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V&A博物館、美術知識ゼロの楽しみ方

たくさんの歴史的な貴重なものを博物館や美術館で無料で楽しむことができるのが英国の魅力の一つ。

ロンドンは大英博物館を始め、自然史博物館、ナショナル・ギャラリー、テート・モダンなど世界的に有名な文化施設が盛りだくさん!どれも無料(もちろん寄付は大歓迎!)で訪れることができ、美術・芸術好きにはたまらない街ではないでしょうか。

コロナ危機後はほぼ全ての入館で事前予約が必要になりましたが、その分当時はたっくさんの人で溢れていた館内が人数制限により、とっても鑑賞しやすくなりました。再開後すぐは、予約を取るのも困難でしたが、今は落ち着きつつあり、結構土日でも時間によっては前日に予約を取れたりもします。

そんな今回は、ロンドン3年目にして一度も行ったことがなかったビクトリア&アルバート博物館(V&A)に。2年前の秋にスコットランド東部ダンディーに完成したV&A博物館には行ったのに、本家本元を訪れていないとはとっても失礼や!とようやく気づき、遅ればせながらデビューして来ました。

私は受験時の選択科目が世界史で、当時は死ぬほど知識を叩き込んだにも関わらず、全て綺麗さっぱり忘れてしまった美術・芸術知識ゼロな人。そんなタイプでも結構飽きずに楽しめたことをお伝えしたい。

コツは「最長2時間」、て決めること!笑

・V&A基礎知識

前身のMuseum of Manufactures(産業博物館)が1852年に開館。1899年に当時のビクトリア女王が基礎を築いたことから、彼女の名前と夫アルバート公の名前が付けられたそうです。

芸術とデザインをメインに収集された作品200万点以上が展示されています。当時収蔵されていた産業製品の一部が別の建物に移され、それが今、V&A付近にある科学博物館として運営されています。

V&Aの初代館長を務めたヘンリー・コール氏は同博物館を「全ての人にとっての教室」にすることを掲げていました。芸術や科学分野においてデザイナーや製作者、鑑賞者への教育を通じて英国の産業を発展させようと考えたそう。

考えのスケールが大きい。こうでないと今なお残る、世界中からの観光客を魅了する博物館にはならなかったでしょうな・・・。

・予約、行き方

場所はサウスケンジントン駅。ハロッズがあるナイツブリッジから一駅の、いわゆるハイソ系エリアにあります。この辺の建物は基本的に漂白剤に漬け込んだんか!?ってくらいに白い!!!

夏のお日様かんかん照りの日にこの辺りを歩くととっても目が目がああああ!(ムスカさん風)てなります。

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サウスケンジントン駅からV&Aに直結する出口があるんですが、今はコロナの影響により閉鎖されちゃっていました。

でも、地上に出ると標識が出てくるのでそれを頼りに行けば到着します!ただ、注意が必要で、入口はいま現在一カ所しかないので、お気をつけください。

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一見、めっちゃ入口ぽい佇まいなこちらは出口専用になっているので、向かって左側に進み、角を曲がってください。そうすれば入り口にたどり着きます。

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入口から施設内に入ったところ。

予約方法は簡単!

好きな日程を選び、空いているスロットを選択します。今は開館時間が通常より短くなっており、11時が一番早く、一番遅い入館時間の18時(閉館は19時)まで15分刻みの受付となっています。

好きな日時を選択したらメールアドレスと名前やらを登録すれば完了です。確認メールがすぐに届くので、当日そこに添付されているPDFファイルのバーコードを係員に見せてスキャンしてもらえば入館できます。

基本は無料で、寄付込みだと5ポンドです。

・個人的おすすめは「日本」エリア

冒頭でお話しした通り、私は美術・芸術・歴史知識を持ち合わせていません。キリスト教の誕生など一般的かつ表面的な知識くらいです、強いていうなら。

馬小屋で聖母マリアから生まれ、布教活動していたら怪しまれて、磔の刑にされ、人間の罪を全て背負って亡くなったけど、復活したってくらいの知識程度です。。。

そんな私タイプは2時間て鑑賞時間を決めてサクサク回るが一番楽しめて疲れない!

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今回私はオープンの11時に入館し、お友達と待ち合わせまでの13時に合わせて、博物館を後にしようと決めました。

かなり広いので1日で欲張って全て見ようとすると、最後な変化ら疲れと飽きに襲われ、鑑賞がやっつけ仕事となりかねないです。それは収蔵品にとっても失礼なので、やめた方が良いかと(自分のためにも)

2時間弱しかない中、45分ほど滞在してしまったのが日本エリア!私が単純に日本を心から欲していただけかもしれませんがとっても楽しかった!

