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女性は男性保護者の許可なく旅行することはできない 〜 ガザ地区をサウジアラビア化しかねないハマースのイスラム法廷の愚

1. イスラーム法(シャリーア)による「法治」のばかばかしさ

最初に一言書いておきたいことがある。ここで言う「旅行」とは今現在、「現実的には」殆どのケースにおいて、ガザ地区内における「小旅行」ということになる。というのは、パレスチナのガザ地区のイスラエルとのボーダーは長年、イスラエルによって不当に軍事封鎖されており、エジプト側のボーダーもたまにしか開かない。ガザ地区に住むパレスチナ人は、癌やその他の難病に罹って治療のために(イスラエルによる軍事封鎖政策やこれまでの度重なる爆撃によって設備の多くが機能不全に陥っているガザ地区内の病院では治療困難であるために)イスラエル領内、あるいは同じパレスチナの、しかしイスラエルの軍事占領下にあるヨルダン川西岸地区の病院に行く必要がある時ですら、イスラエルの許可がなかなか下りず、ガザ地区を長期にわたり出られれない、あるいは例えば治療・入院のために幼児・児童がガザ地区を出られることになってもその両親の同伴が認められないといった、そんな極めて非人道的な実態が、これまでイスラエルのメディアによってさえしばしば報告されている。

さて、筆者は長年パレスチナ/イスラエル問題に関心を寄せてきた、且つ歴史的経緯への理解を背景として当然の如くパレスチナ人の自由・人権・民族自決権等を支持してきた者の一人であって、言うまでもなくイスラエルによるパレスチナ占領政策やアパルトヘイトと見做されるべき(*1)パレスチナ人差別・人権弾圧政策に対して極めて批判的な者の一人だが、しかし今日のこの note 投稿でこうして取り上げるガザ地区のハマースに関わる件には、声を大にして言わざるを得ない。

つまり、それが民主主義的な制度のもとでその社会を構成する人々の意思によって決められたことであるのなら外部からは一定のレベルで尊重されるべきではあるものの(決められたことが少なくとも外部からは非「民主主義」的であると認識されるようなことであればまずは皮肉な結果としか言いようがないが)、しかし、ガザ地区のイスラーム(原理)主義組織ハマースが人々の意思と関係なく決めた今回の女性の人権を抑圧する裁定は吐き気がするほど酷いものであり、こんなものはパレスチナの解放、よく言うところの "Free Palestine" の旗に泥を塗るものであって、パレスチナ人の将来の自由や基本的人権の獲得、イスラエルによる占領からの解放のために何の役にも立たない。それどころか、害でしかない。

以下に置くリンクの先は、2021年2月15日付イギリス The Guardian の記事。

ヘッドは "Women need male guardian to travel, says Hamas court in Gaza Strip" (女性は旅行するのに男性保護者を必要とする, ガザ地区のハマースによる法廷曰く), リードは "Rollback in women’s rights could spark backlash as Palestinians plan elections later in the year" (女性の人権に係る後退はパレスチナが今年 選挙を計画している中で激しい反発を引き起こしている), 実際、こんなばかばかしい、21世紀に現れた「紀元7世紀」マインドの「法治」に対して強い反感、反発、抵抗が生まれること自体は至極健全、というか本来当たり前のことではあるが。

イスラエル政府やイスラエル「一辺倒」支持のロビイスト・グループによる圧力に屈してか、The Guardian は近頃 イスラエル批判について酷く(控えめに表現しても)抑制的であるようだし(*2, 3)、そもそも長年イスラエルに軍事的・政治的に制圧され続けるガザ地区やヨルダン川西岸地区(東エルサレムを含む)におけるパレスチナ人コミュニティ内部における社会問題・人権問題を扱う際には抑圧者・占領者側であるイスラエルへの批判の眼を併せ持つセンスが欠かせないと筆者は考えるので、この記事はその意味で十分なものとは思えない。

