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会社の休憩スペースが、光で満たされました。


今回つくった「大広間」

 ダイナンには、従業員に休憩をとってもらうためのスペースが何箇所かあります。 その中でも一番大きな場所を、大々的にリニューアルしました。
その名はなんと「大広間」
デザインを手がけたGRAPH(グラフ)のアートディレクター、吉本さん(以下、吉本)と建築家、G ARCHITECTS STUDIOの田中さん(以下、田中)をお招きし、お話を伺いました。

田中亮平:
1981年 岡山生まれ。2006年 東京都立大学大学院修了、2006-2013年 隈研吾建築都市設計事務所勤務。
2013年 G ARCHITECTS STUDIO設立。
建築設計をはじめインテリアデザインやインスタレーションなども手掛け、特に独自に建材のマテリアル開発を行い作品に応用する等、規模やジャンルの垣根のない取組みが特徴。
現在、東京都立大学非常勤講師、日本大学非常勤講師。


お客さんには悪いですけど、社員が優先ということで

ダイナンnote編集部(以下、編) 
 本日は、休憩スペースのリニューアルについて、みなさまにお話を伺っていきたいと思います!

GRAPH榎本さん(以下、榎本) 
 うちの吉本はオンラインでの参加ですが、よろしくお願いします。まず休憩室のリフォームのきっかけとしては、ウェブサイトやユニフォームのリニューアルが進んでいく中で、お客さんが来る会議室をキレイにしませんか?という提案をしたんですよね。でも、但馬さんから「会議室より、従業員さんが休憩するスペースをちゃんとキレイにしたい」ってお話があって。

GRAPH榎本さんと吉本さん(PC画面)

ダイナン但馬(以下、但馬) はい。お客さんには悪いですけど、実(じつ)を取る、というのかな。お客さんより社員が優先ということで。

 実をとる?
但馬 はい。毎日作業をしてその間にごはんを食べて、休憩をする場所ですし。場所としても一番大きいので、先にやっておかないと、と。
榎本 従業員の方を優先されるところが、ダイナンさんっぽくていいな〜って思いましたね。

一番大きな場所を、自然と集まれる場所に

 今回、ダイナンさんの休憩スペースの設計は、田中さんがいいんじゃないか?と決めた理由を教えていただけます?
吉本 はいはい、田中さんに決めた理由ですね。今回の方向性として、高級な素材を使ってピカピカにするというよりは、ある程度、躯体やあるものを活かしつつ、「最低限で最大値を出す」みたいな内容だったんですね。
うち(GRAPH)の事務所も田中さんにお願いしてるんですけど、高い素材じゃなくてもすごくよく仕上げていただいていて。

GRAPHさん 事務所 ©️Daisuke Shima

そういう点も含め、ダイナンさんの柔らかさを引き出してくれるんじゃないかな、ってお願いすることにしました。
 ありがとうございます。田中さん、設計の大先生!みたいな感じではなく、すごくお話ししやすい方ですもんね。では、どんな風に進められたんですか?
榎本 最初に現場を見にこられたのは23年の6月でしたね。吉本と一緒に。

当初の「大広間」の状態

田中 はい。この一番大きなスペース、旧「大工室」が第一候補に上がっていたと思うんですけれど、他の休憩室も拝見して。 加えて、みなさんがどういう風にお仕事をされていて、各部屋がどういう風に使われていて、どういうことが課題なのか、などをお聞きしましたね。で、吉本さんがお話しされていたようにダイナンさんの持つ柔らかい空気感をどう空間として定着させるか、ということを考えましたね。もしかしたら他のスペースもありうるかな、とちょっと思ってたんですけど。

榎本 スナックのような「ラウンジスペース」などですね。

ラウンジらしいポーズ、を社長にとってもらいました笑。こんな場所もあるんです!

