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自動運転技術のApplied IntuitionがシリーズCで$125M調達など:米国主要VC投資調査vol.16

昨日、今まで書いた記事をアーカイブ一覧で見れるようにまとめた記事を作成したので、未読の方はこちらからどうぞ。

お知らせ

7月から米国主要VC投資調査マガジンを始めました。

米国トップVCと呼ばれるAndreessen Horowitz、Kleiner Perkins、Sequoia Capitalの3社についてまとめています。スタートアップやベンチャーキャピタル、投資家の方などの参考になれば幸いです。


【2020/10/19〜2020/10/25】

・Andreessen Horowitz:2社
< Applied Intuition $125M / Series C / 自動運転技術 >
< Anyscale $40M / Series B / オープンソース >

・Kleiner Perkins:2社
< Handshake $80M / Series D / HR:就職&転職 >
< Pillar Life $1.5M / Seed / 医療 >

・Sequoia Capital:5社
< Retool $50M / Series B / ノーコード >
< ShopUp $22.5M / Series A / EC >
< Slintel $4.2M / Series A / セールスマーケティング >
< Twin Health $25M / Series B / 医療 >
< v2food $55M / Series B / 植物性食肉 >

今週は9件でした。


・Andreessen Horowitz:2社

Applied Intuition $125M / Series C / 自動運転技術

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参照元/URL:https://www.appliedintuition.com/

自動運転の開発者向けのソフトウェアを提供するApplied IntuitionがシリーズCで$125Mを調達。このラウンドで評価額は$1.25Bへ達したと言われています。

Lux Capital、Andreessen Horowitz、General Catalystが参加。

Qasar YounisとPeter Ludwigによって2017年にカルフォルニアで設立されたApplied Intuitionは、TeslaやWaymoなどの競合がいる中でユニコーンの仲間入りを果たした。

同社は自動運転トラックのKodiak Robotics、自動運転タクシーのVoyageなどのスタートアップから、トヨタやトラックメーカーのSCANIAなど大手への技術協力から利益を得ている。

北沢:自動運転といえば、過去に書いたこの記事が今でも読まれています。TeslaやWaymo以外にも、中国ではXpeng、Byton、Nioなどがあり今まで以上に注目が集まっているなと。

Applied Intuitionは、一昨年の9月から、去年9月、今年10月と、ほぼ1年と間隔を空けずに資金調達をしてきたことを考えれば、どれだけ勢いがあるのかお分かり頂けるかと思います。

最近では、トヨタとの自動運転シミュレーションのケーススタディが公開されていました。

サイトは日本語対応もしているので興味のある方は是非こちらも。

内容としては採用に向けた紹介動画が分かり易かったです。

どれだけの企業でこうした動画があるのかわかりませんが、採用のミスマッチを防ぐことを考えたら投資として有効な打ち手だと感じました。

競合の存在が大きいですが、分野としても伸び代があり、ニーズも大きいので期待したいです。場合によってはGoogleが買収というのも十分あり得そう。


Anyscale $40M / Series B / オープンソース

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参照元/URL:https://www.anyscale.com/

PythonのフレームワークであるRayを提供するAnyscaleがシリーズBで$40Mを調達。去年の12月にa16zがリードするシリーズAで$20Mを調達しており、評価額は非公開とのこと。

NEAリード、Andreessen Horowitz、Intel Capital、Foundation Capitalが参加した。

今年9月末に開催されたエンジニア向けのカンファレンス「Ray Summit」で、Anyscale は「Ray 1.0」を発表しました。CEOのRobert Nishihara氏は、これを大きなマイルストーンだと表現している。

Anyscaleのマネージドサービス(?)と最新バージョンのRay(Ray 1.0)を利用することで、ユーザーはAmazon Web Servicesや、Google Cloud Platformのようなクラウドサービス上で起動し、別のパブリッククラウドにデプロイすることができる。

“Anyscaleは、分散型アプリケーションの構築、デプロイ、管理を可能にするサーバーレス体験を提供しています。クラウドに依存せず、ステートレスとステートフルの両方の計算をサポートし、グラフィックスカードやGoogleのテンソルプロセッシングユニット(TPU)のようなカスタムチップなど、さまざまなハードウェアをサポートします。Anyscale のサーバレス・エクスペリエンスは、サーバやクラスタを抽象化し、オートスケーリングを提供します。”

