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1度は消えた本『千年の読書』の出版

消えた企画の発売元探し

2021年1月末に勤めていた出版社が事業停止し、失業した。
人生には常に変化がある。心残りも山ほどあるが、執着は苦しみをうむことを仏教から学んだ。あえて前職サンガの心残りを1つ挙げるなら、出版直前で消えた担当本の企画。仏教総合誌『サンガジャパン』に連載していた梅田 蔦屋書店・三砂慶明さんの原稿をまとめて出版するはずが、出せなくなってしまった。就活と同時に、泡と消えた企画をリリースしてくれる出版社を探す。
何件か企画の相談をしたところ、運よく誠文堂新光社さんが興味を持ってくれ、発売が決まった。

6月あたらしい仕事が決まる

なんとか転職ができた。

業界:出版→出版
職種:企画・営業(編集・雑用含む)→ライター
ジャンル:仏教・マインドフルネス→医療

あたらしい職場の面接時「作りかけていた本の編集を、仕事に支障のない範囲でやらせてもらえないか」相談し、許可をいただいた。
昼はライターとして、働きつつ、夜と週末、本作りを進める。
打ち合わせを重ね、出版の決まった本のタイトルは『千年の読書』。抽象的だが、悠久の時を感じさせるスケール感だ。

仕事が忙しい時期が重なる。なぜだ?

あたらしい仕事・医療系のライティングは難しいとは想定していた。取材とライティングを繰り返すたび、自分の技量に絶望する。

「己の下手さを知りて一歩目」

徐々に取材が増え、本業が忙しくなると同時に、『千年の読書』の制作もどんどんスピードがあがる。

昼間は会社で働き、夜中と早朝に『千年の読書』の作業。バランス感覚に優れている方なら、うまく調整できるのだろうが、そんな器用な人間ではない。
著者といっしょに日々、試行錯誤。昼も悩めば、夜も悩む。
アラフォーにもなれば、落ち着きある大人になっている予定が、そうはいかず、てんやわんやの日々を過ごしつつ、なんとか本が完成し、2022年1月発売。

『千年の読書』のおそるべき魅力


著者・三砂さんとは学生時代からの付き合いだ。彼といえば本。とにかく本が好きだ。いつも本を読んでいた。現在の仕事「書店員」こそ、彼の天職だろう。

学生時代、テレビ局勤務のおじさん(私の親類)から、広島の山奥に住む魔女(みたいな方)の本をもらった。なぜか三砂氏と一緒に、その魔女に会いに行ったことがある。魔女の家に泊まった晩、三砂氏は寝言でこういった。

「おれは人生の半分も生きてねぇ。まだまだ生きるぞ」

20歳だった私は、あまりの面白さに驚愕した。魔女の本は、その一族の自叙伝的な内容で、私は1ページ目で本を読むのを諦めた。私が非常に難解な印象をもった本を三砂氏は完読し、感想をおじに送ると作った。

彼の本を読み解く力はすごいね

とおじは絶賛していた。
つまり、彼は当時から本の魅力を抽出する能力に長けていたのだ。
その後、書店員となった彼が司会を務めるイベントに参加したが、作家の意図をくみ取り、伝えたいポイントを引き出す。結果、イベント会場では、よく本が売れていた。
『千年の読書』は、三砂氏の紹介力が炸裂しています。みなさま、ぜひご一読ください。


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