一方で、筆者はもともと 2007年以来ガザ地区内部を政治的に支配するハマースのイスラーム主義を伴う統治(と言ってもイスラエルとエジプト、とりわけ前者による厳しいボーダー管理やイスラエルによる軍事的制圧・爆撃などの制約下では何処までまともに「統治」できているのかは疑問だが)に対しては全く賛同しないし、パレスチナに対する占領・抑圧者側であるイスラエルに大きな責任があるとはいえ、ガザ地区に居住する一般パレスチナ人の多大なる犠牲を招く同地区へのイスラエルによる度重なる猛爆撃に不当な「口実」を与えるだけの毎度毎度イスラエルにさしたる被害も与えないハマースによる「小ロケット」攻撃戦略など(大きな被害を与えるのなら支持するなどと言っているのではない、念のため!)、微塵も支持しない。

以下、The Guardian の件の記事本文のとりあえず前段 6パラグラフだけ抜き出しおくと(記事全体はこの2倍程度のボリュームなので全文を読むこと自体はさして時間を要さない)、

A Hamas-run Islamic court in the Gaza Strip has ruled that women require the permission of a male guardian to travel, further restricting movement in and out of the territory that has been blockaded by Israel and Egypt since the militant group seized power.
The rollback in women’s rights could spark a backlash in Gaza at a time when the Palestinians plan to hold elections later this year. It could also solidify Hamas’s support among its conservative base at a time when it faces criticism over living conditions in the territory it has ruled since 2007.
The decision by the sharia judicial council, issued on Sunday, says an unmarried woman may not travel without the permission of her “guardian”, which would usually refer to her father or another older male relative. Permission would need to be registered at the court, but the man would not be required to accompany the woman on the trip.
The language of the ruling strongly implied that a married woman would not be able to travel without her husband’s approval.
The edict also said that a man could be prevented from travelling by his father or grandfather if it would cause “grave harm”. But the man would not need to seek prior permission, and the relative would have to file a lawsuit to prevent him from travelling.
The ruling resembles the so-called guardianship laws that long existed in ultra-conservative Saudi Arabia, where women were treated as minors requiring the permission of a husband, father or even a son to apply for a passport and travel abroad. The kingdom loosened those restrictions in 2019.

要するに、未婚女性だけでなく、結局は既婚の女性も夫の認めがない限り旅行してはいけないと。かつ、男も父親や祖父によって旅行を止められることがある(しかし女性の場合のように事前の承認を得ることが義務づけられるわけではない)。

こうしたことは「超保守」レベルのイスラーム神政国家であるサウジアラビアに長期にわたり存在してきたいわゆる "guardianship laws" (一般成人女性の日常生活をイスラーム的戒律で縛り付けるウルトラ保守主義の、認知症でも何でもない人を対象とした成年後見制度と言えば伝わるだろうか) を想起させるものがある。サウジアラビアのそれはごく最近、一昨年 2019年になって、女性も運転免許を取得してよいとか(!)、旅行の同伴の問題とか、一部は緩和されたのだが。

(The Guardian: February 15, 2021)

とにかく、ため息。続きは次章にて。

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本章の脚注

*1 以下、関連する数多くの筆者の過去の note 投稿(*4)から 2点。今やイスラエル国内最大の人権団体もイスラエルの統治形態を「アパルトヘイト」と認定しているが、因みにそんなイスラエルの「後見人」国家となり文字通りスポンサーとなり国連安保理でもイスラエルの為に自らの特権である拒否権を発動し続け、且つ共和党のトランプ政権から民主党のバイデン政権に移行しようがことイスラエルに対する偏向姿勢となると何のことはないしっかり継続させているのが、自称「民主主義」の国、その実、歴史的にイスラエルのような「アパルトヘイト」レジームだけでなく世界各地の多数の軍事政権や独裁国家を自らの国益のために支えてきた、アメリカ合州国という依然として世界の「超大国」(ただしアメリカによるイスラエル「一辺倒」支持姿勢については単純に自らの国益の為ということだけでもない。各種かつ多数のイスラエル・ロビイストグループの影響力やアメリカ国内で同国人口の 1/4という規模の信者を持つキリスト教福音派 Evangelicals の各宗派の力によるところも大きい)。

