らくのうラボ🐄

〜乳牛の科学的知識に関するお話〜 ▪️毎月20本以上の論文を読破📚 ▪️基礎知識から最新の研究まで🧑‍💻 ▪️投稿頻度は週に1回程度❗️ 一緒に牛のお勉強をしましょう✨

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最近の記事

低カルシウム血症はなぜ発生するのか?

はじめに 低カルシウム血症(Hypocalcemia)または乳熱(milk fever)、それに伴う分娩不全麻痺(Parturient Paresis)による起立不能は周産期病の中でも、最も問題となっている病気です。 低カルシウム血症のことをなぜ乳熱と言うのかは定かではありませんが、昔の科学者が臨床症状の所見を間違えていたことなどが関係してそうです。 乳熱という名前からして熱が関係あるのだろうと思われる方もいるかと思いますが、発熱の症状は伴わないため惑わされないようにしま

    • 周産期病とはなんなのか?

      周産期病(peripartum disease)とは周産期に発生する代謝障害や消化管障害、繁殖障害などの総称です。 周産期は分娩前約2週間から分娩後約1週間の期間を指し、移行期(transition period)とも呼ばれます。移行期には分娩に向けて初乳の生産が始まり、それに伴ってミネラルやビタミン、エネルギーの要求量が急激に上昇します。 要求量に応じた飼料マネジメントができていない場合、牛はバランスを崩し代謝障害を引き起こします。 周産期病の代表的な疾病としては、低

      • 乳房炎検知!伝導率とは?

        乳房炎の検知には様々な方法があります。 これは乳房での細菌の感染に伴って生理学的、物理学的、化学的に様々な変化が起こるためです。乳房炎の検査方法は何を指標にするかによってそれぞれアプローチが異なります。 例えば、これまでの研究で有用であると言われているものは体細胞数、乳糖濃度、電気伝導度(伝導率)、NAGaseなどが報告されています。 最も広く使われているのは体細胞数であり、カリフォルニア式乳房炎検査薬(CMT: California Mastitis Test)やPLテ

        • 科学的に正しい搾乳手順!

          はじめに 搾乳はいろいろな牧場を見ていると、それぞれにやり方があって、 時にはこれって本当に大丈夫なの?って思う時もあります。 例えば、ポストディッピングのみを行っている所や、前搾りをしてからプレディッピングをしている所、使いまわしの防水手袋などなど・・・細かいところまで挙げればキリがないのですが・・・ みなさんも、正しい搾乳を知っていて実践できている!と胸を張って言える人は少ないのではないでしょうか? 搾乳は酪農という仕事の中で最も気を使うべきことであり、 逆にいまま

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          乳房炎の治療に用いる抗生物質の種類について

          はじめに抗生物質とは微生物の発育を阻害する物質のことです。 最初に発見された抗生物質はペニシリンと呼ばれ、1928年イギリスのアレクサンダー・フレミングという人によって発見されました。 以前に放送されていた「JINー仁ー」というドラマを見ていた人は聞き覚えがあるのではと思います。 抗生物質には殺菌作用を示すものと静菌作用を示すものがあります。 ●殺菌作用とは微生物を死滅させること ●静菌作用とは微生物の活動を静止させることを言います。 静菌作用の抗生物質は微生物を排

          乳房炎の治療に用いる抗生物質の種類について

          乳房炎の直接的損失・間接的損失について!

          はじめに乳房炎のコスト(損失)には大きく分けて2種類あります。 ●直接的損失・・・薬代、廃乳費、診療費、労働費、体細胞数ペナルティなど ●間接的損失・・・その後の乳量の低下、淘汰リスクの増加、他のウシへの伝染、その他の病気への感受性の増加など 直接的損失に関しては、割と計算しやすくて目に見えやすい損失となっていますが、間接的損失は測定するのが難しいため、現場ではあまり意識されません。 しかし、実際は間接コストは皆さんが思っているよりもはるかに大きく、この損失をしっかり

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          乳房炎の直接的損失・間接的損失について!

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          乾乳期間の短縮で分娩後の代謝障害が減少する!

          はじめに1900年代後半くらいから泌乳量を最大にするために乾乳期間は6週間から8週間がベストだよって言われてきました。 しかし、分娩後の泌乳量の急激な増加によって代謝障害が増加し始めています。 そんなこんなで、2000年初頭には乾乳期間を短縮して分娩後の乳量を減らした方がよくない?その分の乳量を泌乳期間の延長で補えたらいいよね!っていう感じで、乾乳期間短縮説が浮上してきました! 今回は最近割と物議をかもしている乾乳期間短縮について触れていきたいと思いまーす!

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          乾乳期間の短縮で分娩後の代謝障害が減少する!

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          牛乳のpHで乳房炎かどうかはわからない!

          乳房炎の検査を簡易的に牧場でできるってので、PLテスターてあると思うんですけど、これって「固まるか固まらないか」と「色が変わるか変わらないか」の2つの指標に基づいて評価しているですね。 この指標についてなんですが、前者からは細胞数、後者からはpHがわかるようになっています。 で、、、海外の研究とかを見ていると、確かにこのようなテスターを用いているんですが、pHまでわかるものってあまりなくて、そもそもpHから乳房炎ってわかるのかもよくわからなかったので調べてみました。 ま

          牛乳のpHで乳房炎かどうかはわからない!

