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アメリカ大統領選挙, ワシントンへ John Mellencamp "To Washington" (拙訳)

というようなタイトルにしましたが、今日の投稿の本題はあくまでアメリカ合州国のロック歌手 John Mellencamp が 2003年6月にリリースした "Trouble No More" の12曲目、アルバムのラストを飾る "To Washington" という歌の歌詞の和訳です。

とはいえ、切っ掛けがあります。今日この歌を思い出したのにはワケがあります。次期アメリカ大統領の選挙が今年11月に迫ってきましたが、今週月曜日、2月3日に、党の候補者選びの開幕戦となるアメリカ中西部アイオワ州での党員集会が行なわれました。アイオワ州では、候補者選びの為のアメリカ全体の代議員数の 1 % を決めるに過ぎないということですが、しかし、これまで緒戦を制した候補が勢いづいてそのまま勝ち残っていくパターンが殆どだったということで、現職トランプで決まりと言っていい共和党はともかくとして、政権奪還を目指す民主党のアイオワ党員集会については、アメリカ国内だけでなく、日本を含む世界の注目が集まっていました。

ところが、既に報道もされていますが、投票結果集計用のアプリに不具合が起き、党全体としても盛り上がっていかなければならないはずの民主党として、結果が当日中どころか翌日になっても発表できないという、大失態を世界に見せるという結果になっています。

日本とは時差15時間のアイオワ州、現地でも党員集会から 3日目に入った2月6日朝現在、いまだ最終結果が出ていません。今から数時間ほど前の時点でのネット上のニューヨーク・タイムズの記事によれば、97%集計というあと僅かのところまで辿り着いた時点で、伏兵ピート・ブティジェッジが 26.2%, 直前の世論調査でアイオワ州内でトップの人気を誇っていたバーニー・サンダースが 26.1% という、集計上の大接戦が続いています。

このトラブルの原因となったとされるアプリを開発した会社は前回 2016年のヒラリー・クリントンのキャンペーンに一役買った会社であるとか、当のピート・ブティジェッジが問題のアプリの開発に出資していたとか、いろいろなことが取り沙汰され、しかもネット上では集計の際にバーニー・サンダースが不利になるようないろんな不手際もしくは悪意ある操作が為されたといった指摘も飛び交っていて、少なくとも対立する各候補の支持者の間では今後も尾を引きそうな厄介な様相を呈しています。

アイオワの党員集会直前の同州における世論調査では 3位につけていたピート・ブティジェッジですが、日本のメディア上では、1982年 1月生まれの38歳という若さや、自身がゲイであることを公表していることなどが、あらためて話題になっているようです。

若者の声を反映できたり、LGBTQ の人たちへの今もある差別・偏見などの解消に繋がっていくのであれば、それ自体は当然ながら良いことですが(少なくとも私はそう思います)、しかし一方で、その若さだけでなく、人口10万人ほどのアメリカにおいて小さな地方都市と言っていい中西部インディアナ州にあるサウスベンド市の市長出身で、アメリカの国政や外交経験がほぼ無いと言っていいピート・ブティジェッジがなぜ今回の民主党の大統領候補選に立候補できたのか、ダークホースとして注目されるほどにまで彼のキャンペーンが成功し続けたのか、それについても既にいろいろな指摘がなされています。

アメリカでは長年にわたり対イスラエル政策のロビー活動をするグループの大統領選への干渉、控えめに言ってもその影響がかなり大きいことは知られている通りですが、パレスチナ人との融和を目指すアメリカ国内のユダヤ人団体などが(例えば IfNotNow)、アメリカがイスラエルのみに一方的に肩入れし莫大な金額の援助を続けるなかでイスラエルが違法な占領政策を続けていることに関し、ピート・ブティジェッジが批判的な態度を示さないことを問題視していますが、その一方で、やはりアメリカの対イスラエル政策を批判するいくつかの団体が(例えば If Americans Knew)、イスラエル支持グループの億万長者から彼のキャンペーンへの多額の資金援助が行なわれていることなども指摘しており、国内の政治と国際政治双方の経験が乏しい彼がなぜ民主党の大統領候補選の上位数名の中に入るほどにまでなったのか、その背景に対する疑問を、早いうちから Facebook や Instagram などソーシャルメディア上で取り上げていました。

話がだいぶ逸れました(笑)。

とにかく、アメリカの民主党にとって非常に大事なはずの大統領候補選びが、その初っ端から、集計がうまく出来ないという、何ともお粗末なトラブルに見舞われているのです。

さて、ようやく本題に近づきました。

そこで思い出したのが、もはや今から 20年も前の話になってしまいますが、2000年の大統領選、それも今回のアイオワ州党員集会のような党の候補者選びの段階の話ではなく、共和党ジョージ・W・ブッシュと民主党アル・ゴアの間で争われたアメリカ大統領選本戦のことです。日本でもかなり報道されていたように記憶していますが、フロリダ州が大接戦となり、票の数え直し、さらには訴訟沙汰にまで発展した、アレです。

