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新千夜一夜物語 第62話:将棋とチェスの名人に共通する魂の属性

青年は思議していた。


オリンピック以上のプロのスポーツ・芸能・芸術を生業にできる人物は、魂の属性が“2−3−5−5…2”に限られるというルールがあるなら、将棋やチェスといった、盤上での競技におけるプロの棋士にも、何らかの霊的な共通点があるだろうか。

独りで考えても埒が明かないと思い、青年は陰陽師の元を尋ねるのだった。


『先生、こんばんは。本日は将棋の棋士たちの魂の属性について教えていただきたいと思い、お邪魔いたしました』

「あいわかった。そなたが気になった棋士の名前を教えてもらえるかの」

『まずは、最年少記録や歴代一位の記録を持つ、藤井聡太と羽生善治についてお願いいたします』

そう言い、青年は二人の略歴を口頭で伝える。


《藤井聡太》
2016年に史上最年少(14歳2か月)で四段昇段(プロ入り)を果たし、そのまま無敗で公式戦最多連勝記録(29連勝)を樹立した。その後、最年少一般棋士優勝・タイトル獲得、史上初の10代九段・二冠・三冠・四冠など多くの最年少記録を持っている。


「どれ、みてみよう。少し待ちなさい」

そう言い、陰陽師は、紙に鑑定結果を書き連ねていく。

《羽生善治》
・1985年に中学生でプロ棋士となり、1989年、初タイトルとして竜王位を獲得。1996年2月14日、将棋界で初の全7タイトル(竜王・名人・王位・王座・棋王・王将・棋聖)(当時のタイトル数は7)の独占を達成。
・2017年12月5日、第30期竜王戦で15期ぶりに竜王位を獲得し、通算7期の条件を満たして永世竜王の資格保持者となり、初の永世七冠(永世竜王・十九世名人・永世王位・名誉王座・永世棋王・永世王将・永世棋聖)を達成。さらに名誉NHK杯選手権者の称号を保持しており、合計8つの永世称号の保持も史上初。
・2018年度(2019年)の第68回大会で優勝し、同大会優勝回数を11回に更新の上、一般棋戦(タイトル戦以外のプロ公式戦)の通算優勝回数が大山康晴を超え史上最多の45回となった。
・通算優勝回数152回、公式戦優勝回数144回、タイトル獲得99期、タイトル戦登場136回、同一タイトル戦26回連続登場(王座)、同一タイトル獲得通算24期(王座)、一般棋戦優勝回数45回は歴代単独1位の記録である。また、非タイトル戦優勝回数53回、非公式戦優勝回数8回、最優秀棋士賞22回、獲得賞金・対局料ランキング首位23回も歴代1位である。

陰陽師が書いた二枚の属性表を見比べ、青年は口を開く。

『やはりと言いますか、二人の属性表の数字は共通点が多いですね。特に、この二人の転生回数が290回代ということで、以前、“9”という数字には例外/矛盾という意味を持ち、“世の変革者”、収束、まとめるなどの役割を持つ傾向があるとお聞きしました』

そう言い、青年は紙にペンを走らせる。

《転生回数の“十”の位と“一”の位の数字が持つ意味》
9:大々山、例外/矛盾、世の変革者、収束、まとめる
7:大山
4:小山
3:数奇な運命、爆発、拡散、アップダウンが激しいなど
1:雑味がなく、本来持って生まれた能力を100%発揮しやすい


陰陽師が無言でうなずくのを見、青年は言葉を続ける。

『将棋では古くから脈々と定石が受け継がれており、日進月歩、多くの棋士たちが最善の一手を研究しています。そうした棋譜を収束してまとめた結果として、真剣勝負の最中に相手の考えを看破し、好手や妙手を閃くという意味では、転生回数の290回代は文系の中での“大々山”と考えれば納得できます』

「そのように考えることもできるじゃろうが、何事も例外があることと、あくまで現時点での検証の結果であるため、今後の検証によっては解釈が変わる可能性があることを覚えておくように」