北沢:引用した部分はどうまとめていいのかが分からず、、苦手な分野ですが、それでも少しは分かるところがありました。

文中に出てくる「Ray」とは、プログラミング言語のPythonのフレームワークで、Rubyでいう「Ruby on Rails」に当たるものだと解釈しました。

IntelのCTOを務めるMoty Fania(モティ・ファニア)氏は過去に「IntelのIT部門はRayを利用することで、Pythonの作業量をコードをほとんど書き換えることなく大規模化している。」と述べており、Rayを利用することでコストを下げると同時に、生産性と質を上げることが出来ています。

他にはAmazonやMicrosoft、Ant Financialでも利用されているそうで、「エキスパートのエンジニアがいない企業では、いかにコストを下げ、工程の容量と質を上げるかがとても重要なことだ。」という言葉もある通り、技術力の高いエンジニアがいなくても、コストを下げつつ生産性を高めるために、こういったフレームワークは必要だと感じました。

現在は商品化に向けて動いているということですが、フレームワークをどう商品にして利益を出すのか?が分からず。従量課金は出来ない気がするので、サポートやメンテナンスとパッケージにしたサブスクになりそう。


・Kleiner Perkins:2社

Handshake $80M / Series D / HR:就職/転職

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参照元/URL:https://joinhandshake.com/

求人プラットフォームを提供するHandshake(ハンドシェイク)がシリーズDで$80Mを調達。同社は評価額を公開していませんが、前回の$270Mから2倍以上の$550〜600Mになったといいます。

EQT、Chan Zuckerberg Initiative、Omidyar Network、Reach Capital、True Ventures、Kleiner Perkins、Lightspeed Venture Partners、Spark Capital、KPCB Edgeが参加。

現在、1,700万人のユーザー、1,000の教育機関、約50万人の雇用者をカバー。また、約120の黒人の多い大学やカレッジ、ヒスパニック系の教育機関と提携して、ユーザーが就職・就職市場に取り組むのを支援している。

企業としては、Fortune500の企業を含む30万以上が採用に活用しているとのこと。

CEOのGarrett Lord(ギャレット・ロード)氏は「約20,000社の企業がHandshakeのプラットフォームを利用して、教育機関でのバーチャル採用イベントを運営している」と述べています。

北沢:学生版Linkedinと言われるHandshake。

ググったらこの記事が真っ先に目に入ってきたので「調達と同時にShopifyに買収??」と思ったのですが、こちらはニューヨークのECで別会社でした。

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前回のラウンドがちょうど1年前の10月、シリーズCで$40Mだったので順調に伸びてますね。記事に何度も名前が出てくるLinkedinですが、買収されるとしたらすでにオファーがありそうな段階かなと感じましたがどうなんでしょう。

2014年に設立されてからの6件間で、導入している企業が30万社を超えているのも驚き。GAFAMはもちろんのこと、他にもアディダスや、IBM、Box、ハーレーダビッドソンなども含まれています。


Pillar Life $1.5M / Seed / 医療

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参照元/URL:https://www.pillarlife.com/

家族の重要な情報を整理して、オンラインで保存できるサービスを提供するPillar Lifeがシードで$1.5Mを調達。このラウンドにKleiner Perkinsが参加した。

家族に予期せぬことが起こった場合や、愛する人が高齢になったときに何をすべきか、他の信頼できる家族や介護者とのコミュニケーション、よくある詐欺防止のための詐欺監視ツールなどを提供している。料金は年間$9.99・月額$14.99。14日間の無料トライアル期間がある。

北沢:検索しても該当する記事が2〜3程度しかなく、シードでもこんなに情報が少ないスタートアップは珍しいのではないかと。もしくはステルスで動いているのか。

分野としても何になるのかが判断できず、介護やコミュニケーション、セキュリティや保険とも取れます。具体的なものとしては、医療記録やパスポートなどの家族の個人情報をオンライン上に保存しておく、というものらしいのですが、これならEvernoteやNotionで良いのでは?

伸びる気がしないのですが、Kleiner Perkinsが単独でも投資をするということは、何か強みがあるはずだと思うので、僕には見えてないものがあるのか...