*2 The Guardian とパレスチナ/イスラエル問題、イスラエル批判。下にリンクを貼る記事は Current Affairs によるもので(2021年2月10月付)、同誌はアメリカ合州国のメディアで政治やカルチャーのトピックを扱い、Noam Chomsky などに評価されている進歩派("progressive")の隔月刊マガジン。

The Guardian: How the Media Cracks Down on Critics of Israel 〜 I was fired as a newspaper columnist after I joked about U.S. military aid to Israel on social media. (Nathan J. Robinson)

上の記事をシェアしたツイート。

*3 前項の記事の執筆者 Nathan J. Robinson の件を取り上げた、反シオニストの ユダヤ系アメリカ人によるメディア Mondoweiss による記事とツイート。

以下、ツイート。

*4

2. 「男は女の擁護者・保護者である」(クルアーン4章34節)〜 "back then" 派いわく、「当時としては先進的だったんだよ」(一体いつの話をしてるんだ今?)

前章に取り上げたようなことは、もちろん(!)ガザ地区のハマース特有のものではない。ハマースのオリジナルなんぞではない。程度の差こそあれ、形態の違いこそあれ、スンナ派が多数派であるサウジアラビア王国(正式名称の原意は「サウード家によるアラビアの王国」、実態は「サウード家の、サウード家による、サウード家のためのアラビアの王国」といったところだろう)、シーア派が多数派であるイラン・イスラム共和国など世界の決して少なくない数のイスラーム法(シャリーア)による統治を行なうイスラーム神政国家やイスラームを信仰する人たち(ムスリム)のコミュニティで、似たような考え方や慣習、法に基づく制度などが見られる。

前章で取り上げたケースに関して言うと、そのイスラーム「神政」主義のウルトラ保守の根拠は、例えば以下に示すイスラームの「聖典」クルアーン4章34節などに求められるものと思われる。

「男は女の擁護者(家長)である。それはアッラーが、一方を他よりも強くなされ、かれらが自分の財産から(扶養するため)、経費を出すためである。それで貞節な女は従順に、アッラーの守護の下に(夫の)不在中を守る。あなたがたが、不忠実、不行跡の心配のある女たちには諭し、それでもだめならこれを臥所に置き去りにし、それでも効きめがなければこれを打て。それで言うことを聞くようならばかの彼女に対して(それ以上の)ことをしてはならない。本当にアッラーは極めて高く偉大であられる。」

上に引用したのはウィキペディアの解説で使われている井筒俊彦(1914年5月4日- 1993年1月7日, イスラーム学者・東洋思想研究者, 自分用の備忘録的に書いておくと当時たまたまテレビで観た2019年放映NHKドキュメンタリー「イスラムに愛された日本人~知の巨人井筒俊彦~」で取り上げられた人物)の訳によるもの。

イスラームの「クルアーン」はキリスト教の「聖書」(旧約・新約)同様、非常に多くの言語による翻訳版があるが、原文は言うまでもなくアラビア語で、そのアラビア語による原文のみに最高権威が認められ、各国語訳は言わば参考資料に過ぎない。

使われているアラビア語の言葉には多くの微妙に異なる解釈があるようで、訳し方も様々。上に挙げた4章34節についても、ネット上から上記以外のいろいろな訳し方を見つけることができる。

(因みに4章は女性への言及が極めて多く「婦人」[原文では سورة النساء, ‎سورة はここではクルアーンにおける「章」を意味し、النساء は英語では通常 "women" と訳される] というタイトルが付けられている。その中身と言えば、現代の人権感覚で見る限り、「女性差別的言辞の宝庫」にも見える。関心がある向きは確かめてみればよい。言っておくが筆者はイスラモフォビアと形容されるような「病」態の人間ではない。単に率直に読後感を語っているだけである。)