田中 そうですね。いずれも面白そうではあったんですけれど、求められていることを考えるとやはりここなのかな。となりましたね。ここでどういうことができるのかということを、本気でGRAPHさんと考え、提案していきました。
吉本 休憩スペースがいくつかに分かれていて、社員さんの交流が取れていないよね、という話も出てましたね。班ごとにバラバラに休憩をとっていたり。だから、できるだけ広くて、たくさんの人が一堂にかいせる場が欲しいよね、必要だよね、って経緯があったと記憶してます。
但馬 補足すると、コロナ禍ということもあって、分散して食べよう、ってなってたんですよ。それが定着してしまっていたので、やっぱりここで集まれたらいいなと。
田中 「集まって!」というよりは、自然と集まれる場所にしたかったというのはありますね。

思い思いを受け止める、包容力のある空間

榎本 そこでご提案いただいたのがこのクリーム色の色調でまとめられたイメージでしたね。日付を見ると、去年23年の7月ですね。

イメージパース 1
イメージパース 2

 ほぼ1ヶ月で!
田中 はい。先ほど、但馬さんから「社員のため」というお話がありましたけれども、どんな空間にしたらいいかを考えた時、集まれる広い空間、というのも大切な要素ではあったんですけれど、とにかく明るい空間にしたかったんです。 他のスペースだと窓のない部屋もあって、そこでテレビに向かって、という。
 うんうん。
田中 もちろんずっと作業をされているので、テレビを見るのもいいと思うんですけど、なんというか大勢で集まった上で、思い思いに過ごせるような…。「包容力のある空間」っていうんですかね。そんな感じの場所が作れたらなと思っていました。
 入った途端、すごく明るくて柔らかい印象を受けましたもんね。
田中 そう、グラフさんからいただいたこのダイナンさんの会社案内。水色も印象的だったんですけれど、どちらかというとこの背景。

ダイナン会社案内

榎本 ダイナンホワイト、と呼んでいますね。
田中 あ、ダイナンホワイト。ベージュというか、肌色といいますか、この色がすごく印象的だった。で、聞いたら、生成りのキャンバスをイメージされた色だと。なので、ブランディングで意識された「布や糸や縫製に紐づく色合い」で空間が満たされて、明るくなってる状態を作りたいと思ったんですね。
榎本 ありがとうございます。吉本さん、補足ありますか?
吉本 はい。徹底的にベージュにしちゃいましょう、ってお話しした記憶がありますね。田中さんからいただいたプランでいいなと思ったのが、当時「ステーション」と呼んでいたキッチンのところ。 みなさん、「みかん食べな」とか「お菓子食べな」とか、差し入れの習慣があるって聞いてたんで、集まってコミュニケーションが 取れるような場所があるといいよねっていうのを、そういうコの字のキッチン仕立てていただいたっていう感じですよね。うん、それが大きなポイントじゃないかなと。
田中 そうですね。水まわりとかゴミステーションとか、機能的なものもあるんですけど、 食事をとるところの「へそ」というか。空間の「へそ」として、これを主役にまずして、その周りにいろんな場所を作ってくみたいな、そういう感じで設計を組み立てていきました。

インタビューの日もカウンターにお裾分けのお惣菜タッパーがありました

榎本 あとはいろんな過ごし方ができるように、ソファー席だったり、小上がりやカウンターでは1人でご飯食べられるようにしたり。そういうのもポイントにしてましたよね。
田中 ですね。みなさん作業に向かい合ってる時間が長いので、食事を取るっていう時間がを楽しみにされてる人もいるでしょうし、自分の好きなものと向き合う時間として過ごす方もいらっしゃるでしょうし。 そういう行為をすべて受け入れられる場所であれたらと思いました。
吉本 小上がりの方からテーブル席の方まで、カウンターがズバッと串を刺すような感じで通ってるのもいいですよね。視覚的にも機能的にも空間をつなげている。田中さんの設計の、グッドなポイントだなって思いましたね。

スペースの名前に込められた思い

 ちなみに、このスペースの名前を「大広間」としたのには、どんな経緯があったんですかね?
榎本 はい。あの空間がほぼ完成した時に「あ、名前どうしようか」ってなって、ダイナンさんの中で、一度募集いただいたんですよね。で、色々と候補を見ていく中で、最終的に吉本が「大広間がいいんじゃないか」って決まりましたね。せっかくなんでじゃあ、吉本さんから説明いただいて…。