「家族」というワードが大事なものであり、保存や共有自体はEvernoteで出来たとしても、それだと無機質さがあってダメなんですかね。うーん、これは最後まで分かりませんでした。


・Sequoia Capital:5社

Retool $50M / Series B / ノーコード

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参照元/URL:https://retool.com/

社内システム向けのダッシュボード作成サービスを提供するRetoolがシリーズBで$50Mを調達。評価額は9億2500万ドルへ。

Sequoia Capitalがリード、GitHubのCEOを務めるNat Friedman、Stripeの創業者Patrick CollisonとJohn Collisonや、Brexの創業者、Y Combinator共同創業者であるPaul Grahamが参加した。

2017年に設立されたRetoolは、エンジニアが少ない・技術力が弱い企業でも社内システムを構築できるように設計されたプラットフォームを提供している。

インターフェイスには、顧客が望むシステムを作成するためにドラッグ&ドロップでデザインができる様々なブロックが用意されており、最終的な製品を提供したい場合にはここにコードを追加することが可能。

これによって、すべてのコーディングが置き換えられるわけではなく、0から全てを開発せずとも、コーディングの予備知識を必要としない、簡単さを求めるエンジニアのために使い易く設計されている。

北沢:界隈で話題(?)のノーコードスタートアップ。一時期TwitterのTLでよく見かけたワードで、今後も増えていく/伸びていく分野だと感じています。

どんな企業があるのか?が気になる方は、こちらの記事が分かりやすくてオススメです。日本だとSTUDIO、Notionが人気ですかね。

コードを書く必要が0になるわけではありませんが、活用することで開発の時間短縮、コストの削減ができます。

コードを書く量が減るということは、管理コストが下がり、他のことにリソースが使えるようになるのでいいなと。ノーコード系でどこが上場するか?買収されるか?を考えるのも面白そうだと感じました。


ShopUp $22.5M / Series A / EC

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参照元/URL:https://shopup.com.bd/

バングラデシュでECプラットフォームを提供するShopUp(ショップアップ)がシリーズAで$22.5Mを調達。

Sequoia Capital India、Flourish Venturesがこのラウンドに参加。以前はVeon Ventures、Speedinvest、Lonsdale Capitalも参加していた。

バングラデシュには約450万の小売業が存在しますが、その大半はオンラインショップに対応していません。それを変えるためにShopUpはECのプラットフォームを開発しました。

同社は運転資金の提供・在庫管理・商品の配送などのサービスをメインに提供しています。

共同創業者兼CEOであるAfeef Zaman氏は、ShopUpを利用しているショップを明らかにすることをしませんでしたが、国内の同カテゴリーでは確実にリードしていると述べています。

今年2月には、インドのECプラットフォームを提供するVoonikと合併し、創業者のSujayath AliとNavaneetha Krishnanの両氏が共同創業者として加わりました。

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北沢:バングラデシュはインドやミャンマーと隣接し、1971年にパキスタンから独立した国とのこと。

聞いたことがある程度で全然知りませんでしたが、スマホの普及率も年々増加しており、インターネット利用者の約80%がFacebookを使っているそう。

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参照元/URL:https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/bop/precedents/pdf/marketcondition-mobilephone_201512_bd.pdf

2015年の資料なので古いのは否めませんが、SkypeやDropboxなども利用されているのは意外だと感じました。

貧しい国だと言われていたバングラデシュですが、今では、中国に次ぐ世界第2位のアパレル生産国になっていることも初めて知りました…

参考記事:総論 | 池上彰が明かす! イスラムビジネス入門 ~バングラディッシュ編

数年の中で1つの国がこんなにも変化するんですね。これは調べないと分からなかったことなので、日頃いかに狭い範囲でしか物事を見ていなかったのかを実感しました。


Slintel $4.2M / Series A / セールスマーケティング

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参照元/URL:https://www.slintel.com

セールス&マーケティングプラットフォームを提供するSlintelはシリーズAで$4.2Mを調達。

Accelがリード、Sequoia Capital IndiaとStellaris Venture Partnersが参加した。昨年12月にはAccelの創業者のAnand Jagannathanが参加したシードで$1.5Mを調達していた。

SlintelはB2Bのテック・ソフトウェア企業にデータを通してセールスインサイトを提供しており、世界中に合計100社近くの顧客を抱えているが、売上の約80%は米国市場からのものである。

