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The Dangling Conversation 宙ぶらりんの会話 by Simon & Garfunkel 〜 歌詞和訳

前説を少しばかり..

Simon & Garfunkel が 1966年10月24日にリリースした 3枚目のアルバム "Parsley, Sage, Rosemary and Thyme", その LPレコードの B面 1曲目に収録されていた, 美しい旋律とハーモニーに彩られた曲。

シングルとしてもリリースされ, Billboard Hot 100 で最高25位を記録している。ある意味「地味」な曲調を踏まえれば, 商業的成功としては「いい出来」だったとも思えるのだが, Paul Simon 自身はこの歌のこの程度のヒットについては不満だったようで, Wikipedia によれば, 彼はこの結果を "absolutely amazing" disappointment と語り, the song was "above the kids." とも述べている(ただし 1993年になって, "It's a college kid's song, a little precious." と言い直している)。

確かに, 歌っている内容からしたら, 一言で言えば「子ども向け」の歌ではない。

ところで日本では, 歌詞の中身からしてとんでもない, 音楽から受ける印象によるインスピレーションだけで付けたと思われる「夢の中の世界」という邦題が採用されていたのだが(今も邦題としては多分そのまま), 原題はその意味のまま日本語にするなら「宙ぶらりんの会話」といった感じになると思う。

なお, 本 note のタイトル画像の全体像は以下の通り。

画像4

たまたま見つけた SoundCloud 上の投稿に添えられていたものが, この歌の雰囲気にあまりにしっくりくるイメージだったので, それを拝借することにした(この人の "The Dangling Conversation" 歌詞朗読も素晴らしい)。

ではでは ♫

The Dangling Conversation 〜 歌詞和訳

英語の歌の歌詞を和訳しようとするなら, 原詞(詩)の語順通りに逐語訳するような方法を採ることは有り得ない。そんなことをしたら元の歌詞の趣はなくなるし, 日本語としても意味が通りにくい一節や詩になってしまう。とりわけこの歌の歌詞のような場合。 

和訳を試みながら, 今さらながら大きなことに気づいた気がする。ポール・サイモンの歌の歌詞は, ほとんどの場合, 見事に, かつ綺麗に, 韻が踏まれている。しかしこの歌の歌詞を見ると, 韻を踏んだかと思わせる箇所はほんの少しだ。

これは明からに, 意図的に韻を外したのではないだろうか。恋人同士(だった)と思われる二人の関係が色褪せていく様子を歌ったこの歌の中身に, 韻をほとんど踏まず, 詩としてのリズムを外したかのように思える言葉選びは, かえってしっくりくるところがあるように感じられるのだ。

The Dangling Conversation 〜 from Simon & Garfunkel's 1966 album "Parsley, Sage, Rosemary and Thyme" ♫

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。英語歌詞・原詞は公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

..............................

それは水彩で描かれた静物画
たった今, 夕方近くの
レースのカーテンを通して陽が差し込み
影が部屋を洗い流し
僕らは座ってコーヒーを飲んでいる
お互いの無関心の中に横たわり
海岸に打ち上げられた貝殻のように
海が唸り声を上げるのを聞くことができる
宙ぶらりんの会話の中で
うわべだけのため息がもれ
僕らの人生に境界線が引かれる

君はエミリー・ディキンソンを読み
僕はロバート・フロストを読んで
二人は栞を挟んだ読みかけの頁に目を落とす
それは僕らが失ったものを測る物差し
出来の悪い詩のように
僕らはそれぞれリズムが取れない詩の一節
韻を踏めない対句
切り分けられた時と
宙ぶらりんの会話の中で
うわべだけのため息がもれ
僕らの人生に境界線が引かれる

確かに僕らは大事なことを話してはいる
語られなければならない言葉で
「解析することは価値を持ち得るだろうか」
「戯曲は本当に死んでしまったのか」
そしていつの間にか僕らの部屋は色を失い
僕はただ君の影にキスをする
もはや君の手さえ感じとることができない
いま君はまるで見知らぬ人であるかのよう
宙ぶらりんの会話の中で途方に暮れ
うわべだけのため息が
僕らの人生を分け隔てる

...... ♫ ♫ ♫ ......

