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アイドルのセカンドキャリアとは~白川花凛さんに聞く~

まえがき~アイドルのその後~


 猫も杓子もアイドル戦国時代である。どうやらアイドルはモーニング娘。、ももクロ、AKB、乃木坂だけでないのだ。先月からツイッターを始めてからは地方発のアイドルもたくさんいることが分かった。「アイドルって何なんだろう」という話がしたい方はファミレスで大いに語りあってほしいのだが、筆者が気になったのは、アイドルの「その後」である。
 アイドルとアスリートは似ている。華やかな世界を夢見る人間が夢を叶え、夢を叶えたのも束の間、毎年多くの人がその世界を去っていく。
ともすれば、引退後(卒業後)はどのような生活が待っているのだろうか。セカンドキャリアは?
 アスリートもアイドルも大きく稼げる人であれば、人生に余裕があるだろうが、必ずしもそうでない場合も多い。というかそうでない場合が殆どではないだろうか。応援している人やそれを生業としている人には失礼かもしれないが、そうなると例えば地下アイドルはどのようなセカンドキャリアを進んでいくのだろうか。
 気になって仕方がない。
バイト先のカレーショップから帰ってきてすぐに取材に応じてくれた、元アイドル・白川花凛さんに話を聞いた。

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白川さん。地下アイドルについて教えてください

――地下アイドルとアイドルは何が違うのでしょうか。
「アイドルと言うと乃木坂とかモーニング娘。など大きなライブ会場で公演するグループを思い浮かべると思います。でも、地下アイドルはキャパ50~300人のライブハウスでライブをするんですけど、10人しかお客さんが集まらないこともありますし、まずは規模が違います」

――活動内容と進路について。
「私が少ナショ(少女閣下のインターナショナル)で活動していた時は、高校生3人、運営兼メンバー、大学生の私1人でした。多い時はライブを月10本行うこともあり、レッスンも毎週ありましたね。今も、芸能界の表舞台に立っているメンバーは2人いて、里咲りさと早坂七星です。里咲はシンガーソングライターとして、早坂はYouTubeでも活躍しています」

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――白川さんが引退した理由は?
「私の場合は、大学卒業の時期とグループの解散時期が重なったからです。でも、じゃあ解散してから、例えばグラビア一本でできるか、ソロで活躍できるかって考えたら、「厳しいな」って。あとはアイドル活動で目標にしていたグラビアアイドル兼地下アイドルになれて、やりたかったことはできたので、引退しました」


――就職活動も経験されました。アイドルの経歴は生きるんですか?
「いや会社によりました。面白がって話を聞いてくれる会社もありますが、ずっとアイドルをしていたので、「へー、ずっとアイドルしていたのか」と表情が曇る会社もありました。社会に出ても浮くだろうなとは感じていて。女性にも「あの人アイドル活動していたんだって」と噂されるでしょうし、男性は男性で影で色々と言うでしょうし・・・」

――社会に出てからギャップはありましたか?
「ありました!アイドルの時はファンがとにかく優しくて、とにかくほめてくれました。一方で、今は平日はライターをやっていますが、全然ダメですね。土日は秋葉原のカリガリというカレーショップで働いているんですが、そこには昔のファンの人も来てくれて、またほめてくれるので、平日になくした自信を取り戻しています。昔のファンと会うことで、自分を肯定しています」

――街を歩いていると声をかけられることってあるんですか?
「いや、ないですね。昔はテレビとか雑誌に出ると1週間くらいは声をかけられたこともありました。現状はないです」

――地下アイドルの卒業後の進路について。
「普通に就職する子もいますよ。あとは、「全然連絡取ってないけど何してるかなあ」ってツイッター見たら、「結婚しました!」「子どもいます!」みたいなのを見て驚いたり(笑)。アイドルを辞めてからなら、そういうのも祝福されますし、音沙汰が無かった子の近況を見られれば、見守ってくれていたファンの方も安心しますよね」

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地下アイドルの闇ってあるの?

