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乳房炎の科学No.4 『レンサ球菌の薬物治療効果は高い!前半』

レンサ球菌属とは

レンサ球菌属(Streptococcus)とはファーミキューテス門バシラス網バシラス目レンサ球菌科レンサ球菌属に属するすべての種を指しています。レンサ球菌は基本的にグラム陽性細菌として分類されています。

グラム陽性やグラム陰性とはよく聞く言葉ですが、細菌の大まかな分類の一つとなっています。
細菌はグラム染色をすると青く染まるグラム陽性細菌と赤く染まるグラム陰性細菌に分類されます。
この染色の違いは外膜の有無によって決まります。
グラム陽性菌は外膜を持っておらず、グラム陰性菌は外膜を持っています。

●グラム陽性細菌・・・黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、レンサ球菌、バチルス、エンテロコッカスなどが含まれます。
●グラム陰性細菌・・・大腸菌や緑膿菌、クレブシエラなどが含まれます。

グラム陽性か陰性かで抗生物質が効かないものもあるため、注意が必要です。例えば、グラム陰性細菌にはペニシリン、ペネサメート、クロキサシリンなどの抗生物質があまり効かず、グラム陽性細菌にはストレプトマイシンが効きにくいなどがあります。

レンサ球菌属は人にとってもなじみが深く、虫歯の原因となるプラーク(歯垢)を形成するミュータンス菌(虫歯レンサ球菌)などの種も含まれます。
ブドウ球菌などと異なり、細胞分裂が一方向に起こり、その様子が鎖のように連なっていたことから、レンサ球菌と呼ばれるようになりました。

レンサ球菌属は83菌種(2013年時点)が報告されていますが、今回は乳牛の乳房炎に関連のある3種に絞って解説していきたいと思います。

S. agalactiaeの特徴

Streptococcus agalactiae はグラム陽性のβ溶血を示す球菌です。一部の株では非溶血を示します。ランスフィールド分類ではB群に属します。
S. agalactiaeは一般的には伝染性微生物として分類されており、強い伝染力があり、牛から牛へと簡単に広がります。
しかし、細菌の研究では牛の腸内や牛舎の床、水飲み場により多く存在していると言われており、環境性微生物であるとも言えます。

S. agalactiae由来の乳房炎は1900年代前半より確認されており、当時発生していた乳房炎の内、90%以上はagalactiae由来とされていました。

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