          論文ヲタク誌#3 【乳房炎の再発症リスク上昇させる要因!】

          はじめに 今回、参考にした研究は「Invited review:Incidence, risk factors, and effects of clinical mastitis recurrence in dairy cows(2018)」 和訳すると「Invited review:乳牛における臨床型乳房炎の発生率、リスク要因および影響」って感じです。 乳房炎の再発生に主に影響している要因ってなんだろう?って思ったので調べてみました。 実際のところ、乳房炎の再発生を定

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          論文ヲタク誌#3 【乳房炎の再発症リスク上昇させる要因!】

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          論文ヲタク誌#2 【乾乳時治療:乳頭内シール+クロキサシリンの乳房炎に対する有効性】

          はじめに参考にする研究は2010年にD.J. Runcimanらによって報告された「The use of an internal teat sealant in combination with cloxacillin dry cow therapy for the prevention of clinical and subclinical mastitis in seasonal calving dairy cows」です。 和訳すると「季節分娩性の牛において、臨床性お

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          論文ヲタク誌#2 【乾乳時治療:乳頭内シール+クロキサシリンの乳房炎に対する有効性】

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          論文ヲタク誌#1 【分娩後30日の乳房炎発生率を左右する乾乳期管理】

          はじめに今回参考にする研究は2007年にM.J. Greenらによって報告された「Cow,Farm, and Management Factors During the Dry Period that Determine the Rate of Clinical Mastitis After Calving」です。 和訳すると「分娩後の臨床性乳房炎発生率を左右するウシ、農場および飼養管理の要因」です。 【本日の英単語】 Dry period:乾乳期 Clinical Ma

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          論文ヲタク誌#1 【分娩後30日の乳房炎発生率を左右する乾乳期管理】

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          乳房炎の科学No.5 『レンサ球菌の病原性が高い6つの理由:後半』

          はじめに前回はレンサ球菌の特徴について、ざっと解説しました。黄色ブドウ球菌と違って抗生物質による治療効果が高く、比較コントロールしやすいように思われます。実際、伝染性乳房炎の発生は1900年代と比較して7割以上減少したといわれています しかし、S. uberisやS. agalactiaeは慢性乳房炎を引き起こす病原体としてよく知られています。 以前の投稿で、それぞれの乳房炎の原因微生物の割合をまとめましたが、慢性乳房炎の発生は4分の1が黄色ブドウ球菌とレンサ球菌によって引

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          乳房炎の科学No.5 『レンサ球菌の病原性が高い6つの理由:後半』

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          乳房炎の科学No.4 『レンサ球菌の薬物治療効果は高い!前半』

          レンサ球菌属とはレンサ球菌属(Streptococcus)とはファーミキューテス門バシラス網バシラス目レンサ球菌科レンサ球菌属に属するすべての種を指しています。レンサ球菌は基本的にグラム陽性細菌として分類されています。 グラム陽性やグラム陰性とはよく聞く言葉ですが、細菌の大まかな分類の一つとなっています。 細菌はグラム染色をすると青く染まるグラム陽性細菌と赤く染まるグラム陰性細菌に分類されます。 この染色の違いは外膜の有無によって決まります。 グラム陽性菌は外膜を持っておら

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          乳房炎の科学No.4 『レンサ球菌の薬物治療効果は高い!前半』

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          乳房炎の科学No.3『最も治癒率が低い黄色ブドウ球菌の特性』

          生物の分類まず、生物というのは3ドメイン説によって真正細菌、古細菌、真核生物の3つに分類されています。真正細菌には私たちがよく知るいわゆる細菌と呼ばれるものが含まれています。古細菌はメタン菌や高度好塩菌が含まれ、真核生物には動物、植物、菌(カビや酵母)が含まれます。細菌と菌はよく混同されがちですが、生物学的分類からすると、まったく違う物となっています。 生物の分類というのは門→網→目→科→属→種の順にどんどん枝分かれしていき細かく分類されます。分類の末端である種はその生物自

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          乳房炎の科学No.3『最も治癒率が低い黄色ブドウ球菌の特性』

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          乳房炎の科学No.2『乳房炎を引き起こす微生物の頻出ランキング!』

          乳房炎はどのくらい発生しているの?乳房炎の原因となる微生物に入る前に、そもそも乳房炎ってどのくらい発生しているのか?全て病気の中で乳房炎が占める割合を把握しておきましょう。 病気の発生数に関するデータは農林水産省の「家畜共済統計表」で誰でも入手することができます。そこで、今回は過去10年間を遡って、乳房炎がどれくらい発生しているのか調べてみました。 乳房炎を含む泌乳器障害は全疾病の中で最も発生率が高く、約30%を占めています。次に多いのが生殖器病で約23%、その次が消化器

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          乳房炎の科学No.2『乳房炎を引き起こす微生物の頻出ランキング!』

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          乳房炎の科学No.1『乳房炎は4種類に分けられる!』

          Chapter 1 乳房炎とは?乳房炎とは、一般的には「乳房の炎症」を表す言葉で、酪農界において牧場の経済性に影響する病気として世界中で問題となっています。 乳房炎の成立は3つのフェーズからなると言われています。 ❶微生物の侵入、❷感染(定着と増殖)❸炎症 原因となる微生物は、なんらかの形で乳頭より乳腺内へと侵入します。搾乳中の手順が間違ってたり、搾乳機械のメンテナンスが不十分であると乳腺内に侵入される確率が上がります。 微生物が乳腺内へと侵入した場合でも、ほとんどの

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          乳房炎の科学No.1『乳房炎は4種類に分けられる!』

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