陰陽師の言葉に対し、青年は真剣な表情で大きくうなずく。

「その前提を踏まえた上で補足しておくと、転生回数の200回を境に文系と理系に分かれ、転生回数が200回以下と若い第三期と第四期の魂は理系の傾向が、200回を超える第一期と第二期の魂は文系の傾向があることは、以前にも説明した通りじゃ」

そう言い、陰陽師は紙に解説を書いていく。

<各期と輪廻転生回数>
第一期/老年期……301~400回(61~80歳)
第二期/円熟期……201~300回(41~60歳)
第三期/青年期……101~200回(21~40歳)
第四期/幼年期……1~100回(0~20歳)
※人生を80年と仮定した場合。

手を止めた陰陽師が言葉を続ける。

「して、棋士にもピンからキリまでいると思うが、今度はさきほどの二人のような名人級以外で、他に気になる棋士はいるかの?」

陰陽師にそう問われた青年は、スマートフォンを手早く操作し、口を開く。

『棋士であると同時に投資家としても知られている桐谷広人と、将棋ソフト不正使用疑惑騒動を起こした、三浦弘行はいかがでしょうか』

そう言い、青年は二人の略歴を口頭で伝える。

《桐谷広人》
・1975年に四段昇段を果たしプロ棋士となった。当時まだ珍しかった、研究派の棋士で「コンピューター桐谷」の異名をとった。
・観戦記なども手掛け、囲碁・将棋チャンネルの「桐谷広人の将棋講座」及び「名勝負の解説」では師匠・升田幸三の将棋の解説も務めた。
・2000年には現役勤続25年表彰を受けた。第55期順位戦でフリークラスに陥落、復帰できないまま10年が経過したため、2007年3月末に引退した。通算成績は327勝483敗。
・“財テク棋士”として著名になり、現在では、財テクに関する雑誌“ダイヤモンドZAi”や“日経マネー”にも、個人資産家として登場する。2006年時点で桐谷は、株式を約400銘柄、時価3億円分を保有し、そのうち1億円が優待銘柄という。
・株主優待を活用することで生活費はほとんど現金を使わない。また、将棋棋士としての戦術思考を投資の世界でも十分に発揮し、人並み以上の優れた記憶力で、手元に届いた数多くの商品券の使用期限を全て頭の中で把握している。
・なお、将棋棋士としても投資家としてもテレビ番組に出演しており、テレビCMにも出演している。
・タカラトミー「大車輪てつぼうくん」(2014年)
・「ヤマハミュージックジャパン“クラビノーバ”CVP-700シリーズ」『音楽を、もう一度。』(2015年)

《三浦弘行》
・将棋ソフト不正使用疑惑騒動の発端は、三浦の対局中の離席(特に久保利明との対局で30分以上離席したと久保利明が勘違いした事)や指し手の傾向(特に渡辺明との対局で三浦が局後の感想戦で示したコンピュータ将棋風の指し手)などを怪しんだ一部の棋士の告発によって、三浦がスマートフォンを利用してコンピュータ将棋ソフトを対局中に不正使用したのではないかとの嫌疑がかけられたことである。
・一部の棋士による疑惑の告発、日本将棋連盟による三浦の出場停止処分とそれに伴う竜王戦挑戦者変更、第三者委員会の調査による疑惑の解消と三浦の名誉回復、連盟理事5名の引責辞任・解任、これを契機とするルール改定が騒動の主たる内容である。
・日本将棋連盟の聞き取り調査に対して三浦は疑惑を否定したものの、調査のために休場することとなり、最終的には休場届の未提出を理由として連盟から出場停止処分が下された。三浦は第29期竜王戦挑戦者に決定していたが、出場停止に伴い挑戦者が丸山忠久に交代するという異例の事態となった。