投稿の本題はあくまで John Mellencamp の "To Washington" 歌詞和訳です、と冒頭で書いていたのにも関わらず、今回のアメリカ大統領選に個人的にもかなり注目している自分として、前置きが矢鱈と長くなり過ぎました。

ここから一気に、歌とその歌詞の和訳のトピックの方に、移ることにします。

この曲は彼のオリジナルではなく、いわゆる Traditional, おそらくは作曲者は不明なのかもしれません、とにかく、アメリカで古くから伝わるフォーク・ソングのうちの一つなのですが、その曲に彼、John Mellencamp が、オリジナルの歌詞をつけたのです。

以下が、その歌のミュージック・ビデオですが、これがまた非常によく出来ています。

歌詞自体は非常にシンプルなので、和訳も決して困難でないレベルかと思いますが、拙訳とともに、歌詞をビデオの下に掲載しておきます。

おっと細部にこだわるところがある性分なもので、歌詞に関することながら、一点だけ、「解説」めいたことを先に書きます(歌詞の主題ではないのですが)。

私はこの歌も歌詞の内容も好きなのですが、一言ことわっておきますと、「8年間の平和と繁栄」というくだりには違和感があります。

今回のトランプの大統領弾劾訴追の前にやはり同じ「憂き目」に遭っていたビル・クリントン、その問題となったホワイトハウス研修生モニカ・ルインスキーとのホワイトハウス内での不倫スキャンダルの事態が進展していくその同時期に、アメリカからアフガニスタン、スーダンなどに対する爆撃が行なわれ、例えば後者スーダンにおいてはテロの温床の「兵器工場」 を爆撃したと主張したクリントン政権でしたが、後になって実はその工場は実際にはなんと医薬品アスピリンを製造していた工場だったことが判明し、当然ながら、スーダンの人々に深刻な被害を与えることになりました。

そんなクリントン政権の 8年間が「平和」だったと修飾することに関しては、率直に言って首を傾げざるを得ません。

まぁ、しかし、この歌の歌詞の主題はその時期に関してではなく、ジョージ・W・ブッシュと彼の政権が始めたイラク戦争の方にあるということは、歌詞をご覧になっていただければ一目瞭然ではあります。


(このビデオ、素晴らしいですよ)

歌詞 と 拙訳

Eight years of peace and prosperity
Scandal in the White House
An election is what we need
From coast-to-coast to Washington

8年間の平和と繁栄
ホワイトハウスのスキャンダル
そろそろ選挙が必要だ
全米津々浦々からワシントンまで

So America voted on a president
No one kept count
On how the election went
From Florida to Washington

それでアメリカは大統領を選んだ
だけど誰も数え続けなかったんだ
選挙の進め方を監視しなかったのさ
フロリダからワシントンまで

Goddamn, said one side
And the other said the same
Both looked pretty guilty
But no one took the blame
From coast-to-coast to Washington

くそっ、一方がそう言ったよ
そしてもう一方も同じことを言った
どっちもひどく後ろめたいように見えたね
だけど誰も責めを負わなかったのさ
全米津々浦々からワシントンまで

So a new man in the White House
With a familiar name
Said he had some fresh ideas
But it's worse now since he came
From Texas to Washington

そこでホワイトハウスの新人さんが
馴染みのある名前のヤツが
新鮮なアイディアを持ってるって言ったんだ
でも今 悪くなってんだよ、ヤツが来てからさ
テキサスからワシントンまで

And he wants to fight with many
And he says it's not for oil
He sent out the National Guard
To police the world
From Baghdad to Washington

何しろヤツは大勢とたたかいたいんだと
ヤツはそれを石油のためじゃないと言う
ヤツは国家警備隊を送り出し
世界の警察官たろうとしたってわけさ
バグダッドからワシントンまで

What is the thought process
To take a humans life
What would be the reason
To think that this is right
From heaven to Washington
From Jesus Christ to Washington

その思考プロセスの正体は何なんだ
人の命を奪うための思考プロセスなんて
いったい何が理由になり得るんだ
これが正しいと考える理由なんてあるのかい
天国からワシントンへ
ジーザス・クライストからワシントンへ

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ネット上に掲載している拙訳の URL http://dailyrock.konjiki.jp/utatowa.html (スマートフォンなどでは OS のヴァージョン次第で文字化けするかも。)

この歌の歌詞は、2004年 1月17日に訳しました。訳した日の日記です(同上)。 http://dailyrock.konjiki.jp/nikki33.html#to-usa 



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