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エリアはそこまで大きくなく、一部屋に全てまとまっています。

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この感じがとっても落ち着く空間になっており、心地よかった。東芝が文化振興活動の一環で、「東芝ギャラリー」として後援しており、2021年まで延長されているそうです。来年以降はどうなるんやろう・・・こんな素敵なのに・・・。

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なんか見入ってしまう。とっても日本が恋しいんだなあ私。ちょっと見ていたらなんとも言えないセンチメンタルな気分になってしまった。

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目を奪われたのはこちら。ザ・パイソンなカバン。2008年作で、七宝焼き(cloisonné enamels)と呼ばれる伝統技法。金・銀・銅・青銅・鉄などの金属素地に、釉薬(ゆうやく)を800度前後の高温で焼成することによって、融けた釉薬によるガラス様あるいはエナメル様の美しい彩色を施す技法だそうです(ウィキ参照)

こちらは銅が使われているそうで、手持ち部分などが革。

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西武鉄道の広告

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2017年、真ん中が個人的にツボでした。

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現代・コンテンポラリー芸術に分類されているようだ。こちらの人にとったらこういうお洋服や、キャラクターと家電のコラボは前衛的なのかしら

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絹。鮮やかな色を出せるのも日本特有の技術なのかもしれない。

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正面から見てもどこから見ても惚れ惚れしちゃいますね。柄もどれも違って素敵。

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根付の一部。なぜこの3つをチョイスしたかというと異色を放っていたから。根付って印籠とか巾着、革製鞄などを紐で吊るして持ち歩くときに使うもので、江戸後期からデザイン性あるものが爆発的に流行したらしい。その後芸術作品として収集の対象となり、題材は人物、動植物、妖怪など幅広いとのこと。

なんで妖怪をわざわざ?と疑問に思って調べてみたら、この頃から、妖怪が友達のような身近な存在として親しまれ、着物の柄や子供のおもちゃなどにも描かれるようになったそうです。

可愛いお茶目なキャラクターになっていったんだって。いまでも妖怪ウオッチや水木しげる作品などは親しまれているもんなあ。

納得。

でも流石に上の3体はあまり可愛いとは思えない。笑 真ん中はブタッパナでぶさかわだけど。

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艶やかで綺麗な着物。ほとんど着ないけど、成人式や卒業式の時は流石に背筋伸びたなあ。

またいつか着たいな。

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右の能面。昔おおおばの家の玄関に飾られていて、小さい頃一人で玄関にいるのが嫌だった記憶が蘇った。今も突然に現れるとぎょっとする・・・。

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とーってもちっちゃいの!刀の目貫につけられる飾りなんですが、細かくてすごい(語彙力)。

目貫とは日本刀の装飾の一つで、刀身が柄から抜け落ちないように突き通す釘のことで、時代が経つにつれて、釘と装飾が分離され、目貫自体は純粋な装飾品になったそうです。

家紋や植物、ストーリー性のあるモチーフ、縁起物など多種多様。写真からでも魚や鳥、蜂?とかさまざま。使われる材料も、真鍮や鉄、金、象牙などたくさん。

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これ家にあったら良いなあ〜と思った19番の青い小さな水差し?現代でも余裕でアンティーク的な位置付けで存在感放つよね。

ちなみにいま期間限定でやっている特別展示がこちら

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「キモノ」展。人気があってチケットは全て完売。嬉しいけど、見れなかったのは残念・・・。

・私の中のMVPたち

日本エリアでかなりの時間を使った私。あとは気の向くまま、案内表示を頼りに何を見たいか直感でうろちょろしました。

その中で見つけたツッコミどころある芸術品をいくつか写真に納めたので、私コレクションをご紹介します。もし訪れた際には探してみてね

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ちょっとふてこめ聖ゲオルギウス。説明のところにSt Georgeとあるから「ジョージやん!」と読んだらバツとなります。お気をつけあれ。

当然どちら様でしょう、となったのでググる。キリスト教の聖人である聖ゲオルギウスが竜を殺した伝説があるらしく、これは、人言の犠牲を要求した竜を飼いならして殺害し、次の生贄として選ばれた王女を救出したという話。

(個人的に思うけど、竜かわいそうじゃない?人間の勝手な気もすると思っちゃう私・・・笑)結構、こういう伝説って残酷だよね。

足元を見ると、涼しげな顔で竜を踏みつけているではありませんか!!!竜の退治なんて朝飯前ですわよ、てくらいの汗ひとつ流していない。おそるべしキリスト教の聖人。

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ステンドグラスゾーン。この辺はいっぱいこういう系が飾ってあって、その中の一つがこちら。

足を洗ってもらっているおじいちゃんの顔がツボ

爺「いや〜最近の若いもんっちゅーんは根性が足りんわい!・・・あーそこそこ、もう少しふくらはぎの下、くるぶしの上あたりを頼む」

と言ってるのかもしれない

という冗談はさておき。こちらは、キリストが最後の晩餐の時に、弟子たちの足を洗い、「主であり、師であるわたしがあなたがたの足を洗ったのだから、あなたがたも互いに足を洗い合わなければならない。」と命じた聖句によるもの。