陰陽師は小さくうなずき、無言で紙にペンを走らせる。

合計4人分の属性表を見比べた青年は、何度もうなずいてから口を開く。

『このお二人は、転生回数が第二期で十の位が“4”の“小山”の時期に相当する魂3:武士ですので、先ほどの二人との大きな違いは、転生回数にありそうですね』

「どうやらそのようじゃな」

青年は三浦弘行の属性表の一部に視線を向け、再び口を開く。

『それにしても、実際の真偽はさておき、不正疑惑騒動が起きてしまった要因の一つに、三浦弘行の人運の“6”という低さが関係している可能性は考えられるのでしょうか』

そう言い、青年は“6”が持つ傾向について、紙に書き出していく。

6:「不幸(そのもの)」「不幸な選択」「不実」「攻撃性」「サド的気質」

「一つの出来事には様々は要因が複雑に絡み合って生じていることから、その一点のみで判断することはできぬが、その可能性も否定できないじゃろうな」

陰陽師の言葉に対し、青年はうなずいた後、口を開く。

『最後に、“二歩の人”として有名な橋本崇載を鑑定していただけますでしょうか』

「よかろう。少し待ちなさい」

そう言い、陰陽師は鑑定結果を書き足していく。

新たな属性表を眺めた青年は、首をかしげながら口を開く。

『彼も転生回数が290回代ですので、藤井聡太や羽生善治のような名人になれる素質はあったように思われますが、彼の転生回数の一の位の数字が“1”である一方、名人と呼ばれる二人の転生回数の一の位は“4”ですので、この違いも関係していると考えられるのでしょうか』

「人間は多面体であるため、転生回数に限らず、属性表の一部のみを見て判断してはならぬが、少なくとも、転生回数に限って言えば、そのように考えることもできるじゃろうな。して、橋本崇載の戦績や略歴はいかほどなのじゃ?」

青年は再びスマートフォンを操作し、口を開く。

《橋本崇載》
・1994年9月奨励会試験では、2位で入会。試験対局の成績は7勝2敗だったが、その2敗はいずれも反則負けだった。
・第24回(1998年後期)より三段リーグ入り。参加2期目の第25回では、暫定2位の成績(12勝4敗)で最終日を迎えたが、2連敗を喫し6位に終わった。
・2004年度のNHK杯テレビ将棋トーナメントに出場した際、金髪のパンチパーマという髪型に、紫色のワイシャツを着用しており、その奇抜な出で立ちが話題となった。そのトーナメントを勝ち進み迎えた羽生善治戦(2005年1月放送)におけるテレビ視聴率は、通常のそれと比べて3倍になったといわれている。
・2008年度の第49期王位戦でも予選から挑戦者決定リーグ入りし、タイトルホルダーの渡辺明竜王、A級在籍棋士の丸山忠久他を破り最上位者となり、挑戦者決定戦に出場したが羽生善治に敗れ初のタイトル挑戦には至らなかった。
・第34期棋王戦では予選を勝ち抜き本戦に出場。そこでも当時王位のタイトルを保持していた深浦康市に勝利するなど快進撃を続け、準決勝に進出したが、タイトル挑戦には至らなかった。
・2009年度、第50期王位戦挑戦者決定リーグでは、タイトルホルダーの久保利明棋王、A級在籍棋士の佐藤康光、三浦弘行、井上慶太を破り最上位者となり、2年連続挑戦者決定戦に進出したが木村一基に敗れ、またも初のタイトル挑戦には至らなかった。
・シード権を獲得して臨んだ第35期棋王戦では、2年連続で準決勝に進出。しかし準決勝でも敗者復活戦1回戦でも敗れ、またしてもタイトル挑戦には至らなかった。
・2014年度、第64回NHK杯戦でベスト4進出するも、準決勝で二歩の反則手を指して敗退した。“二歩の人“として話題になる。
・タイトル挑戦・棋戦優勝・将棋大勝受賞歴がないのに、順位戦A級に昇給したのは、彼が史上2人目である。

「なるほど」

青年は再び属性表を眺めた後、口を開く。

『彼には、血脈先祖の霊障と天命運に“2:仕事”の相がかかっていますが、彼の戦績が転生回数に見合わない要因の一部になっていると考えられるのでしょうか?』

そう言い、青年は“霊障”について、紙に書き足していく。

・霊脈先祖の霊障:今世の宿題に対して逆接な“重し”、すなわち、人生の方向性が今世の宿題と逆方向に働く
・血脈先祖の霊障:今世の宿題に対して順接、すなわち“無用な重し”となって顕在化する