4章34節の上記以外の和訳例を挙げるなら、例えば、

「神がいっぽう(つまり「女性」)より他方(同「男性」)を優先され、また男性たちが自分たちの財産から経費を支出するので、男は女の保護者である。誠実で従順な女は神の守護のもとで(夫の)留守を護る。あなたたちは、不誠実さが心配な妻には説得をし、(それでも効果がなければ)寝床に置き去りにし、(それでも効果がなければ)彼女を叩きなさい。もし、彼女が従うなら、 それ以上、度を超えてはならない。」

「打て」「叩きなさい」と日本語訳されている箇所、ここなどは英訳となると実に多種多様な訳があるようで、"chastise them" (ムチ打ちなどにより罰せよ), "scourge them" (懲らしめよ・ムチ打て), "beat them" (叩け・殴れ), "strike them" (突け・打て), "beat or separate them (from you)" (叩け・殴れ, もしくは別居しろ, あるいは家庭内別居とでも?), "beat them (lightly, if it is useful)" (叩け・殴れ, ただしそれで効果あるのなら軽めに) ... 英語版ウィキペディアに出ているだけの例でも、まだこれ以上に、数多くある。

見てわかる通り、「打て」「叩きなさい」の箇所以外も、訳し方は実に様々。細かいことを言い出せば、原文のアラビア語の解釈にはかなりの幅があるというわけだ。そこで、イスラーム法学者たちが色んなことを言い出して、信仰するものを説得したり、あるいは批判者に対して抗弁したりする。

しかし、可能な限りの幅広な解釈をしようが、どうやら相当に女性差別的言辞のオンパレードであることは間違いない。少なくとも、20世紀後半あるいは今世紀の人権感覚からすれば、正直、ため息が出ても、あるいは吐き気がしても、もしくは笑ってしまっても不思議はあるまい。

こうしたクルアーン(「神」から「預言者」ムハンマドへの「啓示」の内容を著したものという位置づけ)あるいはハディース(「預言者」ムハンマドの言行に関する証言録、その言行のひとつひとつ)の記述に基づいたイスラーム「神政」の原理主義的・超保守的な考えを少しでも擁護したいような、例えばイスラーム信者(ムスリム, 必ずしも原理主義的ムスリムと限らない)の主張、あるいは非信仰者による親イスラーム的な主張には、筆者を含むそれを揶揄する側がこんなふうに呼ぶ考え方が色濃く残る。

つまり、"back then" 派。 「その当時は」派。「あの時代は」派。

要するに、「当時の世界ではそれは先進的だったことを理解しなければ」、「当時のアラブ世界では女性が襲われることは珍しくなかった。彼女らを文字通り守るための決まり事だったのだから、女性差別などではない」、等々。

"back then" 派のこうした議論は、千年以上も前の時代背景を持ち出すことで 21世紀の現代においてまでこうした超保守的法律なり戒律なりが女性の人権を縛ることを擁護しようとするものである限り、単なる詭弁であり、没論理に過ぎない。

当時のイスラームが広まりつつあった現地社会においては、上記、つまりクルアーン4章34節に記述されているような考え方に基づいて女性を「擁護」「保護」しようとすることはそれまでの慣習に比して先進的、進歩的だったのかもしれない(とはいえ場合によっては女性を「打て」「叩け」要するに力でもって躾けよとしている、そんな思考を含むものを全体として当時としては相対的に「進歩的」だったと見えるからと言って称賛する、控えめに言っても肯定する気分になど、筆者としては全くなれないのだが)。

あるいは「クルアーン」の記述の中にある、女性の財産相続の権利を額にして男性の半分にしたり、また女性の証言の価値は男性のそれの半分しかないと読める考え方などは、当時の時点の慣習、社会的な背景の下では比較的「進歩的」なものだった面があるのだろう。また、男性ムスリムの異教徒との結婚は許容しながら、女性のそれについては厳禁であるといった婚姻における性の違いによる「区別」も(現代的な人権感覚からしたら「区別」というより明らかに「差別」であるが)、当時としてはある種の合理的な理由があったのかもしれない。あくまでも当時としては, "back then", の話だが。