ところで、テレビで地下アイドルの特集を見たせいで、地下アイドルとファンには失礼な話だが、筆者のなかに過激なサービスをするイメージもある。

――地下アイドルのテレビの特集とか見てどう思いますか?
「私あんまりテレビ見ないので。でも、たまにある特集を見た時に、断片的に極一部を切り取っているように見えました。常日頃過剰なサービスをしているわけではなくて、たまにファンサービスとかでファンとアイドルで盛り上がっているところの限定的なところをクローズアップしているのかなって」
「ちょっと前にツイッターで「アイドルと添い寝したった」みたいなのが凄いバズったんです。チェキで撮って思い出にできる企画だったのが、皆に見せたことで色々な人から叩かれて炎上した。その1枚でバズるんですが、それは地下アイドルの本質では無いように感じています」

――闇みたいな特集は良く見るんですが、一方で白川さんがアイドル時代に感じた魅力はどんなことでした?
「うーん。いっぱいあり過ぎて。でも、今でも印象に残っているのは、あるファンの男性です。「かりんちゃんのことを知るまでは家から出られなかった」って言うんです。でも、ネットで私を知って、ライブハウスに行くようになって。その人が「色々な景色を見れた」って言ってくれて。それは正直、売れるとかの嬉しさとは違います。でも、「私は何か凄いことを出来たんだ」って。誰かのきっかけになれた時に何とも言えない気持ちになりました」

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――すごい感動があったでしょうね。
「そうですね。あとは私たちのライブがきっかけで地下アイドルが大好きになって、イベンターになった人もいます。地下アイドルの対バンとかも企画して、それはそれで「人生変えた」って思いました」

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今の地下アイドルに思うこと

 新型コロナウイルス感染症の影響で経営難となっているライブハウスがあることは読者のみなさんも知っているとは思うが、地下アイドルたちにも余波がきている。
――今の地下アイドル界で心配事はありますか?
「コロナの影響は大きいです。地下アイドルの知人いわく、3月から6月までライブが全然できないので、「実家に帰りますことになりました」ってなったらしいんです。さっきも言いましたけど、アイドルは賞味期限というか鮮度が大事なので、その期間に活動できないのは痛いと思います」

――なるほど。
「お客さんもアイドルもモチベーションが続きませんよね。ライブハウスもバタバタしているので。限られた人数でイベントをする状態がいつまで続くのかは心配です」

次の世代に向けて

最後に、これからの世代に向けた一言二言もらった。

――業界の問題というか、ここは少し変えた方が良いというところは。
「運営にもよりますが、無責任な運営がいるんですよね。何よりも自分達の都合第一主義で、地下アイドルの中にはバイトをしながらする人もいるんですけど、そういう人が相談したら「バイトなんて辞めれば」って言う運営を見たことがあります。そういう運営については、アイドルの事情ももう少し考えてあげて欲しいとは思います」

――引退してから3年くらい経ちました。「あの時こうしておけば」とかは。
「アイドルとしてはやりきったので、後悔は無いんです。今ライターをしているのも、お客さんがブログとかを読んで「文章うまいね」ってほめてくれたがきっかけです。「今も頑張ることで、過去の自分をさらに肯定しよう」としています。アイドルを中学からやって、レッスンも受けないで初舞台でハロプロの歌を歌って、ささやかな拍手をもらってアイドル生活が始まりました。アイドルを長くやれたことは自信になっています」

――地下アイドルの先輩として今の地下アイドル達に贈る言葉はありますか?
「何もかもを捨てて、アイドル活動にのめり込むことはリスキー過ぎるかなって。自分を追い込むことは良いことかもしれないけど、自分を助けるのは誰なのかって、考えた方が良いと思う」
「ずっと続けたくてもアイドルには「賞味期限」がある。その賞味期限のなかで将来を考える必要があるんです

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あとがき~次はアイドル特集?~

 白川さんによると、地下アイドルのなかには大学に通っている人や、サラリーマンをしながら仕事終わりに地下アイドルをする猛者もいるのだとか。芸の道は険しいが、好きなことなら頑張れるのかもしれない。
1時間ほどの取材であったが、白川さんの姿勢もアスリートにそっくりだと思った。Numberさん。将棋特集の次はアイドル特集とかどうでしょうか。
(文責:デイリーチャンネル編集部)

サインとメッセージ画像(白川さんより)

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