母の日に寄せて

息子たちへ
カーネーションは要らないよ
可愛いスカートも履かないかも
美味しいドーナツなら食べたいかな
ほんの少し話をさせてね

あなたたちの知らない
ママのおばあちゃんのお母さんは
高橋のおばあちゃんという
下の名前は覚えてないの
青森出身の優しいおばあちゃんだったと
ママのお母さんがよく話してた

あなたたちが時々聞く
あなたたちのじぃじのお母さんは
キチヱさんという
明治生まれのおばあちゃん
じぃじを含めて子どもは八人
ママは１３人いるうち下から二番めの孫で
名前呼ぶときは上から順番に思い出す
お肉もビールも大好きな
いつもみんなの真ん中で笑っている人だったよ

あなたたちがたまに聞く
あなたたちのばぁばのお母さんは
イヨさんという
実はお兄ちゃんは会ったことがある
ママのお腹の中でね
しわしわでごつごつだけど
柔らかくてあったかい手をしていた
やるっきゃないねが合言葉で
いつもママを勇気づけてくれた人だった

あなたたちが大好きな
あなたたちのパパのお母さんは
遠いところからお嫁さんに来た
いつも家族のことばかり気にかけて
果物だってお魚だって
自分は台所ではしっこだけ食べて
お腹いっぱいだからあんたたち食べって言う
ママは逆立ちしてもなれない
まっすぐで働き者のお母さん

あなたたちが大好きな
あなたたちのママのお母さんは
あなたたちが知ってるように
よく笑うしよく怒るしよく歌う
よくうっかりするところは
あなたたちのママとおんなじかも
保母さんと呼ばれてたお仕事は天職で
本当はとっても真面目で努力家
ママのほうが得意なのはピアノだけだと今も思う

あなたたちのお母さんは
あなたたちがよく知っている
そうその人です
そこに開かずの引き出しをニ，三段
そんな感じで後はお任せします

息子たちへ
高価なものなんて要らない
もっと言えばものなんてなくていい
あなたたちが笑っていたら
あなたたちが幸せだったら
それだけでいいのだと
ママのお母さんも
そのまたお母さんも
さらにそのお母さんも
そのまた前のお母さんも
きっと思っていたはずと思うよ

そんなこと言わずに
欲しいもの教えてよと思ってたけど
あなたたちのお母さんも
今同じことを思っているから
あなたたちに会えたから
あなたたちが笑っていたら
それでいいのだ


ほんのちょっと欲を言うなら
大きくなって離れていっても
たまに思い出して
メッセージの一つでもくれたなら
それは五月のカーネーションより嬉しい贈り物になる

今日は一緒にドーナツを食べよう
あなたたちのお父さんも一緒にね

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