しかし、それはそれで一つの歴史的考察であって、その規定を、イスラームの「聖典」クルアーンやクルアーンに基づくイスラーム法(シャリーア)の名の下に、現代(20世紀後半にしろ今現在の21世紀にしろ)においても社会の構成員が守るべきものだとして維持し続けるのなら、それは7世紀なり8世紀なりあるいは18世紀、19世紀の話でなく、現代の話である以上、遥か昔の時代背景を引っ張り出してくるような釈明など意味を持たず、疑うべくもない単なる性差別もしくは女性蔑視の制度であると言うべきである(実際、2017年に相続や異教徒間結婚における少なくとも法律上の男女間差別を廃止したチュニジアを除き、殆どのイスラーム神政国家もしくはムスリムが多数を占める国々では上記のような明らかな性差別が国の法律もしくはイスラーム法の中に温存されている)。

我々は今、7世紀を生きているのではない。18世紀、19世紀を生きているのではない。20世紀を生きているのですらない。

Does anybody really know what time it is? 〜 今がいつの時代なのか、それが本当にわかっている者はいないのだろうか?

3. Does Anybody Really Know What Time It Is? 〜 今がいつの時代なのか、それが本当にわかっている者はいないのだろうか?

この曲(ブラス・ロックのバンド、シカゴの曲!)のリリース当時の邦題は、「いったい現実を把握できている者はいるだろうか?」だった。意訳混じりだとしても結構よくできた邦題だったのではないかと思い続けてきたが、これまでなぜか歌詞の中身についてまともに考えたことがなく、いまだ本当に「適切な」邦題だったのかどうかの結論を得ていない。

何時だと尋ねられるのだが、そんなことどうだっていいじゃないか、時計が示す時間なんてどうだっていい、それより今がどんな時代かってことを本当に分かってる奴っているのかい?

そんな歌詞なのかな。いつか改めて読み解いてみることにして(気が向いたら、笑)、今日は「宗教」なるものの莫迦莫迦しさに呆れたところで一旦の休憩のために ♫

Does Anybody Really Know What Time It Is? 〜 from Chicago's 1969 debut album "Chicago Transit Authority", released on April 28, 1969

(single version, released in October 1970)

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。歌詞に関心のある方は, 公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

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... さて、閑話休題。「宗教」のことだった。

4. 宗教

筆者は無神論者。どの宗教に対しても批判的思考をする。例えば Facebook 上などでは筆者の「宗教」一般(特にアブラハムの宗教)に対する体系立てた批判を自身の完璧には程遠い英文テキストでまとめたことがあるが、いつかそれを日本語にして note 上でも投稿したいと考えているものの、いまだ実現させていない。

以下は note 上で過去に書いた「宗教」に関する筆者のテキストの一つと、宗教(アブラハムの宗教の他、仏教、ヒンドゥー教なども含め)について少しばかりでも関係することを含んだ筆者の投稿テキストを集めた note 上のマガジン。

付録:イスラエルは「開明」的、「進歩」的であると見せるための "ショー" としての LGBTQ 人権擁護 〜 イスラエルによるピンクウォッシング

今日の note 投稿ではガザ地区のイスラーム(原理)主義組織ハマースの今般の前近代的裁定について取り上げた。その他にも、これまで様々なメディア上の記事において、パレスチナ内部のコミュニティにおける宗教もしくは古くからの慣習・因習に由来する社会問題がリポートされている(念のため書いておくと、その種のことは他の中東諸国と比べてパレスチナが相対的に多いわけでは決してない)。例えばガザ地区における "Child Marriage" (日本語では通常、「児童婚」と訳される)、また最近でも昨年 実際にヨルダン川西岸地区で起きた "Honor Killing" (「名誉殺人」, 因習のもとで反モラル的と見做される婚前・婚外の性交渉、「自由恋愛」などをした女性等を「家族・親族の名誉を汚した」ものとして親族が「名誉」を守るために私刑・殺害する風習、同性愛者の男性が被害者となる場合もある)など。

