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Paul Simon "America" (拙訳)

写真は Paul Simon の 1965年リリース、 Simon & Garfunkel 時代ではありますが、彼の事実上の 1枚目のソロ・アルバムといってよい "The Paul Simon Songbook" のカヴァー写真、"America" は 1968年リリースの Simon & Garfunkel の 4枚目のアルバム "Bookends" に収録されたもので、勿論このアルバムには収録されていません。ただ、"America" の歌詞の中に登場する Kathy がこの写真で Paul の右側に映っている女性、そういう理由で、この写真を使うことにしました。

"The Paul Simon Songbook" は当時一旦 Paul 自身の意向で回収され、後に今世紀に入ってから CD として再発されたという興味深い逸話を持つアルバムで、いつか note でこのアルバムそのものについて書きたいとも思っています。と書いて側と気がついたのですが、以前 Paul Simon の "Kathy's Song" の歌詞拙訳を載せた時、"The Paul Simon Songbook" や Kathy (Kathleen Chitty) のことをわりと書いていました(*2)。しかし、いつかもう少し踏み込んで、あらためて書くかもしれません。 

とにかく、今日は "America" の歌詞の和訳を載せます。この "America" と、Paul Simon の 3枚目のソロ・アルバム、Simon & Garfunkel 解散後では 2枚目のアルバムに当たる 1973年リリースの "There Goes Rhymin' Simon" に収録された "American Tune" は、トランプが大統領になって以来ますます混迷を深めるアメリカ合州国にあって、今年 2019年あるいは来年 2020年になっても、国歌 "The Star-Spangled Banner" とはまた別に National Anthem として相応しい 2曲なのではないかと思っています。おそらくは、今後もそう在り続けるでしょう。などとアメリカ市民でない私が言うのは些かお節介でしょうけれども。

この歌 "America" については、歌詞の中で表現されているような America 探しの「旅」の歌でもあり、また、わけのわからぬ期待と不安の中で将来をみつめる若者たちの自分探しの「旅」の歌でもあり、若き日の Paul Simon 自身の自分探しの「旅」の歌でもあると解釈しています。しかし、期待や不安を抱くことは、若者だけに許された特権ではないでしょう。この歌は、老いも若きも、姿の見えない未来に向かおうとする全ての人のための、自分探しの「旅」の歌でもある。そんなふうに私は受け取っています。そう捉えれば、この歌は必ずしも、アメリカ人に向けたメッセージに留まらず、今日と明日を生きようとする全ての人への応援歌だと思ってもいいのではないでしょうか。もちろん、そもそも Paul Simon 自身の意図したところが何処にあったのか、それは知る由もありません。しかし、全ての歌、もっと言えば、全ての表現作品は、鑑賞するものがそれを受け取った時、既に作者の意図からある程度離れていくものでもあるのだろうと私は思っています。

"America" は Simon & Garfunkel 時代のオリジナルも非常に好きなのですが、ここでは Paul Simon が 1974年にリリースしたライヴ・アルバム "Paul Simon in Concert: Live Rhymin'" の最後、12番目の曲として収録されている同曲の音源を使いたいと思います。歌い始める前の聴衆とのやりとりを聴くことができ、それが何とも魅力的なのです。

(audience) "Say a few words!!"

(Paul Simon) "Say a few words.. Well, let's hope that we're.. Let's hope that we, continue to live.."

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。英語歌詞・原詞は公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

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「僕達、恋人になって結婚しよう
 未来を一つにしてパートナーになろう
 お金なら何とかなるさ
 バッグに少し持ち合わせているんだ」

そして僕らは タバコを一箱と
ミセス・ワグナーのパイを買いました
それから歩き始めたのです
アメリカを探すために

「キャシー」と僕は言いました
僕らはピッツバーグでグレイハウンドに乗っていました
「ミシガンは僕には今では夢のようだよ
 前なら4日もかかったんだ
 サギノウからヒッチハイクをしたらね
 僕はアメリカを探しに来たんだ」

バスの中では二人で笑い合って
乗客の顔を見ながらゲームをしました
彼女がギャバジン・スーツの男は
実はスパイなのよと言うので
僕は言ったんです
「気をつけなよ 彼の蝶ネクタイは本当はカメラなんだ」

「タバコを投げてくれないか
 レインコートに1本残っているはずだから」
「私達、最後の1本を吸ってしまったのよ
 1時間も前にね」

だから僕は窓の外を眺めたんです
彼女は雑誌を読んでいました
外では大地の彼方を月が昇っているところでした

「キャシー、僕はわからなくなってしまったよ」
彼女が眠っているのは知っていました
「僕は空っぽで 苦しくて
 おまけにどうしてなのかもわからないんだ」

ニュージャージー・ターンパイクでは
走る車を数えたりしましたが
彼らもみんな アメリカを探しにやって来たんです
みんなアメリカを探しに来たんです
みんなアメリカを探しに来たんです

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*1 2001年夏に本を一冊買って html を独学して立ち上げ、以後全く仕様を変えていない旧態依然とした私のホームページ上に、この歌の拙訳を載せています。

http://dailyrock.konjiki.jp/utaamerica.html

*2 "Kathy's Song" 拙訳を載せた note 投稿

https://note.com/dailyrock/n/n0d410a250eb7

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