他のミュージック・ヴィデオでも 〜 The Dangling Conversation (歌詞和訳)

前章に書いたことを, もう一度ここに記しておきたい。

和訳を試みながら, 今さらながら大きなことに気づいた気がする。ポール・サイモンの歌の歌詞は, ほとんどの場合, 見事に, かつ綺麗に, 韻が踏まれている。しかしこの歌の歌詞を見ると, 韻を踏んだかと思わせる箇所はほんの少しだ。
これは明からに, 意図的に韻を外したのではないだろうか。恋人同士(だった)と思われる二人の関係が色褪せていく様子を歌ったこの歌の中身に, 韻をほとんど踏まず, 詩としてのリズムを外したかのように思える言葉選びは, かえってしっくりくるところがあるように感じられるのだ。

The Dangling Conversation 〜 from Simon & Garfunkel's 1966 album "Parsley, Sage, Rosemary and Thyme" ♫

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。英語歌詞・原詞は公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

..............................

それは水彩で描かれた静物画
たった今, 夕方近くの
レースのカーテンを通して陽が差し込み
影が部屋を洗い流し
僕らは座ってコーヒーを飲んでいる
お互いの無関心の中に横たわり
海岸に打ち上げられた貝殻のように
海が唸り声を上げるのを聞くことができる
宙ぶらりんの会話の中で
うわべだけのため息がもれ
僕らの人生に境界線が引かれる

君はエミリー・ディキンソンを読み
僕はロバート・フロストを読んで
二人は栞を挟んだ読みかけの頁に目を落とす
それは僕らが失ったものを測る物差し
出来の悪い詩のように
僕らはそれぞれリズムが取れない詩の一節
韻を踏めない対句
切り分けられた時と
宙ぶらりんの会話の中で
うわべだけのため息がもれ
僕らの人生に境界線が引かれる

確かに僕らは大事なことを話してはいる
語られなければならない言葉で
「解析することは価値を持ち得るだろうか」
「戯曲は本当に死んでしまったのか」
そしていつの間にか僕らの部屋は色を失い
僕はただ君の影にキスをする
もはや君の手さえ感じとることができない
いま君はまるで見知らぬ人であるかのよう
宙ぶらりんの会話の中で途方に暮れ
うわべだけのため息が
僕らの人生を分け隔てる

...... ♫  ♫  ♫ ......

最後にもう一つのヴィデオ。こちらは和訳を外して。

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。歌詞に関心のある方は, 公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

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1968年のアメリカ合州国の高校と, ポール・サイモンの詩と音楽 〜 The Dangling Conversation ♫

1960年代後半期から1970年代にかけて, アメリカの高校で教材になっていたポール・サイモンの詩と音楽。こんな高校ばかりだったらいいなぁ。以下, 興味深いヴィデオを 2つ。

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識によりここに掲載していた英語歌詞を削除しました。歌詞に関心のある方は, 公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.9.1 加筆/削除/編集)。

(Published: January 19, 2013)

In the late 1960s and 1970s, many young people were introduced to Paul Simon's poetry in high school English classes. One such experience was captured in Frederick Wiseman's 1968 documentary "High School," in which a teacher presented the words and music of Simon's "The Dangling Conversation."
Emory faculty and staff (Kristin Wendland, Matthew Bernstein, Tonio Andrade, Anna Leo, Laura Otis, Timothy Dowd, Becky Herring) talk about how Paul Simon's music and words have touched their lives at different times from the 1960s through the 1990s.
Paul Simon will deliver the 2013 Richard Ellmann Lectures in Modern Literature at Emory University, September 22-24, 2013 (new dates). The Ellmann Lectures consist of a series of public lectures that are ticketed but free and open to the public. (For ticket info, see http://www.emory.edu/ellmann) Simon's lectures will concern, in part, an overview of the historical antecedents of the music made between 1966 and 1970.

パリ, セーヌ河畔, 1983年6月10日 〜 BGM は The Dangling Conversation (S&G) ♫

この歌の歌詞の中身とは関係ないんだけど, 以下リンク先 note で, 今日歌詞の和訳を試みた "The Dangling Conversation" を取り上げていた。自分がバックパッカーとして旅をしていた 1983年6月10日 に パリのセーヌ河畔の本屋さんを撮った写真を見て, 二人の詩人の名前や本に挟む栞などが歌詞に登場するこの歌を思い出したから, という些か単純な理由で。

