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暦ボケ

 こんな師走らしくない師走が、かつてあっただろうか。もう今年も残り僅かである筈なのに、気持ちの焦りも高ぶりもない。

 そろそろ年賀はがきを買って書き始めなければと思うのだが、そう思ったのもつい昨日のことである。
 ちょっと外へ出るのも億劫なくらい、手をこすりながら厚着をし、身を縮めて外へ出て行ったものだが、こんな小春日和、いや、秋日和、どっちとも言える暖かさの中では、過ぎゆく年への感傷というものも、湧いては来ないものらしい。

 やはり冬は寒くなくてはいけない。
師走は師走らしくなくてはいけないのである。

 こんな調子なものだから、毎日暦を見ているというのに、私は時差ボケならぬ暦ボケをしている。間違いなく師走なのである。十二月なのである。

 毎年、引っ張り出して着ていたダウンジャケットを毎日着ない。そのせいで、自分が何月を生きているのか時々分からなくなるのである。それはきっと植物にも言えることではないだろうか。

 冬の寒さを存分にその身に蓄えてこそ、白菜や小松菜や大根といった野菜は最高に美味しくなるのである。そんな寒さに身を耐えて、人々に美味しいと言ってもらいながら胃袋に収まるのが、彼らの最高の幸せというものなのである。

 暖かいことは何よりだが、季節外れの暖かさには 少々拍子抜けである。このままでは暦ボケをしたまま年越しをしてしまいそうである。

 来月は来年である。
 二〇二四年、令和六年である。

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