陰陽師は小さくうなずいた後、口を開く。

「少なからず、“2:仕事”の相は関係している可能性が考えられよう」

青年は視線を落として小さくため息をつき、口を開く。

『“唯物論者”である彼には霊脈先祖の霊障がかかっていないことから、棋士の道に進むことは、今世の彼の課題から大きく外れているとは限らないものの、棋士という狭き門をクリアできたのに実力を発揮できないのは、個人的に残念に感じます』

「ちなみに、今の彼はどうしておるのじゃ?」

『ウェブ上の情報を見る限り、今は棋士を引退し、YouTuberになっているようです』

「なるほど」

『彼には霊障がかかったままですので、YouTuberに転身しても、本来の実力が発揮されないかもしれません。そう考えますと、彼と何かしらのご縁があって、神事を申し込んでいただき、霊障を解消して活躍していただきたいと願わずにはいられません』

「その機会があればいいがのお」

陰陽師の言葉に対し、青年は首肯した後、口を開く。

『以上で僕が気になる棋士は終わりですが、属性表における棋士の共通点は、いくつかあるようですね』

五人の属性表を見比べた後、青年は口を開いた。

・2−3武士
・基本的気質O Sと具体的性格ソフトの数字が共に“7(1)”
・欄外の枝番が“1”
・全体運が9
・ビジネス運が9
・同一指向性が85以上
・トンチンカン度が40以下
・頭の回転の早さが80以上
・物事の本質を見極める力が80以上
・自己顕示欲の数字が“2(5)”
・人運が7以下
・「自己中」度が70以上

『記録保持者の二人と他の三人における、転生回数以外の違いとしては、頭1/2とインターフェイスがあります。前者たちは頭1―3でインターフェイスの一桁目の数字が“3”である一方、後者たちは、頭1−7や頭2、インターフェイスの一桁目の数字が“6〜7”です』

陰陽師が無言でうなずいて続きを促しているのを確認し、青年は言葉を続ける。

『つまり、あえて極端な言い方をしてしまうと、名人と呼ばれる強さを持つ人物には、性格や気質が温和だったり、落ち着いている傾向があるのでしょうか?』

「対局中に頭に血が上ったり、気分にムラがあっては重要な局面で冷静な判断ができないという可能性を考慮すれば、その傾向があると考えられるじゃろうな」

『なるほど。ちなみにですが、駒を用いるという意味では将棋と似ている、チェスの世界ランキング一位の人物、マグヌス・カールセンの鑑定もお願いできますでしょうか?』

「もちろんじゃとも。どんな人物かの?」

青年は口頭で、マグヌスのチェス歴を伝える。

《マグヌス・カールセン》
1999年にノルウェーの国内選手権に8歳7ヶ月で出場。
2004年に当時史上3番目の若さである13歳4カ月でグランドマスターになった。
2010年1月に初めて世界ランキング1位になった。(史上最年少、19歳32日)
2013年11月22日、世界チェス選手権で世界王者となる。なお22歳11か月での王者はガルリ・カスパロフ(22歳6か月)に次ぐ史上第2位の若さであった。
2014年5月のレーティングでは歴代最高記録となる2882をマークした。2019年8月にも2882をマークしている。

陰陽師は紙に鑑定結果を書き足していく。

全員の属性表を見比べた後、青年はやや目を見開きながら、口を開く。

『彼もチェスにおいて、世界ランキング1位という最年少記録を持つものの、転生回数は290回代ではないのですね』

そう言い、青年は棋士たちと彼の属性表の相違点を書き連ねていく。

・物事の本質を見極める力が40と低い
・トンチンカン度が85と高い
・同一指向性が60と低め
・大局的見地が60と低め

『将棋もチェスも頭脳戦の極地のように思われますので、これだけ違いがあることが意外に感じますが、チェスでは“取った相手の駒を再利用できない”という、将棋とのルールの違いが関係している可能性が考えられるのでしょうか?』

「その可能性はじゅうぶんに考えられるじゃろうな」

『やはり、そうでしたか。ちなみに、将棋とチェスでは局面の数が異なると言われています』

そう言い、青年はそれぞれのゲーム中に現れる局面の数を紙に書き出していく。

オセロ:10の60乗
チェス:10の120乗
将棋:10の226乗
囲碁:10の360乗

『将棋よりもチェスの方が局面の数が少ないという点に限って考えれば、チェスにおいては、マグヌス・カールセンの属性が適している可能性は考えられるのでしょうか』

「そのように考えることもできよう」

『ちなみに、将棋界にはチェスファンが多く、羽生善治は国内トッププレイヤーとして活躍しているようで、2022年には藤井聡太もチェスの大会に参加する予定です。実際、彼らはチェスでも世界ランキングの上位に入れる素質はあるのでしょうか?』

