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後記「スタートアップ向け支援セミナーin北海道 これから知財活動をはじめるスタートアップのための勘所」

【要約】
弁理士の著者は、日本弁理士会の主催する「スタートアップ向け支援セミナーin北海道」に登壇した。そこで、「広義の知財」について自らの考えを発表した。知財とは「売りたい情報」であり、自分で決めるものだというメッセージを伝えた。また、パネルディスカッションでは、スタートアップの契約や地域性、企業価値の向上などについて議論した。著者は、知財は企業価値を上げるための選択肢の一つに過ぎないという立場をとった。北海道でのセミナーは、著者にとって学びの多い機会だったと締めくくった。

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サマリ

日本弁理士会の主催によるセミナー「スタートアップ向け支援セミナーin北海道 これから知財活動をはじめるスタートアップのための勘所」に講師として登壇した。

日本弁理士会経営支援センターの会務の一貫としての仕事である。

開催場所は、札幌。
人生初の北海道だ。

この手のセミナーは、日本弁理士会関東会の中小・ベンチャー支援委員会の企画で2018年から参画している。
今年の2月には福岡でも開催した(後記はこちら)。

オンライン参加も含めると50名近い方に時間を割いて頂いた。
そこで、「広義の知財」を全面に押し出したテーマで自らの考えをお話した。

【登壇テーマ】

  • [講演]「テック系スタートアップが知財活動を始める前に知って欲しいこと」

  • [パネルディスカッション]「スタートアップ向け支援セミナーin北海道 これから知財活動をはじめるスタートアップのための勘所」

【パネルディスカッションのその他の登壇者】

  • モデレータ=弁理士 太田 悠 氏(日本弁理士会北海道会幹事/弁理士)

  • パネリスト

    • 杉田 基子 氏(つじのか国際商標事務所 弁理士)

    • 山田博貴氏(弁護士法人OneAsia 弁理士・弁護士)

講演テーマ

30分の講演に50枚超のスライドを用意して、「広義の知財」の考え方の触りをお話した。

ポイントは、以下の点である。

  • 「知財」とは、あなたが「売りたい情報」である。

  • 「知財か否か」を決めるのはあなた自信である。

  • 「知財」には、お金のかかる知財(主に出願を要するもの)と、お金のかからない知財がある。

  • できることから始めよう。

会場参加者が少なかった&タイムキーピングをセルフでやっていたこともあって、会場参加者の反応を見る余裕はなかった。
(というか、自分の話に没頭してしまうと、いつもこうなってしまう→悪い癖w)

正直、一度で伝わる内容でないと思うけど、「特許」や「商標」の重要性や実務論は他にもお話できる方(何なら、僕より上手に伝えられる方)がたくさんいるので、「僕にしか話せない話をしよう」と割り切った。

抽象論で走り抜けた(具体性を持たせる努力はしたものの)が、1人でも行動変容するオーディエンスがいれば幸いだ。

パネルテーマ

パネルディスカッションのスタイルは、僕の提案により、「知財実務オンライン チザトーーク ~スタートアップの中の人あるある~」(2023/05/11)や「すごい知財EXPO2023 異種弁理士トーク」でも採用した「アメトーーク」スタイルにした。

スタートアップにおける契約の勘所

「広義の知財」で外せない知財の1つが契約だ。
契約の重要性を浸透させるために、「契約も知財だ」ということを伝え続けている。

「知財」という概念にとことん向き合った結果として、概念の拡張が必要であるとの結論に至った。

その結果、僕は「自分が価値をつけたい情報が知財である」と考えるようになった。

「売りたい(つまり、価値をつけたい)」と強く願って進める業務の代表例が契約業務だ。

すると、契約も知財であることが見えてくる。

弊Blog「This is startup - 契約も知財だ!」
レジュメ(僕の回答=A)

北海道知財あるある

2つ目のテーマは、北海道ならではの知財問題について議論を試みた。
僕からは、「知財に地域性はない」というお話をした。

これには、「東京と北海道は違う」という先入観(ノイズ)を捨てて、純粋に「売りたい情報」として向き合って欲しい、という想いを込めた。

レジュメ(僕の回答=B)

北海道の弁理士として参加された杉田先生は「ピースフル」(C)というお話があった。

僕には「文化の話」をされているように映った。
地域性はなくとも、属人性は無視できない。
人のキャラクタはその地域コミュニティの影響を受けることを考えると、一周回って、知財にも地域性があるのかもしれない

知財を使って企業価値を上げる方法

「知財を使って企業価値を上げる方法」という壮大なテーマであったが、僕が強調したかったのは「知財は道具であるので、使い方を考えれば良い」という話だ。

僕は、「知財の知識がない方は、知財に対して過剰なハードルと過大な期待を持ってしまう」という仮説を持っている。

もちろん、知財家としては過大な期待に応えることも必要なのであるが、知財活動は知財の保有者がトリガを引くものである(第三者との係争を除く)。

であるならば、これからの知財の保有者たるスタートアップには、「知財」というハードルを設定するのではなく、純粋に、「どうやって企業価値を上げようか?」という思考の先に「知財」を見て欲しいと思っている。

レジュメ(僕の回答=C)

スタートアップは知財にどう向き合うべきか?

最後のお題は、「スタートアップは知財にどう向き合うべきか?」。

これまた、答えのない問いである。

僕は、「知財は企業価値を上げるための選択肢の1つに過ぎない」という話をした。

「知財」を崇高なsomethingにしてしまうと見誤ってしまう。

僕が経験した一般的知財領域の外に置かれるであろう人事や広報に対して、「今は知財より重要だ」と思ったことは何度もある。

「知財」を投資対象の選択肢の1つとして捉えて、他の投資対象と同じように向き合うことで、知財活動の歯車が回り出すはずだ。

レジュメ(僕の回答=C)

数年来委員会でお話させて頂いている山田さんからは、「フェーズに合わせた対策を」という話があった。

この手の話は、弁護士目線の方が説得力がある。
契約相談や法律相談の発生頻度が出願相談よりも多いからだろう。

スタートアップという小さな船では、「やった方が良いこと」(WANT)と「やるべきこと」(MUST)の解像度が大企業のそれより上がることは間違いない。
「大企業より感じやすい」という意味だ。

これは、小さな船(スタートアップ)は、大きな船(大企業)に比べて、波を受けたときに大きく揺れることと同様だ。

むすび

今回は人生初の北海道だった。

セミナー後の懇親会で開催に協力して頂いた北海道の弁理士の方と、いろんなお話をした。
東京から離れた北海道という地でしか感じ得ないことは間違いなくあるし、日本という小さな国の中で「地域性の違い」で片付けてはいけない本質的な課題もたくさん見えてきた。

本当に学びの多い機会だった。

セミナーの後は2泊して、北海道観光を楽しんだ(札幌郊外の山で道に迷った(有り体に言えば遭難した)のも良い思い出だ。

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