地位や立場関係なく互いの身を清め、徳を高め合おうという意味が込められているんだそうです。

洗われているのはペトロ。(ごめん、おじいちゃんとか言って。)弟子たちのリーダー的存在だからとってもすごい方です。まあ、周囲にキリストの弟子だろうと問い詰められて3回違う、と否認したことで知られる人です。

ちなみに、洗足式は現在でも復活祭の前に行われているんですって。

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やはり外してはいけない。聖母マリアと赤ちゃん時代のキリスト。これは説明を読まなくてもわかるぞおおおおお。

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階段を上ってみましょう。脳内でホグワーツ魔法学校のBGMを再生。

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説明書きが見つからず、こちらの方々はどちら様なのか存じ上げませんでしたが、なんかポケモンの四天王に出て来そうなかっこいい雰囲気だった。

左から格闘、虫、鋼、水、草ってところかな。ほのおタイプがいれば3人は無理なく倒せそう。

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うおおおおおとつい声が漏れてしまった廊下。誰もいなくしんとした空間に一人。なかなかの非現実空間で、5分ほど佇んでいた。天井の絵も見とれてしまいます

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その説明がこちら。もともと中庭?を見下ろすことができるバルコニーだったと書いてある。

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そんな日現実空間を抜けるとなんかでっかい塔がどーんとお出まし。

こちらはなんぞやと調べると、トラヤヌスの記念柱のレプリカだそうです。本物はイタリアのローマにあり、ローマ皇帝トラヤヌスがダキア戦争で勝利したのを記念して作られたもの(世界史で頻出していた名前だから聞き覚えある)

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彫刻ゾーンに可愛いフクロウ。今はお触り禁止となっております

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ちょっと不気味なタペストリーだな、骸骨描かれてるやん・・・と思ったらまさにそうだった。お葬式とかの行事に使われていたみたい。

タペストリーて見た目まさに絨毯ですが、床に敷くものではなく壁に飾るもの。このタペストリーは頭蓋骨と骨が描かれていますが、見る人に地球での生は短いということを示しています。

お金や富は無価値、いつか人は死ぬから。

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オーストリア大公(21)のポートレートをポートレートで撮影してみた。なんら変わりなかった。そしてこういう顔、知り合いにいるぞ・・・

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ここで突然のクイズです、これは何でしょうか。

これまで見た中で一番驚いたものです、ベストハイライトで賞。


実はこれ、タイルでできたストーブなんですって!右側にあるのは椅子で、座れるようになっています。北欧の大きい部屋には効率よく薪で火を起こすストーブが必要。煙が部屋にこもってはいけません。

この緑のおしゃれなでっかいストーブは煙を出さずに部屋を温める優れもの。もちろんこういったデザインのストーブは富裕層のみの特権です・・・

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どこが正面なのかは分かりませんが、別角度からの写真。椅子に座ったらめっちゃ心地よさそう。「人をダメにするストーブ」として売れるんちゃう?

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こちらもタペストリー。でもさっきのものとはイメージがガラッと変わってなんかハッピー?なのかな?

巡礼の様子を表しているんだそう。真ん中の男性がここでの主人公で、救済を求めて巡礼をしています。両隣にいる女性は、「信念」と「純真」。近くにいる翼の生えた子供は「神の愛」を意味します。本来は14枚のセットとなっており、これはそのうちの1枚。

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きゃーおしゃれやなあと近づいてみると、とっての部分にいるのは「ハーピー」。ハーピーとか、遊戯王の孔雀舞のデッキに出てくるのでしか知らんぞ!!!と思った程度の浅はかな知識しか持っていなかった。

ハーピーはギリシャ神話に出てくる顔から胸までが女性で、翼と下半身が鳥の怪物。ぱっと見銀色で美しいのに、その綺麗さの中の禍々しさを感じて、不思議な、でも惹かれてしまう水差しです

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ラストを飾るのは、メデューサ。こちらもポートレートで撮影してみた。

やっぱり背景がないとこの機能の良さは発揮されないね

・注意点

コロナの感染防止策により、V&Aの有名なカフェはガーデンカフェ以外閉鎖中。ショップもメインショップのみのオープンでした。

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ガーデンカフェは中庭にあります。そう、屋外なのでいまの季節はちょっと厳しいかも・・・。利用している人は結構いたけど、寒がりな私は写真をとった後はそそくさと館内に戻りました。笑

あと、マスクは必ず着用すべし!!

・おまけ:ダンディーのV&A

V&Aダンディーは、2018年9月にオープンしました。建物の設計・建築を手掛けたのは世界の隈研吾さんです(英国初)。スコットランド初のデザインミュージアムで、V&A博物館としてもロンドン郊外で初めてなんだそう。

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オープンした年の11月、ダンディー大学の卒業式に出席するため戻ってきました

とっても立派な建築物で、内装の使い方もすんごく贅沢なの

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わかるかな?下がオープンカフェになっていて、日本でいう二階部分が展示エリアとなっています。

広々空間で、それだけでも楽しい。

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服飾のデザインとかいっぱいあってワクワクします。

こじんまりとしているから、1時間もあれば全て見終わっちゃいます。

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