見出し画像

競争に負ける企業の運命。新市場開拓の急所を見落とすな

新市場の開拓は、失注を通じて自社の弱みを把握し、それを補うことで新規のお客さまを獲得することに他なりません。結果的として、事業が成長します。

事業拡大を目的とした新市場の開拓のために営業戦略の基本である差別化や強みが重要なのは確かですが、むしろ弱みを補うことが本質です。多くの企業がこの点を見過ごしているのではないでしょうか。


自社の強みはお客さましか知らない、という真実

すべての企業にとって、利益の確保は重要な経営上の課題です。利益を確保するには経費の削減も必要ですが、売上の向上がさらに重要です。

売上向上のためには、既存のお客さまからの売上増加と新規のお客さまの獲得が不可欠です。

少子高齢化などの長期的な社会傾向を考慮すると、新規のお客さまを獲得することは特に重要です。この傾向は地方でより顕著です。中小企業においては、事業を営む市場の縮小に直面している企業も多く、市場規模の観点から見ても、新規のお客さまの獲得は経営上の重要な課題です。

事業を成功させるためには、自社の強みを活かすべきである、というのは経営の鉄則です。銀行からの融資やベンチャーキャピタルからの資金調達の際にも、自社の強みについて問われるほど、それは事業戦略の核となります。

自社の強みを把握するためには、営業活動での「受注の理由」を知ることが有効です。自社の強みは、自社が決めるのではなく、お客さまが決めるものです。

自社はこれが強みと思っていても、お客さまが購入する理由は、自社の強みとは関係のないこともあります。当社でもこの経験があります。受注理由をお客さまに聞くことによって、いままで考えたことのない強みを知りました。自社の強みは自社ではわからないものです。お客さまが自社の強みに納得して購入いただけることを考えれば、自社の強みはお客さまが決めるということが、真実ではないでしょうか。

このようにして自社の強みを深く理解することによって、自社の強みを活かした営業活動を展開することで、新たなお客さまを獲得できるでしょう。


継続的な売上拡大には、市場開拓が欠かせない

営業活動で自社の強みを活かすことは、特定の市場のお客さまに対して有効になります。既存の事業領域内で自社の強みを知っても、それは既存の市場のみで有効にしかならないことがあります。その強みを活かすだけでは、既存の事業領域内での新規のお客さまの獲得は可能ですが、それだけでは継続的な新規のお客さま獲得にはつながりません。

例えば、化学繊維業界で自社の製品が機能の精度の高さという品質で強みを持ち、売上に貢献しているとしましょう。この強みを活かして同じ化学繊維業界内で新規のお客さまを獲得できます。化学繊維業界において、売れるパターンを特定し、営業活動を体系化することが可能です。このようにして、化学繊維業界内効率よく新規のお客さま獲得をできるようになります。

しかし、化学繊維業界以外、たとえば天然繊維業界では、自社の強みが活かせない可能性があります。同じ強みと販売戦略では、異なる業界に通用するとは限りません。異なる業界では異なる販売戦力と異なる強みが必要かもしれません。

化学繊維業界で一定の市場シェアを確保した後、新規顧客獲得が難しくなり、売上が停滞する可能性があります。ある一定の業界だけの売上だけにとどまってしまうからです。

では、売上を継続的に増やすためにはどうすれば良いのでしょうか?

事業を拡大目指すなら、現在のお客さま以外の領域へ事業を広げる必要があります。既存の市場での売上を増やすことは重要ですが、未開拓の領域への市場拡大が中長期的な成長には不可欠です。


失注から学んで新規の市場を開拓するべし

では、新規の市場にはどのようにアプローチすべきでしょうか?

その答えは、商談の失注の理由にあります。失注とは受注にいたらなかった具体的な理由のことです。ある業界で自社の強みを活かして販売できる一方で、別の業界ではその強みが通用せず失注するケースがあります。

このため、新規の市場開拓では、未開拓の市場における商談で失注した理由を深堀りし、その失注を克服するために必要な商品やサービスを開発することが求められます。このプロセスを通じて、まだ手をつけていない市場における自社の弱点を明らかにし、それを補う新たな強みを育てる必要があります。

しかし、多くの企業が失注理由の分析を見過ごしています。新規市場の開拓は既存市場での売り上げを伸ばすよりも、はるかに多くの労力を要するため、強みを理解し、それを活かせるお客さまに絞った既存市場の深堀型のアプローチを選ぶ傾向にあります。

その結果、「その市場は自社のターゲットではない」「自社の製品はその分野向けではない」といった理由で、得意な市場のみに売上を追求することになります。これでは、当該市場においてある程度のシェアを獲得した段階で売上が頭打ちになるため、事業の拡大ができなくなってしまいます。自ら、自社の事業拡大の潜在力を捨てていることになります。

失注の理由を詳細に分析し、新規市場でのお客さま獲得に積極的に取り組むことは、事業拡大の第一歩です。

また、このように新規市場を開拓することで、一定の市場や業界の影響を受けにくくなります。特定の市場や業界が不況の場合でも、自社の売上げに大きな影響が出ることを避けることができます。また、徐々に衰退していく市場に留まることなく、常に新しい市場を開拓することで、リスクを分散し、売上の拡大を目指すことが可能です。


持続可能な事業拡大とは、失注理由の継続的な収集と分析にある

営業活動において受注するよりも失注のほうがはるかに多いという原則にもとづけば、受注理由よりも多くの失注理由を収集することが可能です。しかし、実際にはそうかんたんではありません。なぜなら、商談での失注理由を収集することは、お客さまから受注理由を教えてもらうよりもはるかに難しいからです。

多くのお客さまは、失注の理由を教えてくれません。お客さまにとって失注理由をみなさんに共有するメリットがないからです。さらに、失注理由を伝えることで、営業からのしつこいカウンタートークに直面する可能性があるためです。

それでも、可能な限り商談の失注理由を収集する努力をしましょう。

失注理由には、事業拡大に役立つ重要な情報が含まれています。新規領域のお客さまについての知識を深めることができるだけでなく、競合企業の営業活動や製品情報も得られます。

事業運営とは、無限に存在するお客さまの要望に対して、限られた経営資源を用いて可能な限り多く応えることです。失注理由を収集することで、お客さまの要望をより詳細に理解し、競合企業の動向を把握することができます。これにより、競合を上回る営業活動を展開し、より強力な製品開発に繋げることができます。

失注理由の収集を一度限りの取り組みではなく、営業活動の習慣として定着させることが望ましいです。なぜなら、お客さまのニーズは常に変化し、それにともない競合企業の戦略も変わるからです。

事業拡大とは、このような変化に柔軟に対応していくことそのものです。


メルマガでも毎週情報発信しております。ぜひご登録くださいませ。


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?