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続・『第77回 全日本体操個人総合選手権』

 私は後日、試合観戦の熱気も冷めやらぬうちに、試合の復習も兼ね、録画しておいたテレビ中継の映像を観て、細かく第一班の選手たちの演技を振り返った。

 同じテレビで、昨年と同じように試合を観ているだけなのに、今年はこの会場に自分がいて、会場から選手たちに送られた拍手の中に、自分の拍手も混じっていたのだと思うと、再び臨場感を覚えた。

 試合会場では一定の方向からしか、その選手たちの演技を観ることが出来なかったが、やはりテレビ中継の映像となるとリピート、スロー映像も含めて、様々な角度、そして何より、近い距離で映し出される選手の演技や、その演技中の表情も目に出来るという点。それと、この時はベンチでこんなやり取りをしていたのだとか、次の種目に備えて腕の筋肉を解していたのだとか、こういうところはやはりテレビならではだと感じた。

 毎年、聴き馴染みのある解説の鹿島丈博さんの声も、すっかりお馴染みで聴いていてしっくりしたし、エリアごとに選手の名前と得点が表示されるボードがあるのだが、そこに映し出される得点は、視力の悪い私が見るにはいささか小さかった。
 時折、大型スクリーンに映し出される暫定順位を見るのが精一杯だったので、すぐに得点が画面に映し出されるところも、これもテレビならではだと思ったりもした

 本当に片足一歩、手の位置を動かすだけで減点という競技。ちょっとの着地の揺るぎでも逆転されてしまう可能性がある競技だからこそ、細かな得点がはっきりと分からないままで観ていた私は、どうなるかとハラハラし通しだった。

 平行棒の競技の際、滑り止めにはちみつと炭酸マグネシウムを使うことを知っている人は、きっと体操通の人だと思うが、橋本選手も自分の平行棒にするべく演技直前の僅かな時間、念入りにはちみつを平行棒に塗り込んで、仕上げに炭酸マグネシウムを馴染ませて準備をしていた姿が、酷く印象に残った。

 八ヶ月振りのお江戸東京は、やはり、いささか緊張したのか、試合観戦自体が緊張したせいもあるが、やはり家に帰って来てからどっと疲れが出てしまった。

 少し横になってから、夜になってインスタグラムのストーリーズに会場の写真をアップし、選手の名前をメンションしたり、選手のインスタグラムにいいねやコメントを書き込んだりした。

 橋本選手がポストした際には、毎度のこと私はコメントを書き込んでいるのだが、オリンピックチャンピオンになる以前から彼は自分へのコメントを全て読んでいるようで、いつもアクションを返してくれるのが分かっているから、今回も思いの丈をコメント欄に書き綴った。すると、一日も経たないうちに読んだ合図である、いつもの「いいね」がされていた。

 昨年、世界体操でキャプテンを務めた神本選手は「ぜひ、また会場で応援お願いします!」と思いがけず返事があり、 これまた嬉しくなった。千葉健太選手は「いいね」をしてくれていた。

 メンションに反応したのは田中佑典選手だった。こうして見てくれているのだなと思うと、より選手たちの存在が近くなり、俄然、応援にも力が入るというものである。

 その日の夜、三連覇を成し遂げた橋本選手がテレビに出演していた。確か12時半から30分くらいだっただろうか。TBSテレビの「S1」という番組だった。嬉しさ反面、試合が終わって疲れているだろうにと、少しばかり気の毒になったが、これも勝者の宿命 。仮眠を取ったのか笑顔で出演していた姿を観て安心した。

 毎年試合を観ているというのに、全日本選手権が終わると休む間もなく今月はNHK杯があり、更に来月には種目別選手権があることを、私はすっかり忘れていた。

 どちらも切符が取れればNHK杯、そして種目別選手権も観に行き、選手たちに精一杯の声援を送りたいと思っている。

        2023年4月30日・書き下ろし。

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