNIAで、由来は精神と時を司る古代ギリシアの神の名前である。ちなみにうそだ。

<ボイルユアセルフ型>
寝そべるように入るタイプのものすごく浅い浴槽に、寝転んでいるおじさんを指す。ぱっと見、おじさんが茹でられているように見えるため、この名で呼ばれる。ここに浸かるおじさんは皆、バレるかバレないかくらいの音量で屁をこいているとされている。バレない音量の屁であるため、今まで誰も直接聞いたことがなく、この屁についてはあくまで一説とされています。

<ソープ嬢型>
風呂に浸かって、一旦浴槽から上がって休む人があるがあるが、この休む時間の方が長すぎて、何しに来たんだこの人みたいな状態になっているおじさんがいる。表向きは風呂に来ているとされながらほとんど風呂に入っていない様になぞらえてソープ嬢型とよばれている。

いかがだっただろうか。
これらもあくまで一例であり、掘り下げればもっと細分化することも可能であると思うが、それはまた別の機会に譲るとして、今回は男湯で確認される男子の生態の一端を知って頂いた。

これを機に男子という生き物への理解が少しでも促進されたなら冥利に尽きる。

また、女性サイドの特殊な生態などご紹介いただけると相互理解が進んで良いことだろう。

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