残念ながら、こうしたことは、イスラーム的な伝統もしくは宗教の如何に関わらず古い慣習・因習の影響が色濃く残る中近東やアフリカ、あるいはインド、パキスタン、バングラデシュ等の国々で、現代においてもしばしば起きている。

因みにパレスチナは、宗教に関して言えばイスラームが多数派の宗教であるが、一方でキリスト教徒の比率は他のアラブ諸国と比べて大きく(レバノンほどではないがそれに次ぐ程度)、また統計には現れにくいが無神論者も少なからずいる。

ところで、イスラーム主義あるいはイスラーム「神政」主義と言えば、他にも LGBTQ の人々の人権に対する無理解もしくは抑圧・弾圧が槍玉に挙げられることがある(国の名前を挙げるなら「代表的には」サウジアラビア、イランだが、この両国に限られることではない)。

以下の記事は、イスラエルの対パレスチナ占領政策やアパルトヘイト政策に批判的なイスラエル人やパレスチナ人が運営する +972 Magazine (972 はイスラエルと被占領地パレスチナ共通の国際電話のコード番号) という名のメディアの記事で、記事の主題自体はイスラエルによるメディカル・アパルトヘイトとでも形容されるべき新型コロナウイルスに対するワクチン接種における対パレスチナ人差別の問題なのだが、この記事の中には、

The third group are Palestinian asylum seekers who fled the West Bank for other reasons, such as their sexual or gender identity. “Some of them have received a special permit [to remain in Israel], while others have not,” says Gutzeit. “Some of them are known to [Israel’s] welfare institutions or have sought shelter in LGBTQ institutions. They are young people who have escaped abuse or harassment.”

という内容の、自身の性もしくはジェンダーに係るアイデンティティの問題がもとでヨルダン川西岸地区を逃れてイスラエル領に入ってきた(事実上の「亡命」)パレスチナ人たち(その多くが LGBTQ の人たちと思われる)への言及がある。

今日の note 投稿で取り上げたテーマに全面的に重なるわけではないが、しかしながら関連する事柄ではある。

そこで、このことに関わることとして、以下の note 投稿 4点をパレスチナ/イスラエル問題における重要な参考資料として、本 note 投稿の「付録」として添えることにした。

以下に関しては、いずれも、筆者の note 投稿ではない。

BDS Japan Bulletin という、日本における BDS運動(イスラエルの違法入植活動を含む占領政策やアパルトヘイト政策を是正させるための同国に対する Boycott ボイコット, Divestment 資本撤退, Sanctions 制裁を推し進める言論や政治活動を行なう運動)の掲示板を標榜する note 上のアカウントによるもの。

念のため書いておきたいのだが、筆者自身は BDS Japan Bulletin のメンバーでもアカウント管理者でもない。また、今日の note 投稿の中で書いたことの少なくとも一部は、BDS Japan Bulletin のメンバーと意見が異なる部分もある可能性があるが(意見が全て一致するはずもなくそれはそれで何の不思議もない、ある意味当然ながらメンバー間の考え自体も細部にわたるまで完全に一致しているのではないだろうし)、いずれにしても、以下の4点のテキストは参考資料として有効なので、筆者の今日の note 投稿に添えることにする。

Bonus Track ♫ 〜 "Black Birds" by Alicia Keys

音楽が好き過ぎて、今日の note 投稿に関わって「何か」気の利いた曲を聴かないではいられない。I can't help listening to music ♫ だから "I Can't Help Falling in Love With You", じゃなかった(強引だな、笑)、今日の最後はこれ、

Beatles の "Black Birds" の Alicia Keys によるカヴァー。

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。歌詞に関心のある方は, 公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

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