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その出来事は時間が経ってからわかるのかもしれない。Cosmos・秩序・無秩序・異熟

それは小さな奇跡でした。Cosmosの背景に咲き広がるピンクの花は群生する野生蘭。4月にこの彫刻を展示した時には、全く姿を見せなかったこの蘭の群れ。夏の終わりになり、緑の茎から一気に咲き誇りました。もし、Cosmosの位置が1mずれていたらこのようなショットではなかったでしょう。周囲の緑と蘭のピンクの花びら。そして白と黒の無彩色で形成されたCosmos。色彩のコントラスト、無機質と有機質なものとの調和、そして、その場面の発生に至るまでの時間や形成された展示空間の偶然に何とも言えない不思議さを覚えました。
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今、私たちが生きるこの世界の出来事や人生、出会いなどの奇跡は、全て、(必然もしくは偶然の)「起こり」から始まっているのだと思います。2020年から起きている世界中の数々の歴史的な出来事は、多くの人たちの意識や行動を変えています。世界は「混沌」としながら、また同時に「秩序」も形成しているのだと感じます。「異熟」という仏教の言葉にあるように、その時点にいる時は、全く分からないことも、時間の経過を通じて、初めて気づくことがあるのではないかと改めて感じる昨今です。我も世界も、常に「両義の間」を行き来しながら揺れ動いているのだと思うのです。

本作品は、2015年にドイツ、ブランデンブルグ州に位置するヴァーゲニッツ村で開催された野外彫刻展「ランドアート・シュロスパーク・ヴァーゲニッツ」に展示した「Cosmos」という彫刻です。

Cosmos No.01(outdoor), 2015, ca 400×480×340 cm, Mixed Media, Wagenitz-Germany , photo:Takayuki Daikoku

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