吉本 そうですね。みなさんから「チルカフェ」とか「ひまわり」とか、色々考えてくださっていて。でも、名前を決めた瞬間から、名前が機能を縛ってしまうような気がしたんですね。
なんか、もっとここって多目的に使う場所だろうし、 季節に応じての使い方も変わるでしょうし…。できるだけ、拡張性の高いイメージというか、そういうものがいいなって思って「大広間」にしたんですよね。意味が広いし、多目的だし。格好つけていないのもダイナンさんらしいなぁ、って思いましたね。
田中 なるほどなるほど。

一緒に作り出した光

榎本 但馬さんは、出来上がって初めてご覧になった時どう思われました?
但馬 はい。ここを選んだのは窓も多いし、比較的大人数が集まれるので、社屋の中では一番ベストな場所、明るくなる場所かなと思ってて。で、出来上がった感想としては…。そうだな。本当に明るくて。明るくて…どうしよう、みたいな。

一同 (笑)
但馬 というのは冗談ですけど、最初から視覚的に分かりやすい完成イメージを示していただいていたんで、予想以上にいいものができたかなっていう風に思ってます。はい。うん。
田中 暗い入り口から窓のない廊下を通ってきて、ドア開けたらすごく明るい空間が開けていて、通された時に光を感じることができる。それが特徴になりましたね。
しかもお昼を食べに来た時、一番明るいっていう状態を作ることができたので、場所選びも含め良かったなと思います。
榎本 照明器具の量とかもかなり検討しましたもんね。少ないかなと思ったけど、結局窓からの光がすごく明るくてきれいで。
田中 そうですね。完成イメージだとちょっと光が入りすぎてて、直射日光みたいになってたんですけどレースのカーテンにしたおかげで拡散光に変わったんで、光に満たされた空間にできたなと。

吉本 (画面の向こうから)気持ち良さそうですね〜。
榎本 エアコンでカーテンが動いてるのも、すごくいいんですよね。
田中 いいんですよ。すごい自然に見えるんです。なんか、ちょっと窓開けてんのかな?ぐらい。
榎本 カーテンはダイナンさんに縫ってもらったんですよね。かなり薄い生地でしたが、縫いづらくなかったですか?
但馬 難しかったですよ。シワが寄りづらい見え方を考えて、継ぎ目も目立たないようにして。継ぎ目は線にしか見えないですね。
田中 (カーテンを手に取りながら)普通こう、返しとかがあって、いわゆるカーテンってもっと野暮ったくなっちゃうんですよね。

但馬 そこも工夫して。もう、ほぼ一枚布ですね。
榎本 このあたりも、ダイナンさんの縫製のなせる技ですね。
 (ソファーの布を確認しながら)これも…。
榎本 そうですね。このソファーは(ユニフォームを作ってもらった)村田さんに生地を選んでいただいたんですよね。 ミナペルホネンの生地を作ったりしてる生地屋さんのものを、ダイナンさんに縫ってもらっていますね。
田中 手ざわりいいですよね。めっちゃ気持ちいい。

こだわりの織物を作る近藤毛織工場の生地を使用したソファーカバー

ものづくりの醍醐味

吉本 ちなみに田中さん。へそであるカウンターの天板と側面、人工大理石とメラミン(化粧板)、 色を変えるか同色にしようかって話してて同色にしましたけど、実際どうですか?
田中 すごくいいですよ。透明感と統一感があって、へそにふさわしいです。

吉本 うん。なんか、いい意味で主張してないですよね。その、メラミンだったり、素材の方向性は決めた時、いろんな会社から調達して見繕ってくださってるなって思ったんですけど、普段からそうやって何社も?
田中 はい、もちろんやります。でも、ベージュがなかなか難しかった。吉本さんが厳しくて。
榎本 毎回打ち合わせの時に、すごい量のサンプルを持って事務所に来ていただいて。

