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後記「アーリースタートアップのための知財活動」(日本弁理士会 知財経営センター in福岡)

日本弁理士会の委員としてセミナーに登壇した。
単独登壇によるリアルセミナーって、ピクシーダストテクノロジーズにジョインした後では初めてかも。

場所は福岡。
これまたリコー時代の新人時代以来だから18年ぶりとか。

弁理士会の主催ではあるが、会員向けというより、スタートアップ向けのコンテンツに仕上げた。

話した内容

セミナーのペルソナ

セミナーのペルソナは「アーリースタートアップ」である。
その要件は、以下の2点に置いた。

  • 一定期間内の急成長が求められていること。

  • 知財専任者がいないこと。

僕の登壇前に杉村先生(日本弁理士会会長)から「スタートアップだけでなく中小企業も支援対象になる」という趣旨のお話があったが、この要件であれば、中小企業(成長のために積極的な投資を行っている会社)も該当するかもしれない。

知財とは何か?

ブログも含めて方々で唱えているのが「知財の再定義」だ。
定義はスコープ(つまり、解像度)によって様々であり、正解はない。
僕は、解像度を粗くしてスコープを広げて捉えている。

今回は、「知財」=「スタートアップが価値を付けたい情報」と説明した。
「スタートアップが思っている以上に知財は事業に関わっている。だから、安易に知財のスコープを狭めないで欲しい。」ということを伝えたかったからだ。

スタートアップには、リテラシが不足している。
スタートアップが「知財か否か」をジャッジすると、「知財であるべきもの」が漏れるリスクが高まる(これは、スタートアップに限らず、例えば発明者に発明か否かを判断させると、出願漏れのリスクが残るのと同様だ)。

合わせて、「知財は特許や商標に限られない」という点も強調した。
この話は、本ブログにも書いたとおりで、継続的に発信していかないといけないと思っている。

知財スタンス(知財に向き合う姿勢)

知財に向き合う姿勢として伝えたのは以下の2点。

  • 「知財は投資」。

  • 「知財より事業成長」。

人事責任者での経験を活かして、スタートアップにとって知財より馴染みの深いであろう「採用」と「知財」を同種のものとして説明した。
この説明は、しゃべっていても自分の中でしっくり来たので、別途記事にしてみようと思う。

専門家への相談の勘所

「専門家への相談の勘所」と題したセクションでは、以下の2点を伝えた。

  • 良い弁理士の探し方

  • 弁理士への頼み方

「良い弁理士の探し方」では、「話が会う弁理士を探すべし」という話をした。
これは、自分が代理人として最も痛感したからだ。
弁理士にとっても、良い顧客は話が会う顧客である。
話の合わない関係(ミスマッチ)程、不幸なことはない。

「弁理士への頼み方」では、ロードマップ(事業計画)を示すよう促した。
顧客の目的は、出願ではなく、事業の成長であるはずだ。
成長の目的語である「事業」を示さなければ、弁理士側から「事業の成長」に資する提案ができない。
良い発明や新しいブランドネームを思いついたとして、その情報を伝えるだけで終わっては、事業の成長に繋がる筈もない。

今回は、弁理士会が主催するセミナーであったため、「専門家=弁理士」として伝えたが、弁理士ではない知財専門家と付き合うときも同様だろう。

感想

会場参加は10名程度であったが、久しぶりのリアルセミナーは楽しかった。
福岡在住のtwitterフォロワーさんにも会えたし。

30分のセミナーではあったが、2023年にはいってからブログやSNSで発信している内容を端的に整理する良い機会だった。
こういうお話は自分のためにもなるので、積極的に受けていきたいし、お声がかかるように日々精進したいものだ。

今回は、「Fukuoka Growth Next」というコワーキングスペース(小学校を改装したらしい)で開催された。
隣は、スタートアップ界では有名な「awabar」だ。

福岡のスタートアップ支援の物理的インフラの整備は噂に違わず進んでいる印象だった。
一方、物理的インフラが整備されただけで十分なわけではなく、知財の啓蒙は継続的にやっていかねばならないと思う(これは2020年の沖縄でも感じた)。

一言で「スタートアップ」と言っても、東京と福岡とでは事情が異なるようにも感じた。
福岡のスタートアップに合った支援とは何か?(東京のスタートアップへの支援との一致点と相違点は何か?)。
これについては、もう少し様子を見る必要がありそうだ(同じ話が、福岡以外の地方都市にも当てはまるのだろう)。

「スタートアップx知財」の民主化が進む中で、スタートアップの内側で日々四苦八苦している僕の経験が少しでも役に立つのなら、惜しまずに社会に還元していきたい。

そして、その経験を堂々と胸を張ってお伝えできるよう、本業でしっかりと結果を出すことを改めて誓った。

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