青年の問いに対し、陰陽師はそれぞれの適性(言い換えれば強さ)を紙に書き足していく。

《チェスの適性(言い換えれば強さ)》
マグヌス:100
藤井聡太:90
羽生善治:90

《将棋の適性(言い換えれば強さ)》
藤井聡太:100
羽生善治:95
マグヌス:60


鑑定結果を見た青年は、納得顔でうなずきながら、口を開く。

『“大は小を兼ねる”ではありませんが、やはり将棋の名人であるお二人もチェスの適性が高いようですね。その一方、マグヌス・カールセンはさすがの100点ではありますが、将棋の強さがだいぶ下がっていますので、彼の魂の属性と各スコアはチェス向けだということがわかります』

「どうやらそのようじゃな」

陰陽師の言葉に対し、青年はうなずいた後、口を開く。

『ところで、棋士たちとマグヌス・カールセンに共通している項目の中で、次の二つが気になりましたが、どのような理由が考えられるのでしょうか?』

そう言い、青年は紙に書かれた共通点の二つを丸で囲む。

・人運が7以下
・「自己中」度が70以上

「その二つに関して説明すると、スポーツを含め、対戦型の勝負事をすることが今世の課題に含まれている人物は人運が低く、“自己中”度のスコアが高い傾向がある」

『なるほど。“長所と短所は表裏一体”ではありませんが、一般的には望ましくないと思われるそれらのスコアが、勝負事においては活かされることもあると考えられるということでしょうか?』

青年の問いに対し、陰陽師はうなずき、口を開く。

「その通りじゃ。ただし、あくまで鑑定結果は、各々が転生前に自らに課してきた“今世の課題”を果たすためにベストな数字である。ゆえに、それぞれの数字を単独で注目して人物評価をすることは禁物じゃ。そのことをじゅうぶんに理解した上で己の傾向をじゅうぶんに理解し、目の前の出来事に真摯に取り組み、日々、魂磨きに励むことが肝要なのじゃよ」

そう言い、陰陽師は壁時計に視線を向ける。
それに気づいた青年も、スマートフォンで時間を確認する。

『もうこんな時間でしたか。今日も遅くまでありがとうございます』

そう言い、青年は席を立って深々と頭を下げた。

「今日もご苦労じゃったな。気をつけて帰るのじゃぞ」

陰陽師はいつもの笑みで手を振り、青年を見送った。



帰路の途中、青年は藤井聡太と羽生善治とマグヌス・カールセンの属性表を見比べていた。


日本では、どんな面においても満点に近い方が望ましい、という認識があるように思われる。

言いかえれば、優秀な人物というのは、一部の例外をのぞき、全てのスコアが満点に近い人物なのだろう。

そう考えると、マグヌス・カールセンよりも藤井聡太と羽生善治の方がこの世の基準でトータル的に考えれば優秀なのだろうが、チェスの適性(言い換えれば強さ)はマグヌス・カールセンの方が高い。

つまり、優秀な人物を目指したり、優秀な人物ばかりを求めるのではなく、結局は各々が自分の傾向や適性を把握し、今世の課題を果たせる環境に身をおくこと、すなわち”適材適所”が重要なのかもしれない。

過去の自分のように、己の傾向や適性よりも世間が求める優秀さを目指すあまり、疲弊してしまっている人は少なくないと思われる。

そうした人々が神事を済ませてパフォーマンスが100%になり、自身の魂の属性をよく理解した上で、今世の課題を果たす方向に人生を舵取りし、悔いのない日々を過ごしてもらいたい。

そのためにも、”天職”ランキングと”運気を下げずにもっとも稼げる職業”ランキングが自分にとって共に一位である、“啓蒙活動”に尽力しよう。


そう、青年は思議したのだった。


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