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【社内報の作り方】不祥事が起きたら

 あんまり想定したくないですが、会社では不祥事の起こることがあり、しかも経営側のそれということもあります。こういったとき、社内報はどういうスタンスを取れば良いのでしょう。読者目線から考えてみます。

社員の心情は…

経営側の不祥事に社員が抱く感情は2つです。1つは怒り。普段偉そうにしてるくせに、という感情はほぼ全員が抱きます。もう1つは不安。会社が潰れないだろうか。社会的信用の失墜は、同時に社員の失望を抱かせます。こういう場合、新聞なら批判的な記事を展開すればいいですが、ほとんどの社内報の場合は、こうはいきません。あくまで経営ツールであり、経営側の立場にあることを、案外社員は意識しています。経営側として謝る姿勢を見せる必要性があります。

謝り方を間違えない

難しいのは反省している姿勢を見せることです。普段なら問題ないことでも、非常時には大きな反感を買うことがあります。例えば経営者の服装。ある会社では不祥事後の社内報に経営陣が登場し、決意表明を述べました。しかしクールビズだからなのか、ノーネクタイ。普段なら問題ありませんが、これは頂けません。反感を買うだけです。また「猛省」「真摯に」「徹底」などの精神論だけに終始し、具体策がないメッセージも不安を煽るだけです。他人事、部下のせいなどと受け取られかねないか、編集側にも細心の注意が必要です。

笑ってる場合か!は、人次第

社内報に笑顔はつきものですが、「こんな時に笑っている場合か」という批判をしてくる人もいます。確かに心情的には分かるのですが、逆に笑顔をゼロにすると、悲壮感や閉塞感を助長しかねません。問題は誰が何故笑っているか。経営陣の笑顔は問題解決まで掲載不可でしょう。例外は、お客様など外部からの表彰などがあったときくらいです。逆に社員やその家族、外部の方はOK。明るい雰囲気で安心感を演出したほうが、寧ろプラスに働きます。ただふざけた感じの写真はNGです。

スポンサード記事は?

ニュース記事で考えるべきは、協賛などのスポンサードを伝える記事です。不祥事の内容に寄りますが、経営を揺るがすような場合、これらの記事は、無駄なところにお金を使っていると、社員の反感を買う場合があります。そもそも協賛記事は、記録の意味合いが強く、優先順位はあまり高くありません。当面は見合わせてよいと思います。

時間を置いて検証企画

不祥事が起きたら、再発防止が必須の経営課題であり、社内報はそれを側面支援することが新たな役割になります。再発防止の取り組みを継続的に掲載したり、区切りの際に座談会などで検証する必要があります。経営ツールとしての社内報の、真価が問われるのはこうした危機の場面なのかもしれません。

発行を辞めるべきでは?

そもそも社内報自体発行すべきかどうか。そんな悩みもあるかと思います。直近1号くらいお休みし、その間に善後策を考えるということであればよいですが、休刊が長引いた入り、廃刊するようなことになれば、社員とのコミュニケーションのチャネルを1つ閉ざすこととなり、「噂」が蔓延しかねません。危機の時は最大限読者に配慮しながらも、継続的な対話を続ける経営スタンスが、社内報編集に求められるものだと思います。

今回の1冊

プラトン著
ソクラテスの弁明・クリトン

 古代アテネの哲学者ソクラテス。抜群に頭のいい彼が鼻につく、そんな理由で裁かれることに。そこで展開された弁明とは、まったくもって上から目線で却って反感を買うことになってしまい、死刑に処せられる。死刑前夜、弟子のクリトンが逃亡を勧めるも、法律を守ることが筋であるとしてこれを聞かない。孤高の存在ではあるけれど、一般人には何の参考にもならないような1冊。しかし反面教師的に見れば、やはり弁明時はもう少し謙虚でないと。正しい主張をすれば、相手に正しく伝わるかというとそうではないことを、つまり人間は感情の生き物であることを2000年以上前に教えてくれる示唆に富む一冊。

Connecting the Booksは、これまで培ってきたクリエイティブディレクター、コピーライター、編集者としてのノウハウを公開するとともに、そのバックグラウンドである「本」のレビューを同時に行うという新たな試みです。