田中  コストとのバランスっていうのはやっぱり大変ですね。初めはどうしてもやりたいこと、機能的にこうしたいとか、この素材を選びたいとか、希望がてんこ盛りになってきちゃうんですね。 けれど、最終的には色々そぎ落としながら、素材も施工法も合理的にしながら、これを選んだよっていうのが大切だと思っていて。 選び抜いた中から、ちゃんとこれがいいと思いますってお伝えするという。
吉本 ダイナンブルーにとても近い照明用のコードも、田中さんが見つけてくださったんですよね。

田中 なかなか吉本さんオッケーが出なかったから、探して、探し当てちゃいましたよ。
榎本 (ユニフォームを着た従業員さんの撮影から戻ってきた)村田さーん、ちょっとだけいいですか?大広間、どうでしたか?

村田 あ、明るくて光がきれいですね。柔らかい光が全体的に回ってて。あと…空間自体にダイナンブルーは入れなかったんですか?
榎本 ライトのケーブルとか、ポイントとしてだけ、ってことですよね。
吉本 はい、ダイナンさんのお仕事って、縁の下の力持ちだとって思っていて。名刺とかのデザインもそうなんですけど、ロゴも、基本小さくポジションされて機能するように設計していて。控えめなんだけど芯が強くて、ボールド(太い)なんだけど柔らかさがある、みたいな。なので、内装に関してもブルーの分量はできるだけさりげなく、だけど印象に残る。そういうバランスを心がけましたね。

「大広間」らしく、自由に

榎本 この空間はお花見の時に、お披露目されたんですよね?
但馬 そうですね。
榎本 みなさんのリアクションはどうでしたか?
但馬 その時、一生懸命に火起こししててですね、見てないんです。

一同 (笑)
榎本 さっき、従業員の方が休憩されているのを見て、人が入って、賑やかになって、空間としてすごくいいなって。

田中 エプロンを着た方がそれぞれ楽しそうにされていて。お好みの場所があるんだと思うんですけれど、あ「この風景か」と。人がいないときれいすぎて。
榎本 ツンとしている、というか殺風景な印象も受けるんですけれど、使われるとすごくいい。なんだろう、空間が主役っていうよりも、従業員の方がすごく際立つというか。

編集 これからは、どんな活用をしていく予定ですか?
但馬 そうですね…例えば忘年会とかでもとか、お店行かずとも、やろうと思えばできちゃいますね。
田中 いいですね。使っていただきたいですね。
榎本 直近で予定されているイベントはありますか?
但馬 来週か来週、外国人実習生の研修が終わって実務に入るので、全体が揃うんで、プチですけど、お昼に歓迎会をやろうかなと。昼じゃないとみんな揃わないので。
吉本 ちなみに但馬さん、外部の方ってこの空間に入られましたか?
但馬 入りましたね。皆さん「すごい」っておっしゃりますし、羨ましいとも言っていただけます。いいな、うちの会社にもあったらいいなっていう風におっしゃってますね。
吉本 これはもう我々の力じゃなくて、確実に但馬さんの決断によるものだなと思いましたし、我々が関わらせていただいてる醍醐味は、そこにあると思います。ちゃんと利益に還元していただきたいです。
 最初におっしゃっていた「社員の満足優先で」という空間になりそうですかね?
但馬 そうですね。もっといろんな使い方をしてもらえたらいいですね。お昼はもちろん、イベントでも、ミーティングでもいいし。これから入ってくる人にとっても、いいアピールポイントになればいいですね。
編集 夜はまた、別の雰囲気を見せてくれそうですね。

但馬 はい。お酒も出したり、リラックスした感じで。全員入ると椅子が足りないので、この配置で座らなくてもいいと思うんですよね。こう、ばらけて、カウンターの中に立ったり、自由な使われ方を、自由な発想でしてほしいです。
榎本 じゃあ、まずはダイナンナイトですね。
一同 ダイナンナイト(笑)。

編 次回更新は、7月18日頃の予定です。リニューアルしたユニフォームについて、デザイナーの村田さんを交え、生地の話からデザインの話まで、細かく伺っていきたいと思います。お楽しみに!

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