目次は以下 note リンクの下に記した通りで, 今日の note の前章はこの以前の note の第5章を再掲したもの。 

目次
1. 1983年4月26日に日本を発って, ユーラシア大陸「ほぼ」一周の旅 開始 〜 ここで 6月9日までをちょっとだけ振り返る
2. あ, あれは 「セーヌ川に架かる橋」, じゃなくて, 「明日に架ける橋」, ってか 「渦巻く水に架ける橋」 だった 〜 あらためて旅, 1983年6月9日までの振り返り
3. セーヌ河畔の本屋さん, 絵画屋さん, 写真屋さん, ポスター屋さん..
4. The Dangling Conversation 〜 Simon & Garfunkel ♫
5. 1968年のアメリカ合州国の高校と, ポール・サイモンの詩と音楽 〜 The Dangling Conversation ♫
6. 詩だったら, 宮沢賢治, 谷川俊太郎, 茨木のり子, そしてポール・サイモンの歌詞, その詩がいい 〜 The Dangling Conversation ♫
7. ポール・サイモンの音楽, 歌詞, 詩, ほんといい ♫

エミリー・ディキンソン と ロバート・フロスト

"The Dangling Conversation" の歌詞に登場する二人の詩人。詩人の名前として知ってはいても, 正直, 詳しくはない。よって .. え〜い, ここは横着して一気に Wikipedia からの一部引用, そして ウィキペディア と Wikipedia のリンクを ♫

Emily Elizabeth Dickinson (December 10, 1830 – May 15, 1886) was an American poet. Little-known during her life, she has since been regarded as one of the most important figures in American poetry.
Dickinson was born in Amherst, Massachusetts, into a prominent family with strong ties to its community. After studying at the Amherst Academy for seven years in her youth, she briefly attended the Mount Holyoke Female Seminary before returning to her family's home in Amherst.
Evidence suggests that Dickinson lived much of her life in isolation. Considered an eccentric by locals, she developed a penchant for white clothing and was known for her reluctance to greet guests or, later in life, to even leave her bedroom. Dickinson never married, and most friendships between her and others depended entirely upon correspondence.
While Dickinson was a prolific writer, her only publications during her lifetime were 10 of her nearly 1,800 poems, and one letter. The poems published then were usually edited significantly to fit conventional poetic rules. Her poems were unique for her era. They contain short lines, typically lack titles, and often use slant rhyme as well as unconventional capitalization and punctuation. Many of her poems deal with themes of death and immortality, two recurring topics in letters to her friends, and also explore aesthetics, society, nature and spirituality.
Although Dickinson's acquaintances were most likely aware of her writing, it was not until after her death in 1886—when Lavinia, Dickinson's younger sister, discovered her cache of poems—that her work became public. Her first collection of poetry was published in 1890 by personal acquaintances Thomas Wentworth Higginson and Mabel Loomis Todd, though both heavily edited the content. A 1998 article in The New York Times revealed that of the many edits made to Dickinson's work, the name "Susan" was often deliberately removed. At least eleven of Dickinson's poems were dedicated to sister-in-law Susan Huntington Gilbert Dickinson, though all the dedications were obliterated, presumably by Todd. A complete, and mostly unaltered, collection of her poetry became available for the first time when scholar Thomas H. Johnson published The Poems of Emily Dickinson in 1955.
Robert Lee Frost (March 26, 1874 – January 29, 1963) was an American poet. His work was initially published in England before it was published in the United States. Known for his realistic depictions of rural life and his command of American colloquial speech, Frost frequently wrote about settings from rural life in New England in the early 20th century, using them to examine complex social and philosophical themes.
Frequently honored during his lifetime, Frost is the only poet to receive four Pulitzer Prizes for Poetry. He became one of America's rare "public literary figures, almost an artistic institution". He was awarded the Congressional Gold Medal in 1960 for his poetic works. On July 22, 1961, Frost was named poet laureate of Vermont.

ではでは, もう少し ♫

Dickinson: ディキンスン 〜若き女性詩人の憂鬱〜

これは「グリコ」ですねん。「グリコ」, 「昭和」世代には懐かしい, 「グリコのおまけ」。おまけ(笑)。

この二人, Hailee Steinfeld と Ella Hunt が出演した TVドラマ, "Dickinson", 邦題は「ディキンスン 〜若き女性詩人の憂鬱〜」だったようだけれど(前者が Emily Dickinson を演じた)。

画像1

画像2

というわけで, 

そういうわけで(どういうわけだ, 笑),

画像3

本 note の最終章へ。

さてさて ♫ 

Paul Simon の歌, 歌詞和訳 note リンク集

以下リンク先 note に "The Dangling Conversation", つまり今日のこの note の分を加えた。これまでに自分で歌詞を和訳して note に載せた ポール・サイモン の歌は, これで 計 22曲になった。


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