CEO兼創業者であるDeepak Anchala氏は「過去1年間で800%以上の成長を遂げ、セールスマーケティング分野で急速に市場シェアを拡大しています。」と述べており、2022年までに顧客数を300社以上に伸ばすことを計画している。

北沢:これは見て頂いた方が分かりやすいと思うのですが、サイト上で各企業のユーザー数やシェアがどれくらいあるのか、競合との比較、Q&Aなど見ていて面白いなと。

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これはZoomとMicrosoftOfficeの比較。

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料金についての記載はなかったのですが、無料で見れる範囲でも十分楽しいので是非一度見ていただきたいです。

こういったデータは打ち手を考えるのに重要で、ニーズは常にあるため伸びそうだと思いました。


Twin Health $25M / Series B / 医療

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参照元/URL:https://twinhealth.com/

ウェアラブルセンサーによる医療支援のTwin HelathがシリーズBで$25Mを調達。前回は今年6月にシリーズAで$18Mを調達しており、総額は$43M。

このラウンドではSequoia CapitalとCorner Venturesが参加した。

世界中で1億台以上のデバイスで使用されるソフトウェアの構築に、豊富な経験を持つ起業家によって設立された。

北沢:HPにTwitter、PitchbookにSECなど、あれこれ探したのですが情報が少ないスタートアップでした。

糖尿病に焦点を当てた製品を2018年にインドでリリース。ウェアラブルセンサーからの生体信号を分析、代謝結果を予測しユーザーに合わせた治療法を進めているそうです。

ウェアラブルセンサーとあるので、スマートウォッチのような形をイメージしているのですが参考画像も見つからなかったのでなんとも。過去に取り上げたBiofourmisも同分野の製品を開発しているので、あながち間違いではないと思っているのですが。

この時のnoteでも書いたのですが、打ち手としてはスマートウォッチ企業と提携して、Apple WatchやHUAWEI FITの機能として使えるようになるとより伸びるのかなと思います。

どんな製品かがハッキリしませんが、ウェアラブルセンサーだけでは相当健康意識が高い人でない限り利用されないのかなと。糖尿病の方に絞れば利用数は伸ばす必要がないという考え方なのでしょうか。


v2food $55M / Series B / 植物性食肉

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参照元/URL:https://www.v2food.com/

オーストラリアの植物性食肉を作るv2foodがシリーズBで$55Mを調達。オーストラリア内でのこの分野では最大の資金調達になりました。

ABC World Asia、Altitude Partners、China Renaissance、Esenagro、Horizons Ventures、Main Sequence Ventures、Marinya Capital、Novel Investments、Sequoia Capital China、Temasekが参加した。

人々の食生活を変えるには、便利で美味しいこと。コスト的にも同等の代替品を提供することが必要であると考えています。マメ科植物から抽出したタンパク質を使用して、見た目も味も調理も上質に感じられるフェイクミートを作ります。

v2foodの製品は現在、オーストラリアの何千もの店舗で販売されていますが、今年2月に同社はニュージーランドのバーガーキングへの供給を開始しました。

北沢:植物性食肉の分野を調べるのはこれが初めてだったのですが、Beyond Meat(ビヨンド・ミート)が話題だったのが記憶に新しいです。

Beyond Meatは去年の5月にナスダック市場に上場し、植物性食肉の製造を手がける企業としては、初の新規株式公開をしました。

株価は奮いませんが、先月に中国に工場を建設するというニュースがあり、中国が代替肉でも最大の市場になる可能性があるとのこと。

今年2月から提供されているニュージーランドのバーガーキングでは、v2foodが開発する本物の肉を一切使わない植物性食肉のハンバーガーで、Rebel Whopper(レーベル・ワッパー)という名前で販売されているそう。

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今では、植物性食肉を2枚にしたダブルバーガーや、Rebel Big King XLという表記の巨大サイズもあり、実際に食べた人のレビューでは「言われなければ、植物性食肉だと分からない」という声もあったので、着実に浸透しているのだと感じました。

いずれは、植物性食肉オンリーのハンバーガーショップが出てくるかな?と思いましたが、さすがにメインにはなり得ないかなと。


以上です。

今月の2週目から、セコイアのインドと中国の投資先も含めるようになり、件数が増えたことで調べる面白さが増して楽しいですw

来週は、11月2日月曜日に更新予定です。

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