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再会

話すと長くなるのだが、私には二匹のかわいい猫がいる。そうは言っても二匹とも私の飼い猫ではない。人様が大切に飼っている、飼っていた猫である。先日、この二匹と私は何とも不思議な縁(えにし)で繋がっていたように感じる出来事があった。

私がかわいがっていた猫の一匹、隣の猫のキジトラみぃは一昨年二月、猫の寿命を全うしてこの世を去った。みぃが私と仲良くしてくれたのはわずか四ヶ月という短い期間だったが、それは年を重ねた年寄り猫だったみぃの、私への思いやりだったのかもしれないと思っていた。
そんなに悲しまなくて済む、ちょうどいい塩梅の距離を保ち、そして懐いてくれた。
そのみぃがこの世を去ってから一年が経った翌年の夏、私は散歩の途中、一匹の猫と道端でばったり遭遇した。
先週掲載した「散歩の道連れ」というエッセイの中に登場した猫がそれなのだが、その猫はどういうわけだか私に酷く懐き、しばらく私の後をついて来た。

私は立ち止まり、頭を撫でてやったり顎の辺りを撫でてやった。猫は気持ちが好いのかごきげんで、ずっと喉をゴロゴロと鳴らして私にされるがままに身を任せていた。
それから数ヶ月が経ち、季節は秋を過ぎ冬を迎えた。この寒空の下、猫は外にいるわけがなく、家の中でずっと冬を過ごしていたのだろう。私が散歩の途中、この猫